📖 前回までのおさらい【続・抗菌薬ってどんな薬?シリーズ】
📖 おさらい【抗菌薬ってどんな薬?シリーズ】
薬剤耐性の問題とその対策
薬剤耐性の問題とは
このような背景から、薬剤耐性対策については動物と人で別々に考えるよりも、同じ目的をもって一緒に取り組むことが効果的であると考えられます。そこで人と動物、さらにそれらを取り巻く環境も加え対策を考えるワンヘルス・アプローチという考え方が生まれています(図1)。
図1 ワンヘルス・アプローチ:ヒトと動物と環境の関わり
(出典:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172990.html))
国内の薬剤耐性に対する取り組み:第1期 薬剤耐性アクションプラン2016-2020
① 普及啓発・教育
② 動向調査・監視
③ 感染予防・管理
④ 抗微生物剤の適正使用
⑤ 研究開発・創薬
⑥ 国際協力
加えて、畜産分野の具体的な数値目標として、大腸菌におけるテトラサイクリンおよび第3世代セファロスポリン、フルオロキノロンの耐性率が設定されました(表1)。
| 2020年の目標値 | |
|---|---|
| テトラサイクリン耐性率 | 33%以下 |
| 第3世代セファロスポリン耐性率 | G7各国の数値と同水準 |
| フルオロキノロン耐性率 | G7各国の数値と同水準 |
表1 第1期アクションプラン 2016-2020 の成果指標(大腸菌の耐性率の割合)
| 牛 | 豚 | 鶏 | |
|---|---|---|---|
| テトラサイクリン | 19.8% | 62.4% | 52.9% |
| 第3世代セファロスポリン | 0.0% | 0.0% | 4.1% |
| フルオロキノロン | 0.4% | 2.2% | 18.2% |
表2 2020年における健康な家畜由来の大腸菌に対する薬剤耐性率
(出典:福永.畜産技術.2023.9)
| 国名 | 削減量(t) | 削減率(%) |
|---|---|---|
| フランス | 367.1 | 48.2 |
| ドイツ | 621.1 | 47.6 |
| イタリア | 742.3 | 51.9 |
| 英国 | 215.2 | 50.1 |
| 米国 | 3477.2 | 36.7 |
| カナダ | 69.2 | 6.2 |
| 日本 | 10.2 | 1.6 |
表3 欧米諸国と日本における動物用抗菌剤の削減状況(2016-2020年)
(出典:福永.畜産技術.2023.9)
国内の薬剤耐性に対する取り組み:第2期 薬剤耐性(AMR)アクションプラン2023-2027
| 牛 | 豚 | 鶏 | |
|---|---|---|---|
| テトラサイクリン | 20%以下 | 50%以下 | 45%以下 |
| 第3世代セファロスポリン | 1%以下 | 1%以下 | 5%以下 |
| フルオロキノロン | 1%以下 | 2%以下 | 15%以下 |
表4 健康な家畜由来の大腸菌に対する耐性率の目標値(2027年)
(出典:福永.畜産技術.2023.9)
| 2027年の目標値 | |
|---|---|
| 畜産分野の動物用抗菌薬の全使用量 | 15%減(2020年比) |
| 畜産分野の第2次選択薬*の全使用量 | 27t以下に抑える |
* 第3世代セファロスポリン、15員環マクロライド、フルオロキノロン、コリスチン
表5 第2期アクションプラン 2023-2027 の成果指標(抗菌薬の使用量)
(出典:福永.畜産技術.2023.9)
第1期アクションプラン終了の2020年から第2期開始年の2023年までの畜産分野における抗菌薬使用量が報告されており、毎年その量が減少していることが示されています(表6)。一方、畜種別大腸菌のテトラサイクリン耐性率は年によって増減しており、2020年と比べてさほど減少していないことが分かります(表7)。
| 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2027年目標 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 抗菌剤の使用量 | 626.8 | 598.1 | 568.0 | 559.4 | ||
| 減少率* | 4.6%減 | 9.4%減 | 10.8%減 | 15%減 |
表6 畜産分野の動物用抗菌薬の全使用量(t)(販売量)
* 2020年比
(出典:薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書 2025)
| 畜種 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2027年目標 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 牛 | 19.8 | 23.8 | 23.4 | 20.0 | 20.0 | |
| 豚 | 62.4 | 52.0 | 55.1 | 56.3 | 50.0 | |
| 鶏 | 52.9 | 46.2 | 43.0 | 53.5 | 45.0 |
表7 畜種別テトラサイクリン薬剤耐性率(%)の推移(大腸菌)
(出典:薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書 2025)
おわりに
薬剤耐性菌の発現頻度と抗菌薬の使用量は確かに相関しますが、行き過ぎた抗菌薬使用量の削減は、生産性の低下につながる恐れがあります。そこで次回(後編)では薬剤耐性菌の問題を考慮しつつ抗菌薬を使用するには、どのような点に注意したらよいか?について解説したいと思います。
