卵黄抗体(IgY)〜卵は食べるだけじゃない!卵黄に存在する抗体~

卵黄抗体という言葉を聞いたことはありますか?
この記事では、鶏卵に含まれる抗体である卵黄抗体(IgY)についてご紹介します。

卵黄抗体とは

抗体(免疫グロブリン=Ig)とは、体内に病原体(細菌やウイルス)が侵入した際、病原体に結合することで排除してくれる免疫物質です。
親鶏の体内に病原体が侵入した場合、免疫機構がその病原体を排除するために抗体が産生されます。
抗体はいくつか種類があり、哺乳類ではIgGやIgM、IgA、IgD、IgEの5種類が存在します。
一方、鳥類ではIgY、IgM、IgAの3種類が存在します。
哺乳類には存在しないIgYこそが卵黄抗体(別名:鶏卵抗体)であり、IgYの「Y」は卵黄という意味の「yolk」の頭文字から取られています。(図1)
このIgYの役割は哺乳類のIgGと同様で、体内に侵入した病原体の排除を担っています。

図1 抗体の種類について

抗体の1種であるIgYは親鶏の血液を循環していますが、血液から卵黄へ移行し、卵黄抗体となります。
この卵黄抗体が、免疫機能が未発達な初生ヒナ(生まれてすぐのヒナ)を病原体から守っています。(図2)
つまり、卵黄抗体とは鳥類の母子免疫として重要な免疫物質なのです。

図2 鶏における卵黄抗体の働き

卵黄抗体の作り方

人工的に卵黄抗体を作る場合は、病原体もしくはその一部を親鶏に接種します。
すると、親鶏の体の中で、その病原体に対する抗体(IgY)が産生されます。
例えば、不活化された大腸菌を親鶏に接種した場合、大腸菌に対する抗体が産生されます。
産生されたIgYは卵黄へと送られますので、その親鶏が産んだ卵を粉末にすることで比較的簡単に入手することができます。(図3)
さらに、鶏は週に5~7個産卵するため、精製できる量も多いのも特徴です。
親鶏1羽が1年間で産卵する約300個の卵からは、ウサギ約30匹分の血液から精製できるIgGに相当する量のIgYが得られると言われています。

図3 卵黄抗体の作り方

卵黄抗体の活用

以上のような卵黄抗体の特徴に着目して、多くの研究が進んでいます。
例えば、牛に下痢を引き起こす病原体に対するワクチンを鶏に接種することで、これら病原体に対する卵黄抗体が産生されたという報告があります。1)
また、サルモネラに対する卵黄抗体は、培地中のサルモネラの増殖を阻害することが報告されています。液体培地で6時間培養した結果、サルモネラ エンテリティディスでは菌数が対照群の1/4量、サルモネラ ティフィムリウムでは対照群の約1/40量であったという報告があります。2)
さらに、大腸菌に対する卵黄抗体をマウスに経口給与したうえで、マウスに大腸菌を経口感染させた結果、大腸菌の増殖と腸上皮への定着を抑え、結果として炎症や臨床症状が軽減されたという報告があります。3)

そして、卵黄抗体の「卵の中に抗体が大量に存在する」といった仕組みを利用して、様々な分野で活用されつつあります。

卵黄抗体を家畜が摂取した場合

卵黄抗体の熱変性する温度は73.9℃、失活するpHは3.5以下と言われており、乳幼児の胃を想定した条件(pH4下で4時間)では、抗体活性の約50%が残存するという報告があります。4)
そのため、子牛や豚が卵黄抗体を摂取した場合、卵黄抗体は他の飼料と同様に腸管へと運ばれます。
さらに、出生直後であれば、初乳中の移行抗体と同様に腸管から吸収されることで一部は血中にも移行します。
このように、卵黄抗体を家畜が摂取することで、腸管および全身へ行き渡ります。

図4 家畜が卵黄抗体を摂取した場合

まとめ

① 卵黄抗体(別名:鶏卵抗体)は鳥類に存在する抗体の1種であるIgYであり、卵黄の中に大量に含まれる。
② 親鶏に抗原を接種することで、多様な病原体に対する特異的な卵黄抗体を作ることができる。
③ 卵黄抗体を家畜が摂取すると、腸管へと運ばれる。出生直後であれば、移行抗体と同様に血中へと移行する。


【参考文献】
1)Sitnik O. Production and characterization of egg yolk antibodies against bovine alimentary tract pathogens. Pol J Vet Sci. 2013;16(2):283-91.
2)Lee EN. In vitro studies of chicken egg yolk antibody (IgY) against Salmonella enteritidis and Salmonella typhimurium. Poult Sci. 2002 May;81(5):632-41.
3)Han S. Chicken Egg Yolk Antibody (IgY) Protects Mice Against Enterotoxigenic Escherichia coli Infection Through Improving Intestinal Health and Immune Response. Front Cell Infect Microbiol. 2021 Apr 13;11:662710.
4)Hatta H. Oral passive immunization effect of anti-human rotavirus IgY and its behavior against proteolytic enzymes. Biosci Biotechnol Biochem. 1993 Jul;57(7):1077-81.



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