実践!養殖現場での水中ドローン活用

近年、養殖現場では水温上昇やそれに伴う赤潮の発生が大きな問題となっています。
また、その対策として、生簀網を深くし、表層の高水温や赤潮が濃くなる層を避ける方法も多く取られるようになってきました。
一方で、生簀が大きく深くなるほど、人が潜って内部を確認する作業には大きな負担と危険が伴います。
特に深い生簀網の観察が目的の場合は、水中ドローンの活用を強くおすすめします。


📖 連載 水中ドローンシリーズ

はじめに

前回は水中ドローンの活用についてご紹介しましたが、「準備に手間がかかるのでは?」「操作が難しいのでは?」と思われた方も多いかと思います。
確かに、水中ドローンには多機能な機種も増えており、覚えることや操作への慣れは必要です。とはいえ、高度なことを望まず基本的な操作に慣れれば、養殖現場で日常的に手軽に活用できます。今回は、現場でシンプルに使うためのポイントをご紹介します。

事前準備

1 構成と接続

水中ドローンは一般的に、ドローン本体、テザーケーブル、コントローラー、スマートフォンで構成されます。

ドローン本体
テザーケーブル
コントローラー
スマートフォン

ドローン本体はテザーケーブルでコントローラーと有線接続し、コントローラーとスマートフォンはWi-Fiで接続します。映像はスマートフォンのアプリ上で確認します。

ドローン本体
― (有線)
テザーケーブル
―
コントローラー
〜 (Wi-Fi)
スマートフォン
水中ドローンの構成要素(本体・テザーケーブル・コントローラー・スマートフォン)
⏱ ケーブルの接続は2〜3分、Wi-Fiの接続も数分で完了します。
2 キャリブレーション

水中ドローンは、水中でホバリングや姿勢維持を行うために、加速度センサー、ジャイロセンサー、コンパスセンサーで機体の姿勢や方向を認識し、自動で安定させています。

加速度センサー ジャイロセンサー コンパスセンサー

水中でより安定させるため、使用前に陸上で各センサーのキャリブレーションを行うことがあります。毎回必要な作業ではありませんが、機体が安定しない場合は実施しましょう。

キャリブレーションは、使用前に陸上でアプリの指示に従い、数回機体の向きを変えるだけで完了します。所要時間は1〜2分程度です。

キャリブレーションの手順イメージ(図1)

図1.キャリブレーションイメージ

⏱ 接続とキャリブレーションは10分以内で完了します。
💡 用語解説
キャリブレーションとは、センサーなどの測定機器が正確な値を示すように調整・補正する作業のことです。

セッティング

1 制御モード選択

水中ドローンは、前進・後進、左右移動、上下移動、旋回、ピッチ、ロールなど、さまざまな動きが可能です。ただし、養殖生簀内外で使用する場合は、前後・左右・上下・旋回の動きができれば十分です。特に水中映像では水平の目標物が少ないため、一度機体を傾けると姿勢を把握しにくく、水平に戻す際にも手間がかかります。

また、水平にすることで潮流の影響を最小限に抑えることができるので、操作性も良くなります。

いくつかのモードを選択できますが、通常は傾きを自動で制御し、機体を水平に維持してくれる「姿勢維持モード」に設定することをおすすめします。

✔ おすすめ設定 「姿勢維持モード」に設定 傾きを自動で制御し、機体を水平に維持。潮流の影響も最小限に抑えられます。
2 操作モード選択

機体を動かすには、基本的に2本のジョイスティックコントローラー(※以降スティックと表記)を操作します。左右のスティックの割り当てには、UAV-USA、UAV-JPN、ROVの3通りがありますが、ここでは世界標準のUAV-USAをおすすめします。

UAV-USA(推奨) UAV-JPN ROV

UAV-USAは空中ドローンとほぼ同じ操作感で、右スティックで前後左右、左スティックで上昇下降・旋回を制御できるからです。

スティック 操作内容
右スティック 前後左右の移動
左スティック 上昇・下降、旋回
3 ホバリング

しっかり観たい時にはホバリング(深度維持)がとても有効です。

止まりたい水深でボタンを押すと、水深(上下の位置)と姿勢(傾き)を固定できます。

ただし、ホバリング機能だけでは潮流によって流される場合があります。機種によっては、アプリ上で対象物をタップすることで、被写体が画面中央からずれないように前後左右を自動制御でき、より安定した観察が可能です。

4 ライト

水深が深くなるにつれ暗くなるので、水中ドローンにはLEDライトが装備されています。機種によってはLEDライトのオンオフだけでなく強弱も調整できるので、水深が深くて暗い場合にはLEDライトを調整することで視界を確保できます。

ただし、水中の懸濁物やプランクトンなどが多く透明度が低い場合は、照明の光が浮遊物に反射し、かえって見えにくくなることがあります。そのような場合はライトを抑えた方が、被写体の輪郭を捉えやすくなります。

⚠ 注意
透明度が低い環境ではライトを強くすると逆効果になる場合があります。状況に応じて光量を調整しましょう。

基本操作

基本操作では、潜航、ホバリング、移動、浮上・回収の流れを押さえておくことが大切です。

潜航
― |
ホバリング
― |
移動
― |
浮上・回収

まず水面付近で機体の向きと映像の見え方を確認し、急な操作を避けながらゆっくり潜航させます。観察したい水深に到達したら、ホバリングで深度を維持します。UAV-USAの場合は、右スティックで前後左右に移動し、左スティックで上昇・下降や旋回を行います。回収時は完全に浮上させすぎず、スラスターが水中に入った状態を保ちながら操縦者の近くまで移動させると、安定して回収できます。(図2)

水中ドローンのコントローラー操作図(図2)

図2. コントローラー操作

生簀内の観察手順

ここでは、最もシンプルな使い方として、生簀の網底付近を観察する手順を紹介します。「網底に斃死魚がいるのでは?」と気になった際の活用例です。

1 モードの設定

制御モードは「姿勢維持モード」、操作モードはUAV-USAに設定します。これで機体は常に水平に維持されます。

2 潜航

生簀の任意の場所(操縦者のいる場所)から潜航させます。

左スティックを下に下げると潜航を開始します。このとき左スティックを左右に動かすことで、機体の向きを見たい方向(生簀網側や生簀の中央側)に向けることもできます。

3 ホバリング

網底近くまで潜航したら、網底から少し上の水深でホバリングのスイッチを押して深度を維持します。目安は網底から50cm程度です。

4 移動

網底近くを水平に移動しながら観察を行います。右スティックを上下左右に動かして前後左右に移動、左スティックを左右に動かして向きを変えることもできます。

斃死魚の確認が目的で、斃死魚が生簀の網底のどのあたりにたまりやすいかを把握している場合は、そこを目指して移動すると効率的です。

多くの場合、斃死魚は網底が深くなっている部分に集まります。そのため、網底の形状に応じて、中央部または縁部を目指すと確認しやすくなります。また、潮流によって潮下に集まっていることもあります。

しっかりと網底全体を見る場合には、潜航した位置から時計回りか反時計回りに回って網底を一周するなどのルールを決めておくと良いでしょう。

5 位置と向きの把握

潜航の際に最も難しいのは、機体が生簀のどの位置でどの向きなのかを把握することです。

水中ドローンでは正確な位置を把握しにくいため、側網に沿って移動すると位置の見当を付けやすくなります。

位置は分かりませんが、コンパスセンサーが搭載されている機種の場合は画面に表示される機体の向きが参考になります。

6 浮上・回収

観察が終わったら、機体をゆっくり浮上させ、操縦者の位置まで戻します。

このとき、完全に浮上させてしまうとスラスター(水中で回転するプロペラ)が水面上に出て空回りし、機体を動かしにくくなります。少し沈めた位置でホバリングさせたまま操縦者の近くまで移動させると、回収がスムーズです。

生簀内での水中ドローン観察イメージ

使用後のメンテナンス

使用後は、機体を長く安全に使うためのメンテナンスが必須です。基本的には、塩分や汚れを落とし、しっかり乾燥させるだけで十分です。

塩抜き 機体を水道水に30分から1時間程度漬け込みます。機種によっては、アプリの自動洗浄モードを使って、モーター内部の塩分を洗い流せるものもあります。
乾燥 塩抜きが完了したら、直射日光を避け、風通しの良い日陰で本体を完全に自然乾燥させます。
充電・保管 乾燥後は、本体とコントローラーを充電し、次の出番に備えましょう。
⚠ 注意
長期保管する場合は、満充電のままにしないよう注意します。
使用後の洗浄

まずは現場で試してみる(使って慣れる)

今回は、水中ドローンを養殖現場でできるだけ簡単に活用する方法をご紹介しました。取り扱いや操作については、「とりあえず使って慣れる」のが最も近道です。また、多くの水中ドローンには操作のチュートリアル動画が用意されていたりユーザーによる実際の活用動画も多数あります。観て、使って、また観る。この繰り返しで、自然と扱いに慣れていくはずです。

生簀の中で使用する場合には機体をロストすることもほとんどありません。まずは一度、現場で試してみることから始めてみてください。

※実際にご使用の際は、お手持ちの機器の取扱説明書をご確認ください。

📖 連載 水中ドローンシリーズ



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