飼養衛生管理基準の改正内容とは?8つの項目を解説

飼養衛生管理基準の改正内容とは?8つの項目を解説

家畜の所有者が衛生管理において尊守すべき事項がまとめられた「飼養衛生管理基準」が2020年(令和2年)に改正され、一部の規定を除いて同年7月1日から施行されました(豚)。

※(牛、水牛、鹿、めん羊、山羊)(鶏その他家きん)(馬):令和2年10月1日施行

さまざまな改正事項があり、中には家畜の所有者にとってインパクトの大きいものもあります。この記事では改正された飼養衛生管理基準の中から8つの項目を紹介します。

飼養衛生管理の体制強化

項目1|飼養衛生管理者を新設

 (587)

飼養衛生管理基準の改正後、衛生管理における農場の管理者として「飼養衛生管理者」を選任することが義務付けられました 飼養衛生管理者に特別な資格はありません。衛生管理区域ごとに飼養衛生管理者を決め、地域ごとに管轄する家畜保健衛生所に報告する必要があります。

家畜の所有者が別の農場に家畜を預けて飼育している場合や公共牧場に預けている場合、預かっている側が飼養衛生管理者となります。また、牛・水牛・鹿・馬・めん羊・山羊・豚・いのしし・鶏・あひる・うずら・きじ・だちょう・ほろほろ鳥・七面鳥の所有者であれば、畜産の生産者に限らず、ペットや研究用、動物園の公開用でも飼養衛生管理に取り組む義務があります。

牛・水牛・鹿・馬・めん羊・山羊・豚・いのしし・鶏・あひる・うずら・きじ・だちょう・ほろほろ鳥又は七面鳥の所有者は、1頭(羽)でも飼養している場合、畜産農場に限らず、ペットや研究用、動物園の公開用であっても飼養衛生管理者を選任しなければなりません。

項目2|マニュアル作成・従事者及び関係者への周知徹底

 (588)

飼養衛生管理者は、飼養衛生管理について従事者や関係する外部の事業者が遵守すべき内容をまとめ、マニュアルとして作成することが義務付けられます。マニュアルに載せるべき内容は、農場内への持ち込みを禁止する物品についてや、農場内へ工具や機材、食品などを持ち込む場合の取り扱いについて、手指や衣服・靴・物品・車両・施設などの洗浄および消毒に関する具体的な方法などです。

マニュアルには獣医師などの専門家の意見を反映させる必要があります。また、従事者や関係者には、作成したマニュアルを配布したり、看板を設置したりして、記載された内容を遵守するよう、情報を周知徹底することが求められます。

この規定の施行時期は畜種によって異なり、「豚・いのしし」は令和3年4月から、「牛・水牛・鹿・めん羊・山羊」「鶏その他家きん」「馬」は令和4年2月からの予定です。

衛生管理区域について

項目3|衛生管理区域の明確化

 (589)

衛生管理区域については、改正前から「自らの農場を、衛生管理区域とそれ以外の区域とに分け、両区域の境界がわかるようにすること」とされていましたが、改正により管理区域の定義がより明確化されました。

改正後、衛生管理区域は「畜舎、家畜に直接接触する物品の保管場所並びに家畜に直接触れた者が消毒並びに衣服及び靴の交換(畜舎ごとに行う消毒並びに衣服及び靴の交換を除く)を行わずに行動する範囲の全てを網羅すること」と定義されています。これにより、場合によっては区域内の設備移動や作業動線の見直しが必要です。加えて、養豚場については柵の設置が必要になりました。

新たな規制

項目4|愛玩動物の飼育禁止

 (590)

飼養衛生管理基準の改正後は、愛玩動物からウイルスが広がるリスクを考慮し、衛生管理区域内でペットを飼育することや持ち込むことが禁止となりました。愛玩動物の飼養を業務とする観光牧場などでは、飼育場所を限定する場合に管理区域内での飼育が認められますが、基本的にはNGとなります。

これまではネズミ対策などの目的で猫を畜舎の近くで飼育してきた農場も少なくないでしょう。しかし、これからはペットを管理区域から離し、区域外で飼育することが求められます。

項目5|放牧制限の準備 (牛・豚)

 (591)

飼養衛生管理基準の元となる家畜伝染病予防法では、第34条で以下のように定められています。

「都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、規則を定め、一定種類の家畜の放牧、種付、と畜場以外の場所におけると殺又はふ卵を停止し、又は制限することができる。」

飼養衛生管理基準の改正後は、法第34条に基づいて放牧の停止や制限があった場合に備え、家畜を収容できる避難用設備を確保しておくことや、出荷や移動のための準備を整えておくことが追加されました。

この改正に対応するためには、放牧で家畜を飼育している農場は準備に多大な時間とコストをかけねばなりません。放牧制限への準備については、豚が2021年(令和3年)4月、牛が同年10月の施行となるため、そのタイミングに向けて徐々に対応していく必要があります。

消毒などについて

項目6|衛生管理区域入口での更衣および車両を乗降する際の交差汚染防止措置

 (592)

衛生管理区域内に入る場合、専用の衣服や靴、ブーツカバーなどの着用が必須となりました。また、着替えるときに病原体が衛生管理区域に侵入することを防ぐため、脱いだ衣服とこれから着る衣服を離して保管する必要があります。

また、衛生管理区域内に入る人と出る人の動線を分離して経路を一方通行とすることで交差汚染を防止できます。同時に衣服や靴に排せつ物や汚泥などが付着した場合には、洗浄や消毒を行い、衛生管理区域外に持ち出さないことが大切です。

項目7|衛生管理区域内の整理整頓及び消毒

 (593)

衛生管理区域内に不要な資材や機材が置いてあったり、雑草が繁っていたりすると、衛生管理上問題が発生します。ねずみなどの野生動物の隠れ場所となってしまったり、病原体の拡散につながる可能性があります。

改定後の飼養衛生管理基準では、衛生管理区域内の整理整頓や処分および除草を行うことが追加されました。日課として整理を心がけ、定期的に除草や消毒をするのが理想的です。

項目8|衛生管理区域から搬出する物品の消毒

 (594)

衛生管理区域から資材や機材、飼料などを持ち出す際、それらに家畜の排せつ物が付着している場合があります。飼養衛生管理基準の改正後は、病原体の持ち出しを防ぐ対策として、そうした物品の洗浄や消毒を行ってから持ち出す必要があります。

飼養衛生管理基準の改正に合わせてできるだけ早期に対応を!

飼養衛生管理基準の改正により、飼養衛生管理基準はより厳しくなり、頭を悩ませる畜産農場は少なくないでしょう。畜産業界で一丸となってさらなる防疫対策の強化に取り組み、伝染病のまん延という最悪の事態を未然に防ぐことができます。また、家畜の健康を基本に食の安全を高め安定供給に努めることで、業界の経営不安の解消に繋がります。

今回ご紹介した8つの改正の中では、「マニュアル作成・従業員及び関係者への周知徹底」と「放牧制限への準備」を除いて6つの規定がすでに施行されているため、対策がお済みでない場合はできるだけ速やかに対応しましょう。

「何からどう手をつければ良いかわからない」とお悩みの方は、一度共立製薬までご相談ください。畜産農場における農場HACCP認証審査員が、飼養衛生管理基準の取り組みをサポートいたします。
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