背景
養豚業界では、豚熱などの豚の感染症の流行が大きな懸念事項の一つとなっている。日本では、2018年の豚熱の再流行後、農場は現在も感染野生イノシシや豚熱汚染農場からの伝播リスクにさらされている。
目的
本研究では、豚熱の流行開始から感染リスクのある飼養豚へのワクチン接種キャンペーンが実施されるまでの期間を対象に、農場への豚熱ウイルスの侵入防止に効果的であったバイオセキュリティ対策を明らかにすることを目的とした。
材料および方法
ウイルスの侵入確率は、豚熱に感染した野生イノシシや周囲の感染農場の存在という高リスク状況において上昇すると仮定した。感染野生イノシシによるリスクの高さは、「野生イノシシの豚熱感染率」または「農場から半径10km以内の感染野生イノシシが確認された1km格子区域の数」のいずれか、および「近隣農場における豚熱発生の有無」で表すこととした。
一方、ウイルスの侵入確率は、各農場で実施されている農場内バイオセキュリティ対策によって低下すると仮定した。農場におけるバイオセキュリティ対策の実施状況および農場の特性に関する情報は、アンケート調査により収集した。
農場の近隣に感染野生イノシシがいなかった時期といた時期を識別した上で、各農場における毎週の状況について、二項一般化線形モデルを用いて解析した。
一方、ウイルスの侵入確率は、各農場で実施されている農場内バイオセキュリティ対策によって低下すると仮定した。農場におけるバイオセキュリティ対策の実施状況および農場の特性に関する情報は、アンケート調査により収集した。
農場の近隣に感染野生イノシシがいなかった時期といた時期を識別した上で、各農場における毎週の状況について、二項一般化線形モデルを用いて解析した。
結果
近隣に感染野生イノシシの存在が確認されていなかった農場で行われていた対策のうち、主に農場への豚熱ウイルスの侵入リスクを低減していたことが確認されたのは、豚舎内で使用する作業衣の毎日の洗浄および消毒であった。近隣に感染野生イノシシの存在が確認されていた農場において豚熱ウイルスの侵入防止に有効であったのは、農場内に公道が通っていないこと、および豚の死体保管場所への野生動物の侵入防止策が取られていることであった。
結論
豚熱ウイルスの侵入防止には厳格かつ包括的なバイオセキュリティ対策が必要であるという前提のもと、本研究で有効と考えられた対策を優先的に実施すべきである。
監訳者コメント
現在わが国では、農場でのワクチン接種により豚熱発生のリスクは大きく減少しているものの、野生動物集団内で常に流行状況が変化していることと、厳格な飼養衛生管理基準はすでに履行されていることの2点から、農場でのさらなる家畜防疫戦略の立案が困難な状況となっている。
本論文は、週ごとの感染野生イノシシからの感染圧を考慮した解析により、有効な農場衛生対策を示した。
本論文が、養豚・家畜衛生関係者が知恵を絞り協力して対応に当たる一助になることを願っている。
本論文は、週ごとの感染野生イノシシからの感染圧を考慮した解析により、有効な農場衛生対策を示した。
本論文が、養豚・家畜衛生関係者が知恵を絞り協力して対応に当たる一助になることを願っている。
© The Author(s) 2024. This is an open access article published under the CC BY license.
(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)
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