はじめに
畜産現場では牛や豚、鶏などを吸血する様々な吸血昆虫の被害が発生しています。畜種、地域、季節などにより異なりますが、サシバエ、ノサシバエ、アブ、ブユ、カ、ヌカカなど様々な吸血昆虫がいます。今回お話しするのはサシバエとなります。
昔は、サシバエは夏から秋にかけて被害が多くなることもあり秋バエと言われていましたが、ここ数年、春頃から秋まで農場でサシバエが多く見られる事例が増えています。
昔は、サシバエは夏から秋にかけて被害が多くなることもあり秋バエと言われていましたが、ここ数年、春頃から秋まで農場でサシバエが多く見られる事例が増えています。
サシバエの形態
サシバエの形態はイエバエと似ていますが、イエバエ成虫と違ってサシバエ成虫は吸血するのに適した細長い針状の口吻をもっているので、目視でも見分けることができます。成虫腹部は非常に丸っこく、吸血時には更に丸くなります。(写真ー①、写真-②参照)
一方でサシバエ幼虫、サシバエ蛹(さなぎ)については、イエバエ幼虫、イエバエ蛹に非常に似ている事もあり見分けがつきにくいです。サシバエ幼虫のいる場所(発生源)については、動物の糞が最も多く、特に繊維質(敷き藁など)が入った糞、牛馬の糞、豚糞などを好み、生息しています。
サシバエの生態
サシバエは特に牛での被害が大きく、様々な病気を伝播すると言われています。衛生的な問題、飼料摂取量の問題、吸血による痛みにより横になれず休息ができないストレスなど、牛へ深刻なダメージを与えます。また農場の従業員、獣医師など多くの人が刺され、作業効率の低下、不快感など影響を及ぼします。豚でも被害がみられますので注意が必要です。(写真-③)
サシバエ成虫雌雄ともに吸血をします。血液は、サシバエ成虫にとって生きていくために必要な栄養となります。成虫の1回の吸血量は、雄で約5mg、雌では約6mgなります。成虫吸血源を求めて3~4㎞は飛翔すると言われています。
サシバエ成虫は朝夕の吸血を行いそれ以外の日中では、畜舎周りの草むらや樹木など風通しのいい場所に潜んでいます。サシバエの被害が大きい農場ほど、サシバエ成虫を日中に見かけることが多くなります。
この点は非常に重要で、朝と夕方にサシバエは吸血するために畜舎内に移動し、吸血した血液の影響により、日中は主に畜舎周辺の涼しい場所にいる事となります。
つまりサシバエ成虫は、畜舎の内と外を行ったり来たりしているわけです。
この行動はサシバエ防除に非常に重要となり、「今、そこにサシバエ成虫はいますか」また「畜舎内と外、どの場所を行ったり来たりしていますか」などの確認が必要となります。(牛放牧時に問題となるノサシバエはこれとは異なりますので注意です。サシバエとノサシバエは違う事を意識してください。)
サシバエは、イエバエ同様に完全変態であり、卵、幼虫、蛹、成虫の発育期から成り立ちます。成虫は飛翔する為、行動範囲が広がりますが、卵、幼虫、蛹については発生源の場所(畜糞などの有機物+水)にて成長する事となります。
この点は非常に重要で、朝と夕方にサシバエは吸血するために畜舎内に移動し、吸血した血液の影響により、日中は主に畜舎周辺の涼しい場所にいる事となります。
つまりサシバエ成虫は、畜舎の内と外を行ったり来たりしているわけです。
この行動はサシバエ防除に非常に重要となり、「今、そこにサシバエ成虫はいますか」また「畜舎内と外、どの場所を行ったり来たりしていますか」などの確認が必要となります。(牛放牧時に問題となるノサシバエはこれとは異なりますので注意です。サシバエとノサシバエは違う事を意識してください。)
サシバエは、イエバエ同様に完全変態であり、卵、幼虫、蛹、成虫の発育期から成り立ちます。成虫は飛翔する為、行動範囲が広がりますが、卵、幼虫、蛹については発生源の場所(畜糞などの有機物+水)にて成長する事となります。
サシバエのライフサイクル
下記資料は以前ご紹介したイエバエに関する生活環(ライフサイクル)です。サシバエはイエバエよりも若干成長に時間を要します。気温の影響を大きく受けますが、サシバエの卵期間は1~2日、1齢幼虫期間1~2日、2齢幼虫期間2~4日、3齢幼虫期間2~8日、蛹期間は4~10日で、平均的な日数は卵期間2日、幼虫期間10日、蛹期間8日です。イエバエの場合、適温条件下であれば最速10日ほどで卵から成虫になりますが、サシバエでは20日ほどで卵から成虫になります。1回の産卵数の多いイエバエは、急に大発生しているという印象が強く持たれていますが、イエバエに比べサシバエはゆっくりとした増え方をする為、気づかぬうちに多数発生していたという場面も多いかと思います。羽化したサシバエ成虫は翌日から吸血を始めます。血液は食物としてとるほか、雌は卵巣の発育のための栄養としてとります。サシバエ成虫の生存期間は約15日です。
出典: 害虫駆除シリーズ5 ハエ・蚊とその駆除(財団法人日本環境衛生センター)
vol.1ではサシバエの生態やライフサイクルについてご紹介しました。次回vol.2ではサシバエが生息する場所や、どんな行動特性があるのか、また実際に起こる被害について詳しくご紹介いたします、お楽しみに。
【参考文献】
和田義人.ハエ・蚊とその駆除.財団法人日本環境衛生センター.㈲独立印刷社,1990,174P