有機酸で飲水の管理を見直してみませんか? 第1回 ~なぜ飲水の品質が重要なのか~

有機酸で飲水の管理を見直してみませんか?                                                                    第1回 ~なぜ飲水の品質が重要なのか~

日頃、畜舎での飲水の管理はどのように実施されていますか?このシリーズでは、飲水の管理および飲水の管理に役立つ有機酸についてご紹介していきます。第1回では「なぜ飲水の品質が重要なのか」について説明します。

水の役割

水は動物の体の大部分を構成する要素です。鶏の雛では体重の75%、成鶏は65~70%が水で占められています。そして、水は代謝という点でも重要な役割を果たしており、血液や栄養の運搬として、また高温時には体温調節の役割も担っています。その一方で、水は病原体の感染経路としてのリスクも有しています。つまり、水の品質は、健康維持の基盤であり、家畜の成育や動物福祉にも影響を及ぼすものです。
家畜の飲水量

家畜の飲水量

via トラウニュートリション社内資料

水の処理について

水の微生物学的な分析検査によって、飲水を介して家畜の健康や成長に影響を及ぼすような病原体を特定することができます。例えば大腸菌やサルモネラは、下痢や軟便を引き起こし、免疫や成長の低下、飼料要求率の悪化といった問題につながっていきます。病原体の飲水を介した感染源は、主に2つあります。一つは、水源自体の汚染、そして二つ目は、貯水タンクや給水システムからの汚染です。

水を媒介する微生物について

飲水中には、健康や成長に影響をおよぼすシアノバクテリア(ラン藻)のような微生物、細菌、酵母やカビなどの真菌及びウイルスなどが存在し、その中には病原性を示すものもあります。これら微生物の増殖には、様々な要因があり、まず、最初の汚染状態に加えて、増殖に必要な栄養、酸素、湿度や温度、そして水のpHも影響してきます。

例えば、カビは、pH 1.5~10の範囲で増殖していきます。酵母はpH 1.5~9までが増殖の最適値です。乳酸菌のような動物にとって有用な微生物では2.5~8が最適値です。そして、大腸菌やサルモネラ、クロストリジウムといった病原菌はpH 4.5~8が最適値となり、この範囲では活発に増殖します。これらの病原菌をコントロールするために、飲水のpHは4以下が推奨されています。
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給水システムの落とし穴

給水管やニップルはどのような状態でしょうか。給水管の内側にバイオフィルム※ができると、水は健康上のリスクになります。バイオフィルムは、細菌や酵母の増殖の温床となり、動物は常に飲水から細菌を摂取していることになるため、成長にも影響がでてきます。豚の飼育ステージが終了するごとに、移動のタイミングで畜舎の洗浄と消毒および水質管理を推奨します。
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形成されたバイオフィルムは、ただ水を流すだけでは取り除くことはできません。まず除去には、化学薬品などを使用して給水管を洗浄する必要があります。最も効果的なものが、過酸化水素、次に二酸化塩素です。これらの薬品を使ってバイオフィルムを除去することができます。

一方でバイオフィルムの発生や増殖予防に、次亜塩素酸や有機酸などの酸性化剤の利用が有効です。しかしながら、給水管にすでにバイオフィルムが形成されていると、これらの製剤の効能は弱まります。よって、確実にバイオフィルムを除去した上で、これらの製剤を使用することが重要です。

次回は飲水管理に役立つ有機酸の特徴と家畜への有機酸の給与についてご紹介します。

※バイオフィルム
微生物自身が生成する物質により、固体や生物のからだの表面に付着して存在している微生物の集合体のこと。身近な例としては台所のヌメリなどがあります。
農場で確認されたバイオフィルム

農場で確認されたバイオフィルム

写真1:配水ホース内部
写真2:水栓金具内部
写真3:給水管内部
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