大豆イソフラボンで育てた大型メスウナギの味

前回の記事では大豆イソフラボンを用いた大型メスウナギの生産技術についてご紹介しました。
この技術ができるまで、養殖ウナギはほとんどがオスでした。つまり、我々が今まで食べていたのはオスのウナギだったわけです。
大きなメスのウナギは美味しいのか……?!
本稿ではその気になる味について、科学的分析データに基づいてご紹介します。普段ウナギを食べるときに雌雄を意識することは滅多にないですが、実はオスとメスでは味の特徴に違いがあることが見えてきました。

本研究は、イノベーション創出強化研究推進事業(JPJ007097)にて実施しました。

図1 大型メスウナギと通常の出荷サイズのオスウナギ

大型メスウナギは、従来のオスウナギと味が違うのか? これを調べるために、用意したのは養殖場で生産された大型メスウナギ(魚体重 約400g)と、通常の出荷サイズのオスウナギ(魚体重 約200g)です。
人による食べ比べに加え、各種機器による科学的分析で「食感」「成分」「味わい」を数値化し、メスウナギの味の特徴を調べました。(分析実施機関:株式会社味香り戦略研究所

図2 大型メスウナギ(魚体重 約400g)と、通常の出荷サイズのオスウナギ(魚体重 約200g)の蒲焼

食味評価(実際に人が食べた評価)

大型メスウナギを食べた人もその美味しさを高く評価
まずは、人による食べ比べでその美味しさを評価してみました。その結果、大型メスウナギの方が美味しいと感じた人が約7割と高評価です。  

図3 大型メスウナギと通常サイズのオスウナギの蒲焼を食べ比べ、どちらが美味しいかを回答(モニター数:57名)

さらに、項目別に評価をしていくと、「脂ののり」「身の柔らかさ」「身のふっくら感」などで大型メスウナギは特に高得点となりました。

図4 7項目(脂ののり、身の柔らかさ、皮の柔らかさ、小骨の気にならなさ、身のふっくら感、におい(泥臭さ、生臭さ)の少なさ、全体的な好ましさ)について-3から+3の点数で評価しました。

食感

大型メスウナギは、身が厚いだけでなくふっくらとして柔らかい
大型メスウナギは従来のオスウナギより大きい分、身に厚みがあります。図5の断面を見ると、厚みの違いがよくわかります。

図5 大型メスウナギと通常サイズのオスウナギの断面

厚みがあると、その硬さが気になるところですが、大型メスウナギの特徴は身の柔らかさ。測定機器で調べた結果、身が柔らかいことが数値にも現れました。

図6 食感測定器を用いて白焼き状態での「身の硬さ」と「身の厚み」を測定しました。

成分

大型メスウナギはうま味の元となるアミノ酸量が多い
食感だけでなく、成分にも着目して美味しさの秘密を調べてみました。アミノ酸量を分析したところ、メスウナギにはうま味成分として知られる「グルタミン酸」や「グルタミン」が多く含まれていることがわかりました。

図7 生の状態での遊離アミノ酸量を分析しました。

味わい

メスウナギは雑味が少なくうま味が強い
味覚要素には主にうま味、苦味、甘味、塩味、酸味があります。味覚センサーで各項目を調べた結果、メスウナギは①苦味雑味が少ない、②うま味が強く 濃い味わいがある、③うま味の余韻が強い(=コクのある後味がある)という特徴があることがわかりました。

図8 人間の味覚の仕組みを模倣した味覚センサーを用いて、各味覚要素を測定しました。 図では特徴が見られた苦味、うま味とその持続性(余韻)を示しています。

まとめ

今回ご紹介した大型メスウナギの味の検討結果は以下のとおりです。

つまり、

大きく育ったメスウナギは「ふっくら肉厚で柔らかく、うま味が強い美味しいウナギ」

であることが科学的分析で示されました。
大豆イソフラボンで育てた高品質のメスウナギを、ぜひ召し上がってみてください。