はじめに
海外から持ち込まれる肉製品や農産物の中には、アフリカ豚熱(ASF)や高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)など、家畜伝染病の侵入リスクにつながるものがあります。
こうした脅威から日本の畜産を守るため、水際対策の最前線で活躍しているのが「動植物検疫探知犬」です。
今回は、防疫対策強化の啓発を目的に、農林水産省の機関である動物検疫所へインタビューを実施しました。動植物検疫探知犬の役割や活動内容、防疫への貢献、育成の取り組み、今後の展望について詳しく伺いました。
こうした脅威から日本の畜産を守るため、水際対策の最前線で活躍しているのが「動植物検疫探知犬」です。
今回は、防疫対策強化の啓発を目的に、農林水産省の機関である動物検疫所へインタビューを実施しました。動植物検疫探知犬の役割や活動内容、防疫への貢献、育成の取り組み、今後の展望について詳しく伺いました。
動植物検疫探知犬とは
― 「動植物検疫探知犬」はどのような役割を担っているのかをお教えください。
動物検疫所:
動植物検疫探知犬※は、海外から持ち込まれる肉製品などの検疫対象品を匂いで探知し、家畜伝染病の侵入を防ぐ役割を担っています。
特に、渡航者の手荷物や国際郵便物の中に含まれる、申告されていない検疫対象品を発見することで、水際対策の強化に貢献しています。
※以下、本記事では「検疫探知犬」と表記します。なお、農産物の病害虫に関する検査は、動物検疫所ではなく植物防疫所が所管しています。
動物検疫所:
動植物検疫探知犬※は、海外から持ち込まれる肉製品などの検疫対象品を匂いで探知し、家畜伝染病の侵入を防ぐ役割を担っています。
特に、渡航者の手荷物や国際郵便物の中に含まれる、申告されていない検疫対象品を発見することで、水際対策の強化に貢献しています。
※以下、本記事では「検疫探知犬」と表記します。なお、農産物の病害虫に関する検査は、動物検疫所ではなく植物防疫所が所管しています。
― 現在、検疫探知犬は何頭ほど活動していますか?
動物検疫所:
検疫探知犬は、2005年度に成田国際空港へ2頭を導入したことから始まりました。
その後、体制を拡充し、2020年度以降は全国で140頭が活躍しています。
特に2018年(平成30年)に中国でアフリカ豚熱(ASF)が発生して以降、水際対策の強化が求められるようになり、検疫探知犬の頭数も大きく増加しました。
検疫探知犬頭数の推移
令和7年4月1日現在
(年度)
| H17 | H20 | H23 | H24 | H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 | R2~ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 4 | 6 | 8 | 10 | 14 | 18 | 26 | 28 | 33 | 53 | 140 |
※H30以降、中国にASFが侵入しアジアに拡大したことを受け増頭
▶ 右へスクロールしてご覧ください
― 検疫探知犬は全国のどこで活動しているのでしょうか。
動物検疫所:
国際線の到着する空港が主な活動場所です。この他、海外から到着するフェリーやクルーズ船の港や国際郵便局で活動することもあります。
また、海外から送られてくる国際郵便物を扱う全国6か所の国際郵便局でも、検疫探知犬が肉製品などの持ち込み禁止品の探知に取り組んでいます。
検疫探知犬の活動内容
via 動物検疫所 検疫部様よりご提供資料
― 検疫探知犬の具体的な活動を教えてください。
動物検疫所:
空港では、到着した渡航者がターンテーブルで受け取った手荷物を対象に探知活動を行っています。
スーツケースやバッグの周囲を歩きながら匂いを確認し、肉製品や農産物などの持ち込み禁止品の匂いを発見すると、その場に座ってハンドラーへ知らせます。ハンドラーとは、検疫探知犬とペアで活動する人のことです。
その後、ハンドラーは検査を担当する家畜防疫官等にお知らせします。また、ハンドラーが家畜防疫官等で検査ができる人であれば、その場で検査することもあります。
動物検疫所:
空港では、到着した渡航者がターンテーブルで受け取った手荷物を対象に探知活動を行っています。
スーツケースやバッグの周囲を歩きながら匂いを確認し、肉製品や農産物などの持ち込み禁止品の匂いを発見すると、その場に座ってハンドラーへ知らせます。ハンドラーとは、検疫探知犬とペアで活動する人のことです。
その後、ハンドラーは検査を担当する家畜防疫官等にお知らせします。また、ハンドラーが家畜防疫官等で検査ができる人であれば、その場で検査することもあります。
― 検疫探知犬は1日どのようなスケジュールで活動していますか。
動物検疫所:
朝9時頃に食事と運動を行い、10時頃から空港などで探知活動を開始します。
ただし、犬の集中力は長時間続かないため、15〜20分程度活動したら休憩を挟むサイクルで運用しています。検査場には4〜5時間ほど滞在し、夕方には犬舎へ戻ります。
また、週に2日程度の休日も設けており、検疫探知犬の体調や集中力に配慮しながら活動しています。
― 長時間の活動は難しいと思いますが、検疫探知犬が活動していない時間帯はどのように対応しているのでしょうか。
動物検疫所:
検疫探知犬だけで検査を行っているわけではありません。
家畜防疫官が長年の経験をもとに、渡航者への聞き取りや荷物の確認を行い、必要に応じて検査を実施しています。また、渡航者の中には犬が苦手な方もいらっしゃるため、検疫探知犬による確認を希望されない場合もあります。
検疫探知犬はあくまでも探知活動を支える有効なツールの一つであり、家畜防疫官による検査と連携しながら水際対策を行っています。
動植物検疫探知犬の防疫への貢献
― 水際対策に対する検疫探知犬の貢献度を具体的に教えてください。
動物検疫所:
2024年に摘発された携帯品による輸入禁止品等は201,959件あり、重量にすると95,260kg(約95t)に及びます。
また、2024年度(令和6年)の速報値では、携帯品・郵便物をあわせた禁止品摘発件数248,080件のうち、約48%にあたる119,097件が検疫探知犬によって発見されたものです。※
※出典:農林水産省「【動植物検疫をめぐる状況の変化】」(PDF)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/attach/pdf/250324-5.pdf
このように、検疫探知犬は、水際対策において非常に重要な役割を担っています。
動物検疫所:
2024年に摘発された携帯品による輸入禁止品等は201,959件あり、重量にすると95,260kg(約95t)に及びます。
また、2024年度(令和6年)の速報値では、携帯品・郵便物をあわせた禁止品摘発件数248,080件のうち、約48%にあたる119,097件が検疫探知犬によって発見されたものです。※
※出典:農林水産省「【動植物検疫をめぐる状況の変化】」(PDF)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/attach/pdf/250324-5.pdf
このように、検疫探知犬は、水際対策において非常に重要な役割を担っています。
― アフリカ豚熱(ASF)などの侵入リスクについて教えてください。
動物検疫所:
2018年に中国でアフリカ豚熱(ASF)が発生して以降、アジア各国へ感染が拡大しました。近年では台湾でも発生が確認されており、東アジア地域におけるリスクは依然として高い状況です。
日本では水際対策を強化していますが、2019年と2020年には海外から持ち込まれた携行品から感染力を持つASFウイルスが確認された事例もあります。
家畜伝染病の侵入を防ぐためには、肉製品などの持ち込みを未然に防ぐことが非常に重要です。
― 検出件数など、具体的な数値を教えていただけますか。
動物検疫所:
はい。2026年6月末時点で、携帯品として持ち込まれた肉製品420件からASFウイルス遺伝子が検出されています。そのうち4件からは感染力を持つASFウイルスが分離されました。
※数値は編集部にて2026年6月末時点の情報に更新
※出典:農林水産省動物検疫所「旅行者の携帯品等から検出されたASFウイルス遺伝子陽性事例について」(PDF)
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/pdf/ASF_pork_products.pdf
*出典元の情報は定期的に更新されます。最新の内容は出典元のURLよりご確認ください。
また、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)についても、2015年度から2025年度までの10年間に24株のウイルスが分離されております。加えて、2026年にも口蹄疫が1株ウイルス分離されています。
これらの事例からも、水際対策の重要性が分かると思います。
― 日本人が肉製品を持ち込むケースもあるのでしょうか。
動物検疫所:
はい。あります。海外旅行から帰国した日本人が、現地で購入した肉製品や、機内食として提供されたハムなどを持ち込むケースは少なくありません。
「免税店で購入したものだから問題ない」と思われる方もいますが、購入場所に関わらず、必要な証明書がない肉製品は日本へ持ち込むことができません。
海外からの持ち込みは、外国人渡航者だけでなく、日本人にも関わる問題です。
検疫探知犬の育成とハンドラー
― どのような犬が検疫探知犬に向いているのかをお教えください。
動物検疫所:
一般的にはビーグルやラブラドール・レトリーバーが適しているとされています。どちらも優れた嗅覚を持ち、食べ物への関心が強いため、ご褒美を活用した訓練との相性が良いことが特徴です。
また、ビーグルは比較的小柄で機動力があり、空港などの限られたスペースでも活動しやすいという利点があります。
一方で、現在は犬種を限定しているわけではありません。全国の動物愛護センターなどと連携し、保護された犬の中から適性を見極め、検疫探知犬に抜擢して育成するといった取り組みも行っています
動物検疫所:
一般的にはビーグルやラブラドール・レトリーバーが適しているとされています。どちらも優れた嗅覚を持ち、食べ物への関心が強いため、ご褒美を活用した訓練との相性が良いことが特徴です。
また、ビーグルは比較的小柄で機動力があり、空港などの限られたスペースでも活動しやすいという利点があります。
一方で、現在は犬種を限定しているわけではありません。全国の動物愛護センターなどと連携し、保護された犬の中から適性を見極め、検疫探知犬に抜擢して育成するといった取り組みも行っています
― 検疫探知犬はどのように育成されるのでしょうか。
動物検疫所:
個体差はありますが、早い場合で半年程度、通常は8か月から1年程度の訓練期間を経て育成されます。
訓練では、肉製品や農産物のにおいを正しく識別する能力だけでなく、多くの人が行き交う空港や国際郵便局などで落ち着いて活動できる能力も身につけていきます。
また、動物検疫所では年間4〜5頭の検疫探知犬を育成しています。国の機関として検疫探知犬を育成しているのは本所の1か所だけです。
― ハンドラーとはどのような関係で活動しているのでしょうか。
動物検疫所:
基本的には1頭の検疫探知犬とハンドラーがペアとなって活動します。
ただし、経験を積んだ犬やハンドラーの場合は「マルチハンドリング」と呼ばれる形で、特定のペアに固定せず活動することもあります。
ベテランのハンドラーは複数の犬を担当し、経験豊富な犬であれば異なるハンドラーとも連携して活動できます。
― 検疫探知犬は何歳くらいまで活躍するのでしょうか。
動物検疫所:
個体差はありますが、現役として活動するのは8歳前後が一般的です。長い場合は10歳頃まで活躍する犬も稀にいます。
引退後は里親とのマッチングを行い、一般家庭で余生を過ごします。
現役時代に日本の水際対策を支えてきた検疫探知犬たちは、引退後は新しい家族のもとで穏やかな生活を送っています。
動物検疫所が伝えたいこと
― 今後の目標やビジョンについて教えてください。
動物検疫所:
海外における家畜伝染病の発生状況は日々変化しています。近年も東アジア地域でアフリカ豚熱(ASF)の発生が確認されるなど、水際対策の重要性はますます高まっています。
私たちは、税関や植物防疫所をはじめとする関係機関と連携しながら、状況に応じた柔軟な検疫体制の構築に取り組んでいます。
今後も変化するリスクに対応しながら、日本の畜産を守るための水際対策を継続していきたいと考えています。
― 畜産生産者の皆さまへメッセージをお願いします。
動物検疫所:
家畜伝染病の侵入防止は、畜産生産者の皆さまだけでなく、私たち動物検疫所を含めた多くの関係者が協力して取り組むべき課題です。
今後も水際検疫の強化に努めてまいりますので、引き続き、家畜伝染病の侵入防止にご理解とご協力をお願いいたします。
動物検疫所:
家畜伝染病の侵入防止は、畜産生産者の皆さまだけでなく、私たち動物検疫所を含めた多くの関係者が協力して取り組むべき課題です。
今後も水際検疫の強化に努めてまいりますので、引き続き、家畜伝染病の侵入防止にご理解とご協力をお願いいたします。
― 最後に、一般消費者や海外渡航者の皆さまへもメッセージをお願いします。
動物検疫所:
家畜伝染病の侵入を防ぐためには、水際での検査だけでなく、渡航者一人ひとりの理解と協力が欠かせません。まずは動物検疫のルールを知っていただき、海外から肉製品を持ち帰らないようご注意いただければと思います。
また、検疫探知犬は集中力が求められる仕事をしています。探知活動中は声をかけたり触れたりせず、そっと見守っていただけると助かります。
皆さま一人ひとりのご理解とご協力が、日本の畜産を守ることにつながります。今後とも動物検疫へのご理解とご協力をお願いいたします。
【関連ページ】
■ 動物検疫所トップページ
https://www.maff.go.jp/aqs/index.html
■ 動物検疫所 広報資料
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/pamphlet.html
■ 来日する方へのお願い
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/pdf/this-is-a-message-to-you-JP.pdf
■ 動物検疫統計
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/toukei.html
■ 動物検疫速報
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/toukeisokuho.html
■ 携帯品による輸入禁止品等の検疫状況
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/attach/pdf/toukei-17.pdf
■ 郵便による輸入禁止品等の検疫状況
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/attach/pdf/toukei-16.pdf
■ 動物検疫年報
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/toukeinen.html
■ アジアで発生しているアフリカ豚熱(ASF)への対応
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/asf2018.html
■ ASF(アフリカ豚熱)と肉製品の持込みに関する資料
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/pdf/ASF_pork_products.pdf
■ 動物検疫所のリンク・著作権について
https://www.maff.go.jp/aqs/link/copylight.html
■ 動物検疫所トップページ
https://www.maff.go.jp/aqs/index.html
■ 動物検疫所 広報資料
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/pamphlet.html
■ 来日する方へのお願い
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/pdf/this-is-a-message-to-you-JP.pdf
■ 動物検疫統計
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/toukei.html
■ 動物検疫速報
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/toukeisokuho.html
■ 携帯品による輸入禁止品等の検疫状況
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/attach/pdf/toukei-17.pdf
■ 郵便による輸入禁止品等の検疫状況
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/attach/pdf/toukei-16.pdf
■ 動物検疫年報
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/toukeinen.html
■ アジアで発生しているアフリカ豚熱(ASF)への対応
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/asf2018.html
■ ASF(アフリカ豚熱)と肉製品の持込みに関する資料
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/pdf/ASF_pork_products.pdf
■ 動物検疫所のリンク・著作権について
https://www.maff.go.jp/aqs/link/copylight.html