被害は年々増加傾向
ノカルジア症による魚病被害はブリ、カンパチ、ヒラメ、シマアジ、クロマグロ、イサキ、センネンダイと多くの養殖魚種で問題となっています。ブリ属の魚病被害のうち2番目に被害額が多い魚病で、全体の被害額の1/3を占めます。
また、その被害量は年々増加していて、これには養殖環境の高水温化が影響していると考えられます。
最近は多くの魚病でワクチンよる予防が可能になっていますが、ノカルジア症はまだワクチンが実用化されていないので、飼養管理による予防と早期の投薬による治療がとても重要です。また、同じ漁場でも生簀毎で被害の差が大きいことが特徴ですが、その差はそうした管理の良し悪しや治療のタイミングによるものだと思われます。
また、その被害量は年々増加していて、これには養殖環境の高水温化が影響していると考えられます。
最近は多くの魚病でワクチンよる予防が可能になっていますが、ノカルジア症はまだワクチンが実用化されていないので、飼養管理による予防と早期の投薬による治療がとても重要です。また、同じ漁場でも生簀毎で被害の差が大きいことが特徴ですが、その差はそうした管理の良し悪しや治療のタイミングによるものだと思われます。
ノカルジアは進行はゆっくりだがしぶとい病原菌
ノカルジア症はレンサ球菌症等と比べると感染から発症、発症から斃死までの進行が緩やかで遅い魚病です。
【感染】→【潜伏】→【発症】→【重症化】→【斃死】までにはかなり時間が掛かることから、早い段階で発症に気付くことが難しいのですが、それでも日々の現場での観察によって手掛かりを掴むことはできます。
外観症状としては、皮下の膿瘍による体表のポツポツとした突起、痩せ、体色が薄く青っぽくなる、エラに結節を形成する等があります(写真1、2)。そして症状が進行するにつれて痩せていき元気がなくなってきます。それらに気付くための観察の方法としては、直接潜水や魚体サイズ測定のためのカメラ撮影映像による体表の観察、それに生簀の上から魚群を観察して群れから外れて網の角を泳ぐ痩せた個体や給餌後に餌を食べれずに痩せて水面近くを泳ぐ個体の有無を注意深く観察することが有効です。
【感染】→【潜伏】→【発症】→【重症化】→【斃死】までにはかなり時間が掛かることから、早い段階で発症に気付くことが難しいのですが、それでも日々の現場での観察によって手掛かりを掴むことはできます。
外観症状としては、皮下の膿瘍による体表のポツポツとした突起、痩せ、体色が薄く青っぽくなる、エラに結節を形成する等があります(写真1、2)。そして症状が進行するにつれて痩せていき元気がなくなってきます。それらに気付くための観察の方法としては、直接潜水や魚体サイズ測定のためのカメラ撮影映像による体表の観察、それに生簀の上から魚群を観察して群れから外れて網の角を泳ぐ痩せた個体や給餌後に餌を食べれずに痩せて水面近くを泳ぐ個体の有無を注意深く観察することが有効です。
写真1:体表にポツポツした突起
写真2:エラに結節を形成
進行が遅いからこそ対策は早めに
進行の遅いノカルジア症への対策は斃死が起きてからでは完全に手遅れです。斃死が起きてから投薬してもほとんど効果は得られず、一旦増えてしまうと斃死が簡単に終息する魚病ではありません。治療効果が得られるのは、感染初期や潜伏期間、それに発症のごく初期に限られます。
例年発症が起こる漁場では、例年の発症や斃死の水温や時期を十分に把握した上で注意深い観察を行い、手遅れにならないよう早めに対策を検討しましょう(写真3) 。
例年発症が起こる漁場では、例年の発症や斃死の水温や時期を十分に把握した上で注意深い観察を行い、手遅れにならないよう早めに対策を検討しましょう(写真3) 。
写真3:脾臓の白色結節
ノカルジア症の対策で「投薬したのに効果が無かった」との話を聞くことがありますが、治療薬として承認があって感受性がある薬剤であれば効果はあるはずです。効果が得られない原因としては、投薬のタイミングが遅かったり、後述する網が汚れていて体表からの感染が繰り返したり常態化していることが考えられます。
20℃以上の水温帯では要注意、対策は継続的に
ノカルジア症の原因菌は水温12~32℃で発育可能で、25~28℃が至適温度とされていますが、実際の養殖魚での発症は、水温の上昇期では早ければ23℃あたりから見られ、高水温になるほど病勢は強くなります。
水温が下がっても一旦発症した個体は次第に痩せていき18℃を切る頃まではダラダラと斃死が続きます。
よって、対策のための投薬は20℃あたりから始めて継続的に行い、水温の下降期でも20℃を切る頃までは継続する必要があります。具体的にはこの高水温の期間は継続的に複数クールの投薬を行うことが必要です。
9月中旬の最高水温期までしか投薬をしなかったケースでは、水温下降期の11月に発症が起こり、それから水温が18℃を切る12月いっぱいまでダラダラと斃死が続きました。
水温が下がっても一旦発症した個体は次第に痩せていき18℃を切る頃まではダラダラと斃死が続きます。
よって、対策のための投薬は20℃あたりから始めて継続的に行い、水温の下降期でも20℃を切る頃までは継続する必要があります。具体的にはこの高水温の期間は継続的に複数クールの投薬を行うことが必要です。
9月中旬の最高水温期までしか投薬をしなかったケースでは、水温下降期の11月に発症が起こり、それから水温が18℃を切る12月いっぱいまでダラダラと斃死が続きました。
最近の高水温の影響
近年は高水温化で水温が20℃を超えるタイミングも早まっています。そして8~9月頃の最高水温も30℃近くの超高水温になることも少なくありません。また、併せて水温が18℃以下に下がる時期も遅くなっています。
このように高水温期が長く続くようになったことから、ノカルジア症の対策も以前に比べるとより早い時期から遅い時期まで長期間行う必要があります。漁場によって違いますが、対策が必要な期間はおおよそ6月から11月あたりまでの半年間近い長期間になっています(図1)。
また、最近は9~10月頃にブリの人工種苗を導入される場合がありますが、その時期はまだ高水温期です。導入間もないモジャコが感染して発症するケースも増えているので、モジャコであっても注意が必要です。
このように高水温期が長く続くようになったことから、ノカルジア症の対策も以前に比べるとより早い時期から遅い時期まで長期間行う必要があります。漁場によって違いますが、対策が必要な期間はおおよそ6月から11月あたりまでの半年間近い長期間になっています(図1)。
また、最近は9~10月頃にブリの人工種苗を導入される場合がありますが、その時期はまだ高水温期です。導入間もないモジャコが感染して発症するケースも増えているので、モジャコであっても注意が必要です。
図1:要対策水温帯と対策期間
最大の防御策は体表からの感染防止
どの魚病も同じですが、最大の対策は感染を防ぐことです。
ワクチンが無いノカルジア症の場合は投薬による対策は重要ですが、それ以前に感染をさせない、感染を最小限に抑えることが最大の防御です。
ノカルジア症の感染は体表からが最も多いと思われます。特にブリやカンパチはハダムシ(べネデニア)が体表に寄生することが多いのですが、ハダムシが寄生していると魚は生簀の網底で体表を擦る行動をとります。その際に網底にフジツボやカキ類等の硬い付着物が付いていると体を擦ることで擦過傷となり、感染率が非常に高くなります。ハダムシの対策としても網の汚れの管理はとても重要です。網が汚れたままでは感染が続くことになり、投薬による治療の効果は全く無いどころかどんどん感染が広がります。まずは網を洗うことが先決です。
網の管理が適切な場合でも、底網の材質で発症率に傾向が見られます。一般的には金網より化繊網のような柔らかな網素材のほうが体表を擦った時の当たりが柔らかいためか発症率は低いようです。特にブリやカンパチでは化繊網だとハダムシ寄生が多いという見方があるようですが、化繊網でも底の網を強く張ればハダムシの寄生を抑えることができます。
ワクチンが無いノカルジア症の場合は投薬による対策は重要ですが、それ以前に感染をさせない、感染を最小限に抑えることが最大の防御です。
ノカルジア症の感染は体表からが最も多いと思われます。特にブリやカンパチはハダムシ(べネデニア)が体表に寄生することが多いのですが、ハダムシが寄生していると魚は生簀の網底で体表を擦る行動をとります。その際に網底にフジツボやカキ類等の硬い付着物が付いていると体を擦ることで擦過傷となり、感染率が非常に高くなります。ハダムシの対策としても網の汚れの管理はとても重要です。網が汚れたままでは感染が続くことになり、投薬による治療の効果は全く無いどころかどんどん感染が広がります。まずは網を洗うことが先決です。
網の管理が適切な場合でも、底網の材質で発症率に傾向が見られます。一般的には金網より化繊網のような柔らかな網素材のほうが体表を擦った時の当たりが柔らかいためか発症率は低いようです。特にブリやカンパチでは化繊網だとハダムシ寄生が多いという見方があるようですが、化繊網でも底の網を強く張ればハダムシの寄生を抑えることができます。
また、体表からの病原菌の感染防御には体表粘液が重要な働きをしますが、長期間の餌止めや栄養状態が悪いと粘液の分泌が少なくなり、感染し易くなります。
栄養管理は重要な予防策です。夏期の赤潮発生時には餌止めを余儀なくされることはありますが、長期間の餌止めはノカルジア症の発症に強く影響することも赤潮対策と併せて意識しておく必要があります。
栄養管理は重要な予防策です。夏期の赤潮発生時には餌止めを余儀なくされることはありますが、長期間の餌止めはノカルジア症の発症に強く影響することも赤潮対策と併せて意識しておく必要があります。
このようにノカルジア症の感染と発症には複合的な要素が関係しているので注意すべき管理は多岐にわたります。
しかし、これらの要素の管理を適切にすることはノカルジア症の対策だけでなく、養殖魚を健康に育てることに全て繋がるものです。
日々、魚をよく観察し、環境条件に注意し、適切な管理を行うことでノカルジア症をはじめとした魚病や寄生虫の対策を行ってください。
しかし、これらの要素の管理を適切にすることはノカルジア症の対策だけでなく、養殖魚を健康に育てることに全て繋がるものです。
日々、魚をよく観察し、環境条件に注意し、適切な管理を行うことでノカルジア症をはじめとした魚病や寄生虫の対策を行ってください。