畜産農場における臭いのクレームとは?よくあるクレームとその対処法

クレームを受けたことがある農場は全戸数の約2%(※1)であると言われており、その半分程度は臭いに関係するものです。近年、宅地開発が進み、農場と住宅地などの距離が近くなったことにより生み出された問題もあります。この記事ではよくあるクレームとその対処法についてご紹介します。

堆肥が臭くなる理由

農場の堆肥発酵が上手くいっていない原因はふたつあります。ひとつめは堆肥が腐敗を起こしてしまっている場合です。堆肥に空気を送り込み、発酵を促すことによって臭いを減らすことができます。ふたつめは施設の設計段階で、自社の畜糞尿量を過少に計算してしまったなどの理由で、堆肥舎の処理能力が実際の糞尿の量に対して低い場合です。

時間や季節に関係するクレーム

クレームの原因となる臭いの中には特定の時間や、季節に関係するものがあります。大気の状態が変化していくことに由来します。

時間が関係するもの

臭い成分や臭いが付着した粉塵は、空気に乗って広がり、薄まっていきます。早朝や夕方は臭いのクレームが昼間とくらべて多い時間帯です。農場から発生する臭いは時間に関係なく一定ですが、このような時間は風が止み、臭いが強くなる傾向があるため注意が必要です。

季節が関係するもの

梅雨には臭いのクレームが増えますが、その原因はふたつあります。
ひとつめは湿気による腐敗です。湿気のせいで堆肥舎や畜舎の床は濡れたままになり、増殖した細菌によって飼料の腐敗が進み、糞便の臭いが発生します。糞は水分を吸収するため、堆肥化に必要な時間が長くなり、途中で腐敗してしまう原因にもなります。
ふたつめは低気圧によって臭いが留まるためです。低気圧では上昇気流(地面から空へ吹く風)が発生しにくくなり、臭いが薄まりにくくなります。
梅雨のクレームに対処するためには、清掃の回数を増やして臭いの発生源を取り除くことが有効です。

特定の作業に関係するもの

特定の作業を行うときに発生するクレームがあります。臭いが発生する作業、例えば堆肥の切り返しや移動、下水処理施設でのフロックのくみ出しなどを行うときに発生します。

悪臭問題の対応が不十分だと、行政措置を受ける可能性も

臭いのクレームへの対応が不十分だと、悪臭防止法に則って、地方自治体から行政措置を受ける場合があります。近隣住民が地方自治体に臭いのクレームを申し出ることで、地方自治体は農場を適切に管理し、悪臭の発生防止に努めるよう行政指導を行います。行政指導後に状態が改善されない場合は改善勧告、改善命令の順に行政措置が行われます。それでもなお臭いが改善されない場合は罰則を受けることになり、事業の拡大が困難になるばかりか、事業自体の継続もしにくくなります。

近隣住民とコミュニケーションを取り、良好な関係を築くことも対策

減臭対策を徹底的に行って臭いの発生を最小限にできても、農場周辺の臭いは完全にはなくなりませんし、近隣住民の中には臭いに敏感な人もいるでしょう。農場の問題を解決するためには、近隣住民との調和もポイントとなります。

ある大規模養鶏場では近隣住民との良好な関係構築のために、お祭りを開催しています。卵にまつわる様々な出し物やイベントでおいしく楽しいひと時を共有することで養鶏という産業の理解を求め、また、日本の食文化の一端を担っていることをアピールし、地域に根差す存在感を醸成しています。近隣住民とのコミュニケーションを増やし、農場に対する理解をしてもらうための工夫をすることも問題を解決するひとつの方法と言えるでしょう。

また、あるブロイラー大手では従業員が安心して働けるように保育所(保育園)を開設していて、従業員以外の児童も受け入れことにより地域の待機児童解消に貢献しています。

臭いの専門家に力を借りるという対処法

農場ではさまざまな要因で臭いが発生し、クレームの原因になります。いくつかの実例と対処法について説明しましたが、それぞれの農場で実際何が問題なのかは現地で調査をしなければ分からないこともあります。農場の経営者がクレームの対処に行き詰まったとき、いちばん頼りになるのは臭いの専門家の意見です。困ったときに専門家の力を借りることも、とても有効な対処法なのです。
共立製薬には、臭いの専門家が在籍しています。ぜひお問い合わせください。


※1:畜産環境シンポジウム(平成29年7月25日) 畜産の臭気対策について P6より引用