養殖業において、魚の状態を把握することは経営の根幹です。しかし、「見たいけれど見えない」というもどかしさを感じていませんか?本記事では、潜水のリスクを回避し、効率的な管理を実現する「水中ドローン」の活用についてご紹介します。

養殖の最重要ポイントは「魚の観察」

養殖管理の要は、言うまでもなく「魚を観察すること」です。しかし、魚は水面下にいるため、上からではその実態はほとんど見えません。
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水面下の死角 給餌の際には魚は上がってきますが、体調の悪い個体や瀕死魚や斃死魚は底に沈んでいるので見ることができません。
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早期発見の難しさ 魚病が発生しても、水面に浮いてくる頃には手遅れになるケースも少なくありません。魚病の対策は早期に発見することが重要です。
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精神的メリット 「異常がないこと」をリアルタイムで確認できることは、管理者の精神衛生上、非常に大きな安心材料となります。

「潜水」による観察のリスクと限界

従来、水中を確認するには人が潜るしかありませんでした。しかし、潜水作業には常に命の危険が伴います。
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身体的リスク 減圧症(潜水病)、圧外傷(耳や肺の損傷)、窒素酔いによる判断力低下。
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過酷な環境 夏の酷暑、冬の極寒の中での作業に加え、高額な装備と専門資格・適性が必要。
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最大の懸念 何よりも「命懸けの作業」であるという点です。

水中ドローン(ROV)を導入する9つのメリット

水中ドローン(ROV:Remotely Operated Vehicle)は、有線で操作する小型無人潜水機です。
導入にあたっては機材の購入コストや操作技術の習得といったハードルがありますが、近年は低価格化が進み、養殖現場でも現実的な選択肢となりました。

水中ドローンの主な利点

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安全性 人が潜らないため、人が事故にあうリスクはほぼゼロ。
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通年対応 水温に左右されず、年間を通じて船上や陸上から快適に操作可能。
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属人性の解消 資格不要。操作技術を習得すれば誰でも使用できる。
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魚への低ストレス 潜水士よりも魚が警戒しにくく、ドローンに慣れれば至近距離での観察が可能。
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機動力 移動が速く、複数の生簀を連続して効率よくチェックできる。
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長時間稼働 充電式リチウムイオンバッテリーが主流。バッテリーが続く限り、疲れ知らずで観察を継続。
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定点観測 ホバリング機能により、特定の場所をじっくり観察。
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情報共有 現場の映像をその場で複数人と確認できる。
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デジタル記録 静止画・動画の保存や共有が可能。
特に得意とするホバリング機能では自動で姿勢を安定させてくれるほか、前進・後退、左右の移動(スライド)、上昇・下降、旋回(ヨー)、傾き(チルト)、ロール(回転)など、水中で360度自由に動くことができます。

水中ドローンの得意な動き

比較:潜水 vs 水中ドローン

補足: 網の補修や死魚の回収などの「物理作業」は潜水が勝りますが、「観察・点検」においては水中ドローンのコスパ・タイパが圧倒的に高いです。

水中ドローンによる養殖生簀モニタリング

水中ドローンによる養殖生簀モニタリング ― 斃死魚の発見と観察

※上記動画には、魚の斃死シーンが含まれております。閲覧の際はご注意いただき、ご了承のうえご視聴くださいますようお願いいたします。

初めての機種選定

初心者が導入する際に重視すべきポイントをまとめました。

※ 各質問をクリック(タップ)すると回答が表示されます

Q1 スペックはどこを見るべき?
A1 以下の項目について、確認してください。 ①バッテリー
長く持つほど良いのですが、高価になりがちです。初めての導入であれば3〜4時間以上持つものであれば良いでしょう。
②速度
ブリ成魚などが起こす流れは結構速いため、潮流に負けない推進力があるか。
③ケーブル
取り回しの容易さ(繰り出し・巻き取りのしやすさ)や水の抵抗を抑えるため、細いものが扱いやすい。
Q2 メンテナンスは大変?
A2 使用後の塩抜きと、定期的なOリング(パッキン)交換のみでOK。
Q3 どこで買うのが正解?
A3 海外製が主流のため、故障時に備えて国内のサポート体制が整っている販売店を選びましょう。
Q4 予算と耐用年数は?
A4 観察用なら10万〜30万円で十分です。耐用年数は2〜5年程度が目安です。
水中ドローンを活用すれば、生簀内の魚だけでなく、網の破れや係留施設の状況も安全に確認できます。まずは手頃な機種から「水中ドローンデビュー」して、スマートな養殖管理を始めてみませんか?
次回以降は具体的な活用例をご紹介いたします。



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