繫殖と飼養管理 ー肉用牛編ー

今回は繁殖肉牛の飼養管理について考えてみたいと思います。
皆さんの農場に繁殖候補牛を導入したら、まずはいくつかのケアをしてあげましょう。

導入時のケア

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1 . 駆虫:線虫類とコクシジウムの両方の駆虫を。自分の農場に広げないためにも大切です。
2. ワクチン:地域や農場の感染状況に応じて適切に接種をしましょう。
3. マグネット(パーネット、磁石):牛は何を口にするか分かりません。外傷性第二胃腹膜炎などの防止に繋がります。
4. 除角:農場の管理形態にもよりますが、特に群れで管理する場合は実施することで怪我やアタリを防止できます。
5. ビタミン剤:環境変化に対するストレスにより不足するビタミンの補給及び健康維持のために適量を給与します。

飼養管理

導入時のケアが終わったら、次は飼養管理についてチェックしてみましょう。丈夫な母牛に育てるには、しっかりした骨格と立派な第一胃(ルーメン)が必要です。そのためには、良質な粗飼料が重要な要素の1つとなります。
この、「良質な粗飼料」とはどんな粗飼料なのでしょうか。数名の方に質問してみましたが、「牛が好んで食べる草」「触ってみて自分が良いと思う草」等、「良質な粗飼料」の基準は、やはり日頃飼料を与えている人それぞれの基準があるようです。皆様も、自分にとっての「良質な粗飼料」の基準を決めてみるのも良いかと思います。粗飼料の質はいつも同じではなく、育った土地や天候、輸入、自家産等の条件の違いにより含まれる栄養分も随分変わってきます。

粗飼料の質が変化すると、少なからず母牛のルーメン環境に影響を与えます。影響の程度を確認することは難しいですが、今回の粗飼料の質には少し不安を感じるな、という時は機能性素材等の使用を検討してみてはいかがでしょうか。
健康なルーメン発酵の安定を助ける機能性素材のカシューナッツ殻液含有している「ルミナップ」などの利用や、粗飼料のカビが気になる季節には、カビ毒吸着材を含有している「バランスリーSP」や「フィードボンド」などの利用、食欲不振や消化不良がみられた場合はトルラ酵母含有の動物用医薬品である「トルラミン」の利用もお勧めします。
また、必要に応じてビタミン・ミネラルの添加も必要ですが、また別の機会に詳しく紹介したいと思います
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粗飼料

次は適切な粗飼料の長さと量について考えてみたいと思います。粗飼料はその長さが短すぎると反芻刺激が弱くなってしまいます。適切な粗飼料の長さは5cm程度以上と言われていますので、ご自身の農場で与えている粗飼料の長さを今一度確認してみても良いかもしれません。ダイエットをしたことのある方は経験があるかと思いますが、その際に辛いのが空腹感だと思います。牛も一緒で、空腹感は長時間続くとストレスに繋がります。皆様の農場では牛が頻繁に舌遊び(舌をべろべろと意味もないのに出して動かしている)をしている光景を見かけることはありませんか?
舌遊びの原因については様々な要因が言われていますが、粗飼料の不足が原因の1つと考えられています。(ホルスタイン種では関係ないとする報告もあります。)
舌遊びは牛が空腹を感じている1つのサインですので、空腹ストレスを感じさせないためにも粗飼料をなるべく十分量与えることが大切です。

しかし、いくらストレス対策のためとはいえ、濃厚飼料を含めた総カロリーが高すぎると、牛が過肥となってしまいます。
それを防ぐためにも、牛のボディコンディションに問題を抱えている農場では、一度飼料計算に挑戦してみてはいかがでしょうか。今、自分の農場の給餌プログラムの問題点は何か、数字にして眺めてみると何か発見があると思います。
肉用牛の飼料計算は乳用牛ほど難しくありません。飼料計算のやり方は、インターネットで調べることもできますし、やり方を知っている人に教えてもらって、まず自分で取り組んでみることがとても重要です。
なるべく適切な数字になるように飼料計算をしたら、実際にその量を給与して様子を見てみましょう。現在給与している量から計算後の給与量が大きく変わる場合は、1~2週間くらいかけて少しずつ増やしたり減らしたりします 。

牛のボディコンディション

牛 のボディコンディションが適切であるかは、毎日同じ牛を見ているからこそ問題に気づきにくいこともあります。そのような時は、繁殖治療や検診に来てくれる獣医さんや授精師さんに自分の牛のボディコンディションが適切かどうか聞いてみるのも良いと思います。
直腸検査をしてみると、適切なボディコンディションに見えても脂肪がつき過ぎていたり、逆に卵巣が小さくなって動いていない(卵巣が正常に動く分まで栄養が足りていない)場合もあります。外観と直腸検査の結果の両方から、母牛の状態を評価してあげるとより良い管理ができます。

黒毛和牛の初回授精時の発育目安を調べてみると、体重で300~360㎏、体高で115~124㎝と幅があります。黒毛和牛の場合は系統により体格に違いがあるので各地域において適切とされる目安や、発情が21日間隔で安定しているかどうかも参考にしながら適期を見極めましょう。未経産牛はまだ体も小さいため、授精に選ぶ精液も増体に優れる系統はなるべく避けて、分娩時の事故リスクをなるべく低減したいところです。
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分娩前の飼養管理

次は、分娩前の飼養管理について見ていきましょう。立派な子牛を産んでもらうためにも、適切な飼養管理がとても重要になってきます。胎子は生まれる約2ヵ月前から急速に成長します。
そのため、母牛は胎子の発育に見合う栄養を摂取する必要があります。未経産牛には自身の体の成長分の栄養も考慮して飼料給与する必要があるので、ボディコンディションも気にしながらなるべく良質な飼料を給与します。

この時期に注目したい栄養素がタンパク質です。最近では人間でタンパク質をしっかり取れる食品等を多く見かけるようになりましたが、タンパク質は丈夫な胎子の体を作るためにも欠かせない栄養素です。
ルーメンへの負担が少ないルーメンバイパス性の加工大豆を含有した「ソイミール」は、タンパク質を補給したい時期にお勧めする混合飼料です。または、繁殖用よりもタンパク質含量が高い育成用の飼料を増餌で給与する方法もあります。この時期は胎子成長だけでなく、次の発情に向けた卵胞の発育もすでに始まっています。
母牛の栄養不足は、生まれる子牛の虚弱や、分娩後の発情・受胎率に影響する可能性があるので、全力を注いで栄養管理をしてあげましょう。分娩間近になると初乳の準備も始まり、多くのビタミンAやビタミンEが初乳に移行するため、分娩3~2週間前には一度ビタミン給与することをお勧めします。
見落としがちですが、水槽のお手入れもお忘れなく。水が汚いと、どの動物も飲水量が低下し、それに伴って採食量も低下します 。
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