サシバエ対策vol.3 ~サシバエの対策~

Vol.1,Vol.2に続き、今回は現在の状況を把握し、農場で出来る作戦を練って、サシバエの対策に取り組むためのポイントについてご紹介いたします。

IPM(総合的有害生物管理)について

環境整備

最も重要な事ですが、発生源である畜糞をなくす、除糞を行うことで畜舎内からサシバエの被害を完全になくす事は可能でしょうか。日常作業、設備上非常に難しいですが、できる限りの対応はしたいものです。牛舎内では特に畜糞が移動するルート上、バーンクリーナー(写真-①)などに注意は必要です。結構畜糞が残っているものです。

物理的、機械的防除

粘着シートも有効ですが、サシバエの特性を活かしたひも状の粘着テープも有効です。またサシバエネットも効果的です。子牛のいる場所や、畜舎と外を行き来していると思われる箇所に設置します。サシバエは主に膝くらいの高さ(30cm)から、2mぐらいの高さを飛翔しますので、その高さへ絞ってサシバエネットを設置し活用していきます。
送風についてもサシバエは非常に嫌がります。風が流れている場所には近づかないのでこの点を活用することも重要です。サシバエだけではなく、飛翔性昆虫は全て風の乱れは嫌がります。
イエバエと異なり、二酸化炭素、温度、振動などに誘引されることもあり、吸血捕獲器材も存在しますが、実際、農場での使用は難しいかもしれません。

生物学的防除

オフィラなどを活用したハエの天敵を利用する方法もありますが、実際に農場で使用し、求められる結果をだすのは少し難しいかもしれません。

化学的防除

一般的に行われている方法で、殺虫剤を使用する方法です。殺虫剤には、成虫に対して使用する成虫駆除剤と、幼虫のいる発生源に対して使用する幼虫駆除剤があります。

※殺虫剤を使用する場合には、飼養状況、近隣の状況などを考慮し実行してください。

サシバエ成虫対策

サシバエは吸血昆虫であるのでPOB(PaintOnBait)法などハエが舐めて効果がでる製剤は、適しません。一般的には金鳥ETB乳剤など空間噴霧剤を使用します。その際、空間噴霧作業時に失敗しがちな点があります。この点は作業時の確認事項となりますが、畜舎内で噴霧する場合、適切な時間に噴霧しているのかが重要です。先ほどお話ししましたがサシバエは畜舎内と外を行ったり来たりします。噴霧する時間、「そこにサシバエ成虫はいますか」や、「時間によっては外ではないですか」など意識をもってください。
また噴霧時には下記も確認してください。

時間を要して殺虫作業をするのですから出来るだけ、効率的に作業したいですよね。
しかし、ハエ成虫は飛翔することもあり、成虫対策だけでは農場内のハエのコントロールは非常に難しくなります。 イエバエ対策 入門編にも記載ありますが、ハエ全体の成虫の割合は僅か20%です。残りは幼虫など、今後成虫になる予備群ですので、幼虫対策が非常に重要になってきます。

サシバエ幼虫対策(シロマジンの散布)

サシバエの幼虫対策としてシロマジン(IGR製剤:insectgrowthregulator)などを発生源へ散布します。牛舎内では、牛周辺(子牛周辺、マット下、敷料下、柱周辺)、飼槽周辺の飼料周辺、ウォーターカップ下、堆肥場所、畜舎外側などが散布対象場所となります。飼料こぼれ、畜糞、水など農場内の疑わしい場所を探す必要があります。
牛糞は表面的には乾燥していても、表面をめくってみると中には水分がありハエ幼虫が確認できる事も多々あります。(写真-②) このような場所を見かけた場合は、除去することが最優先となります。作業場上難しい場合、シロマジン液を流し込むことが有効となります。

このようにハエの発生場所として疑わしい場所へ定期的にシロマジン製剤(IGR製剤)を使用することは、次世代のハエの発生を抑えるには有効ですので、是非、農場にて作業のプログラム化をしていただきたく思います。
ではいつから実施するのかということですが、畜産ナビではイエバエの発生予測を地域毎に情報提供させていただいております。畜産現場ではイエバエとサシバエの発生場所は同じと考えられています。この点からもイエバエの発生源対策を、発生予測時により早く開始することは、サシバエ対策としても有効です。
(参考:イエバエ対策 実践編のイエバエ発生時期予測資料)
2024年11月に日本国内にて確認されました養牛へのランピースキン病につきましても、ベクターとして吸血昆虫が機械的伝播として考えられております。また、農場現場関わる関係者皆様にも刺されるなどの不快感、搾乳作業などへの影響もありますので、農場内にてサシバエ対策を再度意識してみてはいかがでしょうか。
今回の記事が少しでも皆様のお役に立てればと思っております。




【参考文献】
和田義人.ハエ・蚊とその駆除.財団法人日本環境衛生センター.㈲独立印刷社,1990,174P