抗菌薬とは
抗菌薬(抗菌性物質、抗菌剤ともいう)とは、細菌を壊したり、増殖するのを抑えたりする作用を持つ薬です。成り立ちによって、抗菌薬は抗生物質と合成抗菌薬に分けられ、カビから発見されたペニシリンのような天然の物質を抗生物質、化学的に合成された物質を合成抗菌剤と呼びます。ただし、現在市販されている抗生物質のほとんどは化学合成によって製造されています。
表1
抗菌薬は細菌の代謝機能や増殖機能に選択的に作用し、細菌の発育や増殖を阻止するか、殺滅することで効果を発揮します。
抗菌薬の作用機序
抗菌薬の作用機序は主に次の5つに分けられます。いずれも動物の細胞とは異なる部分に作用しますので、基本的に細菌のみに作用します。
1)細胞壁の合成阻害作用
細菌の細胞壁の合成を阻害します。
細菌は細胞壁があることでその形を保つことができますが、細胞壁が合成できなくなると細胞内に外から水が入ってくるようになります。その結果、細菌の細胞は膨張、破裂して死滅します。
β-ラクタム系(ペニシリン系、セフェム系)などはこの作用によってはたらきます。
2)タンパク合成阻害作用
タンパク合成の場であるリボソームの機能に作用し、タンパク合成を阻害します。
細胞分裂のためには酵素としてタンパクが必要です。古くなったタンパクを作り変える時にもリボソームが活躍します。そのため、タンパク合成を阻害すると細菌の活動(代謝)を阻害することになり、増殖を抑えることができます。
アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、マクロライド系、リンコマイシン系、チアンフェニコール系などはこの作用によって効果を発揮します。
3)核酸合成阻害作用
細菌のDNA合成に関わる酵素に結合し、核酸合成を阻害します。
ひとつ前の項目でタンパクの合成にはリボソームが必要だと説明しましたが、その前に核酸(DNA)からタンパクを合成するための設計図を読み取る必要があります。この設計図にあたる核酸の読み取りを阻害すると、タンパク合成ができなくなるため、細菌の増殖も抑えることができます。
キノロン系はこの作用によってはたらきます。
4)細胞膜の障害作用
細菌の細胞膜に直接作用して障害を起こします。
細胞壁の内側には細胞膜があり、この細胞膜によって細胞の内と外が分けられています。細胞内には細菌が生きるのに必要な物質も存在しているため、細胞膜に穴が開くなどして、細胞内の物質が外に漏れ出てしまうと細菌は死滅してしまいます。
ペプチド系はこの作用によってはたらきます。
5)葉酸合成阻害作用
細菌のDNAを作る材料のひとつに葉酸があります。人は食事などで葉酸を外から取り込めますが、細菌の場合は外から取り込むことができないので自ら合成してDNAの合成に使います。この葉酸を合成する過程を阻害することによって、細菌のDNA合成を阻害します。
サルファ剤やトリメトプリムはこの作用によってはたらきます。
作用の仕方は抗菌薬の効果に関係しています。そのことがわかる例をご紹介します。動物とは異なり細菌には細胞壁がありますが、なかにはマイコプラズマのように細胞壁をもたない細菌もあります。細胞壁をもたないということは、マイコプラズマに細胞壁合成阻害作用を有する抗菌薬は効かないということです。
細菌の細胞壁の合成を阻害します。
細菌は細胞壁があることでその形を保つことができますが、細胞壁が合成できなくなると細胞内に外から水が入ってくるようになります。その結果、細菌の細胞は膨張、破裂して死滅します。
β-ラクタム系(ペニシリン系、セフェム系)などはこの作用によってはたらきます。
2)タンパク合成阻害作用
タンパク合成の場であるリボソームの機能に作用し、タンパク合成を阻害します。
細胞分裂のためには酵素としてタンパクが必要です。古くなったタンパクを作り変える時にもリボソームが活躍します。そのため、タンパク合成を阻害すると細菌の活動(代謝)を阻害することになり、増殖を抑えることができます。
アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、マクロライド系、リンコマイシン系、チアンフェニコール系などはこの作用によって効果を発揮します。
3)核酸合成阻害作用
細菌のDNA合成に関わる酵素に結合し、核酸合成を阻害します。
ひとつ前の項目でタンパクの合成にはリボソームが必要だと説明しましたが、その前に核酸(DNA)からタンパクを合成するための設計図を読み取る必要があります。この設計図にあたる核酸の読み取りを阻害すると、タンパク合成ができなくなるため、細菌の増殖も抑えることができます。
キノロン系はこの作用によってはたらきます。
4)細胞膜の障害作用
細菌の細胞膜に直接作用して障害を起こします。
細胞壁の内側には細胞膜があり、この細胞膜によって細胞の内と外が分けられています。細胞内には細菌が生きるのに必要な物質も存在しているため、細胞膜に穴が開くなどして、細胞内の物質が外に漏れ出てしまうと細菌は死滅してしまいます。
ペプチド系はこの作用によってはたらきます。
5)葉酸合成阻害作用
細菌のDNAを作る材料のひとつに葉酸があります。人は食事などで葉酸を外から取り込めますが、細菌の場合は外から取り込むことができないので自ら合成してDNAの合成に使います。この葉酸を合成する過程を阻害することによって、細菌のDNA合成を阻害します。
サルファ剤やトリメトプリムはこの作用によってはたらきます。
作用の仕方は抗菌薬の効果に関係しています。そのことがわかる例をご紹介します。動物とは異なり細菌には細胞壁がありますが、なかにはマイコプラズマのように細胞壁をもたない細菌もあります。細胞壁をもたないということは、マイコプラズマに細胞壁合成阻害作用を有する抗菌薬は効かないということです。
図1:抗菌薬の作用機序
殺菌作用と静菌作用
抗菌薬はさらに、殺菌作用と静菌作用の2つに大きく分けることができます。殺菌作用は細菌を殺滅する作用で、活発に増殖している細菌に対して作用を発揮します。静菌作用は、細菌の発育や増殖を阻止する作用です。先ほどの図で、殺菌作用を示す抗菌薬を赤字、静菌作用を示す抗菌薬を緑字に色分けしています。
どうしてこの分類が大切かと言いますと、抗菌薬を組み合わせて使うときに考慮する必要があるからです。一般的には殺菌性の抗菌薬どうしは相乗作用、静菌性の抗菌薬どうしは相加作用、殺菌性と静菌性の抗菌薬の組み合わせは拮抗作用を示すといわれています(Jawetzの理論)。
どうしてこの分類が大切かと言いますと、抗菌薬を組み合わせて使うときに考慮する必要があるからです。一般的には殺菌性の抗菌薬どうしは相乗作用、静菌性の抗菌薬どうしは相加作用、殺菌性と静菌性の抗菌薬の組み合わせは拮抗作用を示すといわれています(Jawetzの理論)。
スペクトルとMIC
抗菌薬を選択するときに大切になるのが、治療したい細菌に対して効く(スペクトルがある)かどうかということです。抗菌薬の効果は血中濃度が高くなるとその作用も強くなります。
それを利用した、抗菌薬の作用を測る指標が最小発育阻止濃度(MIC)です。
MICは、細菌の増殖を抑制するために必要な最小の薬物濃度を指します。MICの値よりも抗菌薬の濃度が低いと細菌は増殖してしまい、反対にMICの値よりも抗菌薬の濃度が高いと発育がみられなくなります。
それを利用した、抗菌薬の作用を測る指標が最小発育阻止濃度(MIC)です。
MICは、細菌の増殖を抑制するために必要な最小の薬物濃度を指します。MICの値よりも抗菌薬の濃度が低いと細菌は増殖してしまい、反対にMICの値よりも抗菌薬の濃度が高いと発育がみられなくなります。
薬の作用を考えるうえで登場するのが薬物動態※です。薬物動態のパラメーターのうち、最高血中濃度(Cmax)に対するMICの割合と、MICより高い血中濃度で推移した時間のどちらが、投与量や期間を決める際に重要となるかは、抗菌薬の種類によって異なります。それは、時間依存性と濃度依存性の2種類があるためです。
※補足:薬物動態とは、薬を投与した後にその薬が体の中でどのような動きをするのかということを指します。薬を投与すると血液中に存在する薬の濃度は上がり、ある時を境に下がっていきます。この境となる時の血中における薬の最大濃度のことを、最高血中濃度(Cmax)といいます。
図2:薬物動態とMIC
時間依存性と濃度依存性
時間依存性にはたらく抗菌薬は、血中濃度がある程度以上を超えると作用が頭打ちになるため、それ以上濃度を上げても効果は変わりません。そのためMICの値よりも高い濃度推移を維持した時間(Time above MIC)が重要になります。つまり、投与間隔を短縮することで作用が強まります。
それに対し、濃度依存性にはたらく抗菌薬では、薬の一時的な血中濃度が高ければ高いほど作用が強く、その後血中濃度がMICを下回っても細菌の発育を阻害します。そのため副作用が出ないよう調節しつつ、1回の投与量を最大にして投与します。
キノロン系やアミノグリコシド系は濃度依存、ペニシリン系やセフェム系は時間依存にはたらきます。
今回は抗菌薬の基本についてお話ししました。使用する薬剤を選ぶ前に、病気の原因を調べて、細菌であれば種類を同定し薬剤感受性試験に実施したうえで薬剤を選ぶことが大切です。次回は、系統ごとの特徴についてご紹介します。
※動物用医薬品をご使用される際には、各製品添付文書をよく読んでご使用ください。また、抗菌薬は獣医師の指示に従ってご使用ください。
それに対し、濃度依存性にはたらく抗菌薬では、薬の一時的な血中濃度が高ければ高いほど作用が強く、その後血中濃度がMICを下回っても細菌の発育を阻害します。そのため副作用が出ないよう調節しつつ、1回の投与量を最大にして投与します。
キノロン系やアミノグリコシド系は濃度依存、ペニシリン系やセフェム系は時間依存にはたらきます。
今回は抗菌薬の基本についてお話ししました。使用する薬剤を選ぶ前に、病気の原因を調べて、細菌であれば種類を同定し薬剤感受性試験に実施したうえで薬剤を選ぶことが大切です。次回は、系統ごとの特徴についてご紹介します。
※動物用医薬品をご使用される際には、各製品添付文書をよく読んでご使用ください。また、抗菌薬は獣医師の指示に従ってご使用ください。