臭気クレームの現状~農場から発生する臭気の拡散について解説~

臭気クレームの現状~農場から発生する臭気の拡散について解説~

近年、国内における悪臭に関する苦情件数は減少しつつありますが、依然として臭気苦情は年間1万件を超えています。畜産農場の悪臭に関する苦情も多く寄せられ、毎年1千件を超えており臭気問題は長期化しやすい傾向にあります。この記事では、季節・地形・時間帯などの違いにより、臭気が拡散しやすい条件についてご紹介します。

季節風

季節風とは、季節によって地上付近で同じ方向から継続的に吹く風のことです。夏は太平洋側からの南東の風、冬は大陸側からの北西の風が日本の代表的な季節風です。また、偏西風とは、季節に関係なく常に上空で西から吹いている風のことです。
出典:国土地理院ウェブサイト

出典:国土地理院ウェブサイト

地形(海風・陸風)

夏など晴れて気温が高い日の日中は、陸地が暖まって上昇気流が起きやすく気圧が低くなります。そのため海から陸に向かう海風が吹きます。反対に夜間は陸地が冷えるため陸から海に向かう陸風が吹きます。この海風と陸風が交代する朝方・夕方には風が弱くなり、凪となります。
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山風・谷風

日中、太陽の光で地面が暖められると、軽くなった空気が斜面に沿って上へと移動します。これが「谷風」です。これとは逆に、夜になって冷えた空気は重くなり、斜面に沿って下ります。これが「山風」です。
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風の動き

風は空気の移動によって発生します。日中は太陽の日差しで空気が温められ、膨張し軽くなった空気が上昇し、上空で混ぜられて風速が強まります。夜間は空気が冷え収縮して空気が重くなり下降します。夜間の空気は地上付近で落ち着くため風が弱まります。
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臭気の到達距離

臭気の到達距離は、現場の臭気の強さ(臭気濃度)と風量が関係しています。
※臭気濃度とは、もとのにおいを人間の嗅覚で感じられなくなるまで無臭空気で薄めたときの希釈倍数をいいます。

例)臭気濃度1,000 とは、原臭を無臭の空気で1,000倍に希釈したとき無臭になること。
臭気の到達距離を理論上算出することもでき、臭気排出強度(OER:Odor Emission Rate)から求められます。

臭気排出強度(OER) = 臭気濃度 × 乾き排出ガス流量(m³/分)

OERは、悪臭防止法において規制基準となる測定値の指標とされており、排出口から排出される臭気の総量です。臭気排出強度は世界的指標にもなっています。
事業所において複数の発生源がある場合には、その総和を求め事業所全体の臭気排出強度を把握する値として、TOER(総臭気排出強度)を用います。
※TOER(総臭気排出強度) = 各排出口のOERの総和
TOER(総臭気排出強度)と臭気の影響範囲との関係

TOER(総臭気排出強度)と臭気の影響範囲との関係

※出典:岩崎好陽(2004)臭気の嗅覚測定法 公益社団法人におい・かおり環境協会 p34 のデータをもとに共立製薬にて作成

例)縦型コンポスト

臭気濃度2,000 × 風量30m³/分 × 縦型コンポスト4基 = 2.4×10⁵
→小規模の影響がありうる 臭気最大到達距離 1~2㎞ 苦情範囲500m以内

調査事例ご紹介

調査事例① A県 堆肥施設 ~調査日:7月下旬~

排気口での臭気測定値 臭気濃度:2,000~3,000
時間:13時 気温:32.7℃ 風向:西南西 3.3m/s 臭気の到達距離 50m
臭気到達距離
時間:22時 気温:26.2℃ 風向:東南東 1.7m/s 臭気の到達距離:1,000m
臭気到達距離
臭気発生源はレーン型1次発酵槽で、上部排気口から臭気が抜けて拡散していました。
この事業所は地形に特徴があり、天候の良い日は、日中は谷風、夜間は山風が吹きやすいエリアです。日中、気温が高い時は谷風および上昇気流により、臭気は上空で拡散します。
夜間は、山風および下降気流により臭気が地上に留まり、弱い風に流され住宅街まで臭気が到達します。
出典:国土地理院ウェブサイト

出典:国土地理院ウェブサイト

調査事例② B県 養豚業(開放豚舎)~調査日:10月下旬~

排気口での臭気測定値 アンモニア:1ppmアミン類:2ppm 硫化水素:0.1~0.2ppm 低級脂肪酸:0.5ppm
時間:13時 気温:18.1℃ 風向:北東 3.5m/s 臭気の到達距離:200m
臭気到達距離
時間:20時 気温:10.8℃ 風向:北北西 1.7m/s 臭気の到達距離:530m
臭気到達距離
臭気発生源は肥育舎で、開放豚舎の豚舎開放エリアから抜ける臭気が拡散原因です。
この事業所は、住宅街まで直線距離で300mほどあり、日中の臭気は到達しないため、苦情は朝方・夜間に集中しています。

調査事例③ C県 養鶏業(トンネル換気 縦型コンポスト)~調査日:4月中旬~

時間:14時 気温:18.6℃ 風向:北西 3m/s 臭気の到達距離:150m
臭気到達距離
時間:20時 気温:9.7℃ 風向:南南東 2.1m/s 臭気の到達距離:700m
臭気到達距離
臭気発生源は、鶏舎のトンネル換気と縦型コンポストでした。
この事業所は、住宅街まで直線距離で500mほどあり、日中は臭気が到達しないため苦情は朝方、夜間に集中しています。

臭気調査の条件

日々の臭気拡散エリアを把握することは困難です。季節により風向きが変わり、天候・気温によっても、風向きや風速が変わってくるからです。そこで、事業所(農場)から発生する臭気の最大到達距離を把握することが重要となります。臭気の発生源を特定したうえで、実際にどのくらいの距離まで届いているかを確認することが大切です。そこから、原臭をどの程度低減すれば影響範囲を抑えられるか、対策の目安が明確になります。
ただし、農場従事者はニオイに慣れているため、自分たちだけでは臭気の強さを正確に把握しにくい場合があります。どのように臭気を客観的に把握するかもポイントとなります

まとめ

ここまで見てきたように、臭気は天気が良く夜間〜朝方の風が弱い時に到達距離が伸びやすくなります。一方、気流が停滞している凪の状態だと、事業所付近にニオイが留まり強く感じますが、到達距離は伸びません。こうした気象条件と臭気の関係を理解しておくことが、周辺環境への影響を把握し、適切な対策を講じるための第一歩となるでしょう。

こちらの「臭気クレームの現状」シリーズでは、悪臭防止法や消臭対策事例などより深掘りしたテーマも連載予定です。ぜひ次回もお楽しみに!
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