はじめに
畜産ナビをご覧の皆様は、カラスに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。畜産現場には多数のカラスが飛来し、様々な被害をもたらします。カラスによる被害を減らすため、防鳥ネットやカラス対策品の設置など、様々なカラス対策を実施されていることと思います。ただ、残念ながら簡単にカラス被害をゼロにできる魔法のような対策は存在しません。
しかし、カラスのことを理解し、コツを押さえた対策を行うことで、被害を軽減することは可能です。対策を行う上では、畜産現場でのカラス被害がなぜ発生するかについて理解することが重要です。連載第一回の今回は、どのようなカラス被害があるかを整理し、それぞれが発生する理由について一緒に考えていきましょう。
しかし、カラスのことを理解し、コツを押さえた対策を行うことで、被害を軽減することは可能です。対策を行う上では、畜産現場でのカラス被害がなぜ発生するかについて理解することが重要です。連載第一回の今回は、どのようなカラス被害があるかを整理し、それぞれが発生する理由について一緒に考えていきましょう。
カラスにとって魅力的な家畜の飼料
カラスが家畜の飼料を食べてしまう被害は多くの生産者の皆様が経験されていると思います。家畜に給餌した飼料の1割がカラスに食べられていると憤った生産者様の訴えを聞いたこともあります。1割という数字は多少大げさなところもあるかもしれませんが、それだけカラスが日常的に飛来し、飼料を食べているところを目撃していることは間違いないでしょう。
なぜ、家畜の飼料を食べに来るのか、それは飼料が栄養価の高い食べ物であるからです。ちなみに、配合飼料に含まれるトウモロコシはカラスも大好きで、嗜好性が高い食べ物とも言えます。つまり、カラスにとって魅力的な食べ物があるゆえに、飼料がある畜舎内などに飛来してくるわけです(図1)。
なぜ、家畜の飼料を食べに来るのか、それは飼料が栄養価の高い食べ物であるからです。ちなみに、配合飼料に含まれるトウモロコシはカラスも大好きで、嗜好性が高い食べ物とも言えます。つまり、カラスにとって魅力的な食べ物があるゆえに、飼料がある畜舎内などに飛来してくるわけです(図1)。
図1. 畜舎内で飼料を食べるカラス
家畜への咬傷(こうしょう)
畜舎に侵入したカラスは、より深刻な被害を引き起こします。家畜への咬傷です。
カラスは興味のあるものをつつくという行動をします。我々が手で触ってものを確かめるような探索行動です。飼料を目的として侵入し、ある程度お腹が膨れたら、近くにいる家畜を興味本位でつつくことがあります。特に、瘡蓋(かさぶた)などは興味の対象になるようで、しつこくつつきます。すると、流血してしまいますが、これが問題です。血液はより栄養価の高い食べ物になります。そのため、一度味をしめてしまうと今度は血を求めてつつくようになります。ウシの乳房の大きな血管をつついて失血死させた事例もあるほどです。
この他に家畜への咬傷が悪化する例として、家畜の身体に付着した寄生虫をつつくことがきっかけとなる場合もあります。牛舎では、ウシに乗るカラスをよく目にします(図2)。背中で寄生虫をつつき続けた結果、皮下の肉に到達してしまい、ロース部分がえぐられてしまった例を聞いたこともあります。
カラスは興味のあるものをつつくという行動をします。我々が手で触ってものを確かめるような探索行動です。飼料を目的として侵入し、ある程度お腹が膨れたら、近くにいる家畜を興味本位でつつくことがあります。特に、瘡蓋(かさぶた)などは興味の対象になるようで、しつこくつつきます。すると、流血してしまいますが、これが問題です。血液はより栄養価の高い食べ物になります。そのため、一度味をしめてしまうと今度は血を求めてつつくようになります。ウシの乳房の大きな血管をつついて失血死させた事例もあるほどです。
この他に家畜への咬傷が悪化する例として、家畜の身体に付着した寄生虫をつつくことがきっかけとなる場合もあります。牛舎では、ウシに乗るカラスをよく目にします(図2)。背中で寄生虫をつつき続けた結果、皮下の肉に到達してしまい、ロース部分がえぐられてしまった例を聞いたこともあります。
図2. ウシの背中に乗るカラス
カラスが子牛を狙うわけ
ウシの分娩後は、ショッキングな被害が発生することがあります。後産の胎盤などが狙われる例も多いのですが、それだけならまだしも、生まれたての子牛をカラスがつつき、目玉をえぐられてしまった例もあります。それから、斃死した家畜を一時的に敷地内に置いていた際に、ちょっと目を離した隙に多数のカラスが群がっていたという例もあります。
カラスは動物の死体も食べる動物です。また、積極的に狩りをするわけではありませんが、生まれたばかりの動物や弱った動物を襲うこともあります。これはカラスが、食べるために襲う労力がかからない死体や弱い動物を狙う性質があるためです。カラスは目ざとくそれらを見つけ、捕食対象とします。
カラスは動物の死体も食べる動物です。また、積極的に狩りをするわけではありませんが、生まれたばかりの動物や弱った動物を襲うこともあります。これはカラスが、食べるために襲う労力がかからない死体や弱い動物を狙う性質があるためです。カラスは目ざとくそれらを見つけ、捕食対象とします。
農場の設備等を破壊することも
これまでのような食べる行為に関わる被害について、カラスへの怒りの感情はさておき、その発生理由は理解できると思います。しかし、なぜそんなことをするのか理解できないという相談を受ける事例もあります。例えば、農場に置いてあった重機のシートをボロボロにされてしまった(図3)、畜舎内に設置された水道管の断熱材をつつかれた(図4)などです。実はこれは、前述した探索行動が関係しています。飼料を十分食べて満足した後は、興味が別に移るのか、気になる箇所をしつこくつつきます。しかも、カラスはゴムなどの弾性のある素材をつつくのが好きなようです。また、重機のシートのように中からスポンジが出てくるというのも興味を引くのかもしれません。
図3. カラスに破壊された重機のシート
図4. カラスにつつかれた断熱材
病原菌やウイルスを伝播するカラス
畜舎内にカラスが侵入することで二次的に発生する被害があります。餌槽やウォーターカップ、柵などへの糞による汚染です(図5)。糞には病原菌やウイルスが含まれている1)場合もあり、家畜の病気の発生に繋がる可能性があります。また、野鳥の羽毛などからウイルスなどが検出された例2)もあることから、機械的に運んでいることも考えられます。
図5. 糞に汚染された柵
カラスにGPSをつけて、その移動経路を追跡した研究によると、同一個体による複数の畜産施設への往来が何度も確認されました3)。次から次に畜産施設を行き来することで、家畜感染症の原因となるウイルス等を、カラスが機械的に運んでいる可能性が示唆されています。
まとめと対策の基本
今回の記事では、カラスがもたらす畜産現場での被害について整理しました。カラスが農場にやってくるきっかけはやはり家畜の飼料です。あの場所に行けば常に美味しい食べ物が手に入るということが分かっているため、飛来します。また、カラスは記憶力が優れており、一度良い餌場であると学習すると、何度もしつこく飛来します。その後、家畜への咬傷・設備等の破壊・ウイルスの伝播などの深刻な被害に発展します。
さて、きっかけが家畜の飼料であること、その裏を返せば、いかにカラスに家畜の飼料を食べさせないかということが重要な対策になるわけです。つまり、畜舎の衛生管理を徹底すること、また、飼料にアプローチさせないことがカラス対策の基本となります。
次回以降では、カラスの生理・生態に加え、今回紹介したカラスの性質を踏まえた具体的な対策について紹介したいと思います。
さて、きっかけが家畜の飼料であること、その裏を返せば、いかにカラスに家畜の飼料を食べさせないかということが重要な対策になるわけです。つまり、畜舎の衛生管理を徹底すること、また、飼料にアプローチさせないことがカラス対策の基本となります。
次回以降では、カラスの生理・生態に加え、今回紹介したカラスの性質を踏まえた具体的な対策について紹介したいと思います。
参考文献
1)田原鈴子ら. 2009〜2014年に岡山県で流行した牛ボツリヌス症の解析と対策. 日本獣医師会雑誌, 68, 629-633, 2015.
2)Azeem et.al. Utility of Feathers for Avian Influenza Virus Detection in Commercial Poultry. Pathogens, 12, 1425, 2023.
3)竹田努ら. ハシブトガラス Corvusmacrorhynchosの移動距離と家畜農場への飛来の季節変動. 日本畜産学会報, 86, 191-199, 2015.
1)田原鈴子ら. 2009〜2014年に岡山県で流行した牛ボツリヌス症の解析と対策. 日本獣医師会雑誌, 68, 629-633, 2015.
2)Azeem et.al. Utility of Feathers for Avian Influenza Virus Detection in Commercial Poultry. Pathogens, 12, 1425, 2023.
3)竹田努ら. ハシブトガラス Corvusmacrorhynchosの移動距離と家畜農場への飛来の季節変動. 日本畜産学会報, 86, 191-199, 2015.