イエバエ対策 入門編

畜舎の中を飛び回るハエは、家畜や人にストレスを与え、時には病原体を伝播します。農場の皆様は日頃から様々な対策をされていると思いますが、ここでは改めてイエバエ対策を入門編と実践編の2回に分けてご紹介します。

はじめに

畜舎の中を飛び回るハエは、家畜や人にストレスを与え、時には病原体を伝播します。農場の皆様は日頃から様々な対策をされていると思いますが、ここでは改めてイエバエ対策を入門編と実践編の2回に分けてご紹介します。

イエバエのライフサイクル

図1

図1

イエバエは図1のようなライフサイクルで発生を繰り返しています。成虫が交尾をすると約1㎜の大きさの卵を約100~150個産みます。卵が孵化したのち幼虫は、1齢幼虫、2齢幼虫、3齢幼虫と脱皮を繰り返し、3齢幼虫では肉眼でも容易に見つけられる大きさ(約10㎜)に成長します。これがよく私たちが「ウジがいる!」と認識する段階です。
3齢幼虫までは栄養を蓄えるために湿っていて栄養分の多い場所を好むので、堆肥などにいることが多いのですが、蛹(サナギ)は羽化するのに適した乾燥した場所を好みます。そのため3齢幼虫は自ら乾燥した場所へ移動し蛹となり、羽化(ウカ)します。
イエバエの発生サイクルは気温によって変わりますが、イエバエにとって最適な温度(25~27℃)では10日間ほどで卵から成虫になる発生サイクルが繰り返されます。

なぜハエ対策は難しいのか

図2

図2

昆虫発育阻害剤や成虫殺虫剤で対策していても、イエバエの発生に困っている…という方もいらっしゃると思います。そこに深く関わっているのは、「成虫、蛹、幼虫、卵」の生息割合です。図2の通り、成虫・蛹・幼虫・卵を合わせて100%とした場合、成虫の割合はたった20%でその他は予備軍である蛹と幼虫と卵なのです。成虫対策だけでは幼虫を含む残り80%は生き残ってしまうため、成虫対策と幼虫対策を適切な時期に適切な方法で行うことでより効果が出やすくなります。幼虫対策にはIGR剤が有効ですが、その具体的な使用方法については実践編でご紹介します。

イエバエ対策は総合的に行う

イエバエの防除には①環境整備 ②物理的・機械的防除 ③生物学的防除 ④化学的防除があります。それぞれの詳細は下記の通りです。

①環境整備 
 整理整頓、排水、除糞、換気、発生源の管理など
②物理的・機械的防除
 電撃殺虫機、防虫ネット、ハエ取りシートなど
③生物学的防除
 天敵の生物の利用など
④化学的防除
 殺虫剤、IGR製剤、忌避剤など
 
殺虫剤やIGR剤による対策は有効ですが、①環境整備も非常に重要です。除糞や不要なものを整理整頓することで、成虫が卵を産み、幼虫が成長しにくい環境を作ることができます。

幼虫対策に用いる薬剤

表1

表1

幼虫対策には主にIGR製剤が用いられます。IGRとは、insect growth regulator  の略で、insect=昆虫、growth=成長、regulator=制御、つまり日本語だと昆虫成長抑制剤ということになります。IGR製剤には代表的な成分が3つありますが、いずれも昆虫特有の脱皮、蛹化や羽化を阻害して死亡させます。(表1)
IGR製剤の中でも一番使用されているシロマジンは脱皮阻害作用があります。シロマジンを摂取した幼虫は表皮が硬化・厚化するので、脱皮したあとに幼虫が動くことにより、表皮が裂けて死に至ります。したがって、幼虫がシロマジンを摂取したらすぐに死ぬというわけではなく、次の脱皮の時までは生きています。効果が出るまでには少し時間がかかるということですね。
入門編ではハエのライフサイクルや大まかな対策方法についてご紹介しました。第2回の実践編はシロマジン製剤の効果的な使い方を中心にご紹介しますので、お楽しみに。