効果的なワクチン接種のポイント -豚編 -

効果的なワクチン接種のポイント -豚編 -

ワクチンの効果を最大限に発揮するためには、正しい保管・準備・接種方法を守ることが前提です。以前には動物用医薬品の保管のポイントをご紹介しましたが、今回はワクチンの準備から接種時のポイントを確認したいと思います。なお、ご使用に際しては各製品の添付文書をご確認ください。

さあ接種!のその前に

豚の健康状態は?

ワクチンは、病気の原因となる病原体や、細菌が産生する毒素の毒性を弱くしたり無くしたりして作られます。ワクチンを健康な豚に接種することで、その病気に対する免疫(抵抗力)があらかじめ体の中で作られ、その豚の病気の発症や重症化を予防することができます。免疫を付けるためには、豚が健康であることが前提となります。そのため、ワクチンを接種する前には豚の健康状態をまず確認しましょう。何か病気にかかっている時には、十分な免疫が付与されないこともありますので、その場合は病気の治療を優先し、元気になってからワクチンを接種しましょう。

よく混ぜてから使用していますか?

ワクチンを使用する際には、ワクチンを泡立てないように注意して、上下にゆっくりと何度かよく混ぜて(転倒混和して)からご使用ください。混ぜることは成分を均一にするために重要です。泡立ってしまうと接種時に空気が入ってしまい、必要な量を注射できない可能性があるため、それを防ぎます。溶解が必要な生ワクチンの接種に際しては、頭数が多く接種に時間がかかる場合は、最初に全頭分の本数のワクチンをまとめて溶解するのではなく、何本かに分けて、こまめに必要本数を溶解してご使用ください。
また写真のように、接種前にぬるま湯などで常温に戻すことがあると思います。製品によっては、温度の影響を受けやすく、ワクチン本来の効果が得られない可能性がありますので、温め過ぎないようご注意ください。
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接種部位について

豚用ワクチンのほとんどは、頚部筋肉内接種です。筋肉内以外の、皮下の脂肪層や筋間部に入ってしまうと、効果が得られないばかりか、場合によってはこれらの組織に傷をつけてしまうかもしれません。接種された豚が食品になることも考えると、耳根部に接種することが適切です。接種部位をアルコール綿などで消毒してから接種しましょう 。
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注射針の選び方

各発育ステージ・体重によって、脂肪層の厚さは異なります。適切な長さ・太さの注射針を選択しないと、細いと折れてしまったり、短いと適切な部位に届かなかったり、太過ぎると薬液が注射した部位から漏れ出ることなどが考えられます。目安として下の表を参考に選んでください。
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参考:養豚の友 2020年1月
   OAKWOOD Veterinary Group のウェブサイト
   Virginia Cooperative Extension. (Virginia Tech・Virginia State University)
   SOP: Intramuscular Injection in Swine. (the Office of the University Veterinarian
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病気の伝播を防ぐためには、注射針を使いまわさないことも重要です。母豚なら1頭1針、肉豚なら1豚房1針を目安に交換しましょう。

注射針の回収を忘れずに

ワクチン接種が終わった後は、注射針の回収を忘れないようにしましょう。接種の前後で注射針の本数が同じであることを確認してください。
もし万が一、注射針の本数が接種前と接種後で一致しない場合には、HACCPの危害要因でもある、注射針の残留の可能性があります。その際、当該個体の特定ができなければ、ロット管理として出荷時まで記録を残し、と畜場に情報を伝える必要があります。十分ご注意ください。
ワクチンの準備・接種時のポイントを再認識することで、ワクチンの効果を最大限発揮させて、感染症から豚を守りましょう。
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