新生子豚の温度管理のポイント

新生子豚の温度管理のポイント

新生子豚の温度管理はどのように実施されていますか?子豚の時期は事故が多いですが、温度管理を見直すことでより多く子豚を守り、育てることができます。そこでこの記事では、子豚の事故とその原因を改めて考え、新生子豚の温度管理のポイントを確認したいと思います。

子豚の事故はいつ起きている?

肥育豚が生まれてから出荷されるまでの期間で、特に事故が多いのが分娩時~哺乳開始前の事故(11%)です。そのうち7%は白子と黒子、残りの4%は哺乳開始前の事故と言われています。哺乳中も同じく11%ですが、哺乳開始前までの短時間で同じ割合ということから、特に生まれてすぐの事故が多いことがわかると思います。
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その後、無事哺乳を開始したとしても、哺乳中の事故の半数以上は分娩後48時間以内に起きています。その内訳としては、分娩後24時間以内に約45%、分娩後24時間~48時間に約20%です。
これらの割合から、母豚1産当たりの分娩頭数を14頭として試算してみると、
哺乳開始前の事故率(4%)から、14頭×4%=0.56頭
哺乳中の事故(11%)のうち分娩から48時間以内に65%が起こることから、
14頭×11%×65%=1.00頭
合わせて、0.56頭+1.00頭=1.56頭/産
が失われている計算になります。
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さらに、産子数が多いほど、死産頭数や哺乳中の死亡頭数も多くなるため、産まれてすぐの子豚の管理が、出荷頭数を増やすために重要だといえると思います。

分娩直後の事故原因

次に、分娩直後の事故の原因を考えてみたいと思います。哺乳開始前の事故(初乳を飲むことなく死んでしまう)は、低体温と低血糖により活力が低下し、初乳を飲むことなく死亡、または圧死してしまうケースです。母豚の子宮内の温度は約39℃ですが、産まれた子豚はいきなり約20℃の環境に放り出されます。産まれたばかりの子豚は体表が濡れているため、そのまま放置してしまうと気化熱により体温は急速に奪われ、体力を消耗してしまいます。
また、哺乳開始後(哺乳中)の事故(初乳を飲んだが、死んでしまう)は、体温の低下または、初乳の摂取量が不十分だったことが考えられます。生後24時間の体温が38~39℃だった子豚は離乳時の生存率が93%だったのに対し、36~37℃だった子豚は85%というデータもあり、生後24時間の子豚の体温は、その後の生存率に直結していると言えます。初乳は、なるべく早くたくさん飲ませることが重要ですが、生存率を上げるためには250mL以上の摂取が必要とも言われています。

分娩直後の事故を減らすために

分娩時・直後の事故を減らすためには、分娩時間を日中に集中させて、積極的な看護を行うことが重要です。分娩時間の同期化、集中化にはホルモン剤を用いた介護分娩が用いられます。
積極的な看護としては、作業者が分娩を介助し、新生子豚を乾燥・保温した後、十分に初乳を摂取させることが必要になります。このうち乾燥と保温について、次の項でポイントを確認したいと思います。

新生子豚の温度管理のポイント

①まず、体表を乾燥させることが重要
②保温箱に入れ、体力の消耗を防ぐ
③その後、十分に初乳を飲ませる(必要に応じて分割授乳も実施 )
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分娩開始前に、保温ランプの電源を入れて暖かくしておきます。分娩舎内は母豚に合わせて21~22℃に調整されていますが、生まれてすぐの子豚は30~35℃の環境温度を必要とします。
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新・豚病対策 石川弘道・石関沙代子共著 (有)ベネット発行 2021年 より改変 (2168)

via 新・豚病対策 石川弘道・石関沙代子共著 (有)ベネット発行 2021年 より改変
分娩が始まり子豚が娩出されたら、すぐに乾燥させます。タオルなどで拭く方法もありますが、より衛生的で手間が少ない方法として粉状の乾燥材(スタローサンFなど)が便利です。バケツなどに乾燥材を入れ、その中に子豚を入れて全身にしっかりまぶします。天ぷら粉をまぶすイメージです。乾燥材を分娩が始まる前に、保温箱の床に散布しておくのも良いでしょう。
体温低下、体力の消耗を防ぐことは、より早く初乳を飲むことにもつながります。
乾燥と保温のポイントを再確認し、乾燥材などを活用することで子豚の事故を減らし、生産性をアップしましょう。
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スタローンサンFパンフレットのダウンロードは こちらから
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