こんなシグナルはありませんか?
①肝臓廃棄が多い
②肥育舎で血便や水様下痢がみられる
③哺乳子豚の下痢がみられる/増体が低下している
このようなシグナルは、寄生虫が原因かもしれません。3点の原因はそれぞれ次のようになります。
②肥育舎で血便や水様下痢がみられる
③哺乳子豚の下痢がみられる/増体が低下している
このようなシグナルは、寄生虫が原因かもしれません。3点の原因はそれぞれ次のようになります。
肝臓廃棄が多い
と畜検査で豚回虫によるミルクスポット(肝白斑)がみつかると、肝臓は廃棄になります。肝臓の廃棄率に着目して、多いと気づくことはありませんか?
肥育舎で血便や水様下痢がみられる
・赤色の血便を排泄する
・水様下痢便を排泄する
・上記が特にオガコ豚舎で発生している
このような特徴がみられたら、豚鞭虫の可能性があります。
・水様下痢便を排泄する
・上記が特にオガコ豚舎で発生している
このような特徴がみられたら、豚鞭虫の可能性があります。
哺乳子豚の下痢がみられる/増体が低下している
1~2週齢の子豚で起こる黄~灰色の悪臭を伴う下痢は、コクシジウム症が疑われます。コクシジウム症は症状がみられなくても、増体が低下するといわれています。
それでは、これらの寄生虫についてもう少し詳しく解説します。
それでは、これらの寄生虫についてもう少し詳しく解説します。
豚で問題となる寄生虫
<豚回虫症>
豚回虫は、前述の通りミルクスポットで有名ですが、成熟卵を経口摂取して感染が成立した後、小腸で孵化した幼虫は、肝臓→肺→気管支→食道→小腸へ順に体内を移行することで、組織を傷害します。幼虫が肝臓を通過した後に、修復された跡がミルクスポットとしてみられ、肺を通過することで肺炎が起こります。また、気管支、食道から小腸へ戻って成虫になり、感染から約60日で産卵を開始します。小腸に寄生することで粘膜に傷を作り、下痢を起こしたり、成虫が養分を吸い取ることで宿主である豚の栄養を横取りしたりします。そのため、増体の低下や出荷日齢の延長にもつながります。
ミルクスポットが治癒するには5~6週間かかります。そのため、と畜場でみつかる場合は出荷前数週間以内に感染していると推測できます。
<豚鞭虫症>
豚鞭虫は主に盲腸に寄生し、盲腸と結腸に病変を作るため、赤色の血便(鮮血便)や水様下痢便を排泄します。その他に、削痩や腰のふらつきがみられることもあります。
オガコ豚舎で特に問題となりやすいですが、それは鞭虫卵にとって都合のよいすみかだからです。鞭虫卵は、他の線虫卵に比べると高めの30~35度が適温です。オガコ豚舎ではオガコと糞尿が混ざって発酵することで、鞭虫卵にとってちょうどよい温度と湿度が維持されるため、環境中に残ってしまいます。
オガコ豚舎で特に問題となりやすいですが、それは鞭虫卵にとって都合のよいすみかだからです。鞭虫卵は、他の線虫卵に比べると高めの30~35度が適温です。オガコ豚舎ではオガコと糞尿が混ざって発酵することで、鞭虫卵にとってちょうどよい温度と湿度が維持されるため、環境中に残ってしまいます。
<コクシジウム症>
豚のコクシジウム症は、シストイソスポラ(イソスポラ)・スイスが主な原因です。コクシジウムのオーシストを経口摂取することで感染が成立し、子豚の小腸に到達して症状が出るまで約5日かかるため、1~2週齢の哺乳子豚に下痢と発育不良を起こします。コクシジウムによる下痢では血液は含まれず、黄~灰色の下痢便を排泄します。下痢が治ったとしても、子豚の時期の発育がよくないとその後の増体に影響を及ぼすといわれており、この時期の発育不良、バラツキは無視できない問題です。
また、オーシストは環境中での抵抗性が強く、一般の消毒薬では殺滅することができないため注意が必要です。
また、オーシストは環境中での抵抗性が強く、一般の消毒薬では殺滅することができないため注意が必要です。
対策のポイント
①原因を特定する
②効果のある駆虫薬を選択する
③環境対策も併せて実施する
②効果のある駆虫薬を選択する
③環境対策も併せて実施する
原因を特定する
原因となる寄生虫を特定するには、糞便からの虫卵・オーシスト検査が有効です。豚房内で数か所から新鮮な落下便を採取して検査します。豚鞭虫症の場合はオガコからも鞭虫卵が検出されることがあります。
効果のある駆虫薬を選択する
原因がわかったら、効果のある駆虫薬を選択します。下記の表を参考にしてください。豚鞭虫にはフェンベンダゾール、豚回虫にはフェンベンダゾールだけでなく、イベルメクチンやレバミゾール塩酸塩も効果があります。コクシジウム症対策には、生まれた子豚へのトルトラズリル製剤の投与が有効です。子豚が生まれたら投与して、発症を防止しましょう。
環境対策も併せて実施する
また、寄生虫は豚の体内・体表だけではなく、糞便やオガコ、床面、ほこりなど環境中にも存在しています。そのため駆虫薬の投与と並行して、環境対策も行いましょう。具体的には、豚舎内や床の清掃、オールアウト後の洗浄・乾燥・消毒、オガコ豚舎ではオガコの入れ替えを行い、環境中の虫卵やオーシストの数を減らしましょう。コクシジウム症の対策では、コクシジウムに効果のある消毒薬を選択することも重要です。
寄生虫が疑われるシグナルをみつけたら、対策を見直して生産性の低下を防ぎましょう。
寄生虫が疑われるシグナルをみつけたら、対策を見直して生産性の低下を防ぎましょう。