繁殖と飼養管理 ー豚編ー

繁殖と飼養管理 ー豚編ー

農場で長い期間働いてくれる繁殖雌牛や繁殖雌豚たちの能力を最大限に生かすために、そして少しでも繁殖に関する事故を減らすために、今一度、飼養管理について見直してみたいと思います。今回は母豚について説明いたします。

はじめに

「繁殖管理」と聞くと、皆様はまず何を思い浮かべるでしょうか。丁寧な発情観察、母体の分娩日や産次数の記録、未発情や不受胎母体の早期発見など、沢山の「管理」が頭の中に出てくることと思います。
そんな、すべきことが沢山ある「繁殖管理」は少しでも楽であるに越したことはありません。それを実現するために、まずは「飼養管理」  に注目してみましょう。飼養管理は誰でも取り掛かることができ、繁殖成績改善には重要な要素です。
人間でも、妊婦さんがダイエットで十分な栄養が摂取できていないと、未熟児のリスクや産後の体調不良等の原因になります。沢山の子供を産む必要があり、人間よりも過酷な環境下で暮らす家畜は、もしかしたら人間以上に気を配る必要があるかも知れません。また、飼養管理は単に摂取カロリーだけが満たされれば良いという訳ではありません。タンパク質やビタミン、ミネラル等必要な栄養をできる限り過不足なく与えることが飼養管理です。
肥育を目的とした家畜よりも、農場で長い期間働いてくれる彼女達の能力を最大限に生かすために、そして少しでも繁殖に関する事故を減らすために、今一度、飼養管理について見直してみたいと思います。それでは、今回は母豚について見ていきましょう。
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未経産豚

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母豚の繁殖成績を最大限引き出すには、未経産豚の飼養管理が非常に重要になってきます。
初産での分娩成績を良くするために、各農場で様々な努力をされているのではないでしょうか。
母豚の背脂肪厚を適切にすることは飼養管理の大切なポイントになります。
背脂肪厚の薄い未経産豚には継続的な妊娠、分娩に耐え得るための脂肪が体内に十分量無いと言われており、適切な体型を一定に保つことも難しいとされます。
ハイブリット種の場合、交配目標日齢210~250日までに18mm以上の背脂肪厚にするのが望ましいとされます。
農場によっては背脂肪厚の代わりにBCS(ボディコンディションスコア)で判断しているところもあるかと思います。
しかし、背脂肪厚とBCSは一致しないことが多いとも言われているため、ここでは背脂肪厚を目安としてお話します。
また、交配に適した体重130~150㎏に達するためにも、しっかり飼料を食べさせることが重要です。
そのためには給餌回数を増やすことに加え、十分量の飼料給与ができているか、豚が安心して食べられる環境になっているか、今一度、農場の様子を観察してみましょう。
※初回種付けの適切な時期については、日齢で210~240日齢  、体重130㎏、背脂肪厚18㎜前後がひとつの目安とも言われます(180日齢前後に発情が見られることがありますが、その発情は見逃した方が良いとされます)。

経産豚

①妊娠期:母豚の体調と胎子発育が維持できる栄養の給与、②授乳期:母豚の体調維持と母乳を十分に出すことができる栄養を摂取させる、の2点に注力します。

①妊娠期

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2産目では母豚自体もまだ成長期であり、体重の増加が続くので母豚の正常な継続的成長と、子宮組織の重量及び分娩日に排出される胎盤や子豚のことも含め、必要な量の飼料を与えることで十分なエネルギーを摂取させるのはもちろんのこと、タンパク質が不足しないよう注意します。
また、栄養の代謝や骨形成、血液産生に大切な各種ビタミン・ミネラルも、不足の心配があれば添加して与えます。
経産豚であれば、前回の分娩及び授乳で消耗した分のエネルギーを妊娠前期で摂取させます。
妊娠中期までには、適切な体型に戻すようにしましょう。妊娠後期では、授乳の準備も考慮する必要があります。
とは言え、妊娠期間中の母豚の大幅な体重増加は望ましくありません。妊娠期間に母豚が過肥になると、授乳期間の飼料摂取量が減少するだけでなく、乳腺の発達が悪くなり、結果として泌乳量の低下につながります。
妊娠期間中の母豚の体型は丁寧に観察して背脂肪厚が21㎜を超えないよう、飼料の給与量が適切かどうか定期的に確認する必要があります。
分娩の1ヵ月前からは胎子発育や乳腺組織の発達が盛んになるため、飼料給与量を適切に増やすことで、生時体重の増加や生存率の向上も期待できます。また、授乳期間の背脂肪厚や体重の減少度合いが少なく済む可能性もあります。分娩前の母豚は便秘になりやすいため、普段以上に飲水量に目を向けてあげましょう。
便秘になると腸内環境中に悪玉菌が増加し、分娩房内に悪玉菌が多数排出されることで衛生環境が悪くなり、乳房炎等の感染症発生の原因に繋がります。また、生まれた子豚に悪影響を及ぼすことも考えられます。
母豚腸内の悪玉菌増殖をなるべく防ぐためにも、生菌剤等を利用して腸内環境を整えてあげましょう。腸管は動物の最大の免疫器官ですので、腸内環境のケアは母豚の健康維持においても非常に有効と考えられます。

②授乳期

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母豚は摂取エネルギーが不足しても、体内に貯蔵している脂肪やタンパク質を動員して乳生産を優先させるため、体重の減少が多く見られます。特に、初産や2産目の母豚はまだ自分自身の体も成長途中であるため、ダメージが大きくなる可能性があります。授乳期に母豚の体重が大きく減少し、特に母体のタンパク質を泌乳に回すことで消費し過ぎてしまうと、離乳後の発情回帰日数の延長や、次の分娩での産子数低下の原因になってしまいます。
特に未経産豚は消費されるエネルギーを十分に補えるほどの飼料を摂取できない個体もいます。
また、夏季の高温や冬季の寒冷等のストレスも食下量やエネルギー消費量に影響を与えます。分娩後の母豚の給餌量の増やし方に関しては統一した見解がありませんが(アメリカ式養豚では、分娩後早めに飽食にすることを勧めていますが、ヨーロッパ式養豚では徐々に増やしていく方式を推奨)、母豚への負担を考えると徐々に増やしていく方法が良いように思います。分娩後直ぐに飽食にすると体の消化機能が対応しきれず、母豚によっては下痢を起こすこともあるので注意が必要です。また、母豚が飼料を少しでも多く摂取できるよう、ここでも水の管理は普段以上に重要になってきます。
豚は、家畜の中でも特に「水」の管理が重要となる動物です。飲水環境が悪ければ、飼料摂取量も確実に落ちてきますので、十分な給水ができているか、今一度確認してみましょう。

母豚のサポート製品

各農場でできることに取り組み、飼料を十分量食べさせることができれば何よりですが、個体差やその時の環境条件により難しい場合もあるかと思います。一口でも多く母豚に餌を摂取してもらうために、機能性素材やプレミックスを利用するのも一つの手段です。共立製薬では、夏の食欲不振にはココナツミルク粕を配合し飼料の嗜好性向上を目的とした「サマーブースター」、授乳期の母豚にはその時期に不足しやすい5種のアミノ酸を配合した「授乳ブースター」を取り扱っています。農場の課題に合わせてご使用いただき、少しでも生まれてくる子豚の発育の向上や事故率の低減、そして母豚の持つ能力を最大限生かしていただきたいと思います。
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