効果的なカラス対策 Vol.3 ~餌場にさせないための実践対策~

効果的なカラス対策 Vol.3 ~餌場にさせないための実践対策~

畜産現場には多数のカラスが飛来し、様々な被害をもたらします。カラス対策を行う上では、畜産現場でのカラス被害がなぜ発生するかについて理解することが重要です。このシリーズではカラス被害が発生する原因やカラスの生態、既存対策の効果について整理してきました。最終回となる今回は、それらを踏まえ、どのような対策が効果的なのか、畜産現場で実践できる具体的なカラス対策について紹介します。

はじめに

第一回では、畜産現場でのカラス被害がなぜ発生するかについて、第二回ではカラスの生態と既存対策の効果について整理しました。最終回となる今回は、それらを踏まえ、どのような対策が効果的なのか、畜産現場で実践できる具体的なカラス対策について紹介します。
対策のポイントは、「カラスにとっての餌場としての魅力度を下げること」にあります。

物理的な侵入防止策

対策の基本となるのは、物理的な侵入防止策です。侵入されては困る畜舎などに対し、物理的に侵入を防ぐ対策は、効果の確実性が高く、長期的に見てもコストパフォーマンスに優れた方法です。侵入が困難であることがわかれば、カラスにとってその場所は魅力的な餌場ではなくなります。実際に、物理的対策によってカラスの飛来が減少した畜産施設もあります。

最も効果的な方法は、畜舎などにおいて、カラスが出入りできる開口部を防鳥ネットで覆う対策です。ヒトや重機の出入り口には、カーテン式に開閉できる防鳥ネット(図1)を設置すると便利ですが、現場では開閉の手間から常時開け放たれてしまうケースも少なくありません。

そのような場合には、プラスチックチェーンを暖簾状に垂らす方法(図2)が有効です。開閉の手間がなく、現場でも運用しやすい方法です。これにより完全な遮断は難しいものの、カラスの侵入頻度を大きく減らすことが期待できます。
図1. 出入り口に設置したカーテン式の防鳥ネット

図1. 出入り口に設置したカーテン式の防鳥ネット

図2. プラスチックチェーンの暖簾

図2. プラスチックチェーンの暖簾

また、温暖な地域では、風通しが悪くなることで畜舎内に熱がこもることを懸念し、防鳥ネットの設置が難しい場合もあります。そのような場合にはテグスの活用が有効です。カラスは畜舎に侵入する際、窓枠や梁などに一度止まり、内部の様子を確認する傾向があります。そこで、止まりやすい場所にテグスを張ることで、侵入行動を抑制する効果が期待できます。第二回でも述べたように、テグスは緩んでいると効果が大きく低下するため、十分なテンションを保つことが重要です。

さらに、物理的対策ではメンテナンスも欠かせません。防鳥ネットやテグスは経年劣化や野生動物等による破壊などによって、小さな隙間や緩みが生じることがあります。カラスはわずかな隙間からでも侵入するため、定期的な点検と補修が重要です。

農場での環境管理

カラスにとっての餌場としての魅力度を下げるためには、物理的対策に加え、農場全体の環境管理が重要です。カラスは魅力的な食べ物を求めて飛来するため、「食べ物にアクセスできる機会をいかに減らすか」が対策の鍵となります。

畜舎内では、飼料や糞の管理が基本です。餌槽からこぼれた飼料が放置されていると、「ここに来れば常に食べ物がある」とカラスに学習されてしまいます。また、糞には未消化の飼料が含まれるほか、昆虫も集まるため、これらもカラスにとって重要な食物資源となります。こまめな清掃を継続することが重要です。

さらに、見落とされがちなのが屋外の管理です。飼料や糞の運搬時にこぼれたものが放置されていると、少量であってもカラスを引き寄せる要因となります。屋外は畜舎内よりもカラスにとってアクセスしやすいため、特に注意が必要です。

加えて重要なのが堆肥施設です。畜舎では対策が徹底されていても、堆肥施設は対策が不十分なケースが多く見られます。堆肥施設には飼料残渣や昆虫、卵殻などが存在し、カラスにとって非常に魅力的な餌場となります。ここを起点としてカラスの侵入が農場全体に及ぶこともあります。また、病原体の伝播リスクの観点からも、カラスの飛来自体を減らすことが重要です。堆肥施設についても、畜舎と同様に、侵入させない対策を講じることが重要です。

地域で行う効果的な対策

鳥獣害対策では捕獲による個体数削減が行われることがあります。カラスにおいても、猟銃や捕獲檻(図3)による駆除が実施されています。しかし、カラスは繁殖力が高く、周辺地域からの流入もあるため、捕獲だけで個体数を大きく減らすことは難しいと考えられています。
図3. カラスの捕獲檻

図3. カラスの捕獲檻

特定地域で個体数を抑えるためには、その地域に存在する食物資源を減らすことが重要です。特に冬季は自然界の餌が減少するため、カラスは人間由来の食物に依存する割合が高くなると考えられます。この時期に食物資源の管理を徹底することで、結果として個体数の抑制につながる可能性があります。

畜産施設は冬季でも安定した食物資源が存在するため、カラスにとって重要な餌場となりやすい環境です。そのため、冬季における物理的対策と環境管理の徹底は、個体数削減に特に有効と考えられます。

また、これらの対策は単一の施設だけでなく、地域全体で取り組むことでより効果が高まります。地域の畜産施設との連携はもちろんですし、農地に残された作物残渣(図4)や耕作放棄地に生える植物も食物資源となるため、行政や周辺農家と連携した対策が重要です。
図4. 農作物の残渣

図4. 農作物の残渣

まとめ

物理的な侵入防止策と環境管理によって、カラスにとっての餌場としての魅力度を下げることが、飛来を減らすための基本となります。さらに、第二回で紹介した知見を踏まえた対策を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

一方で、費用や人手、施設の制約などから、すべての対策を一度に実施することが難しい場合もあるでしょう。しかし、対策を全く行わない場合、カラスにとって好条件の餌場となり、結果として個体数の増加や被害の拡大につながります。

日々の清掃を少し丁寧に行う、侵入しやすい場所に限定して物理的対策を施すなど、できる範囲から取り組むことが重要です。こうした積み重ねが、カラスによる被害を着実に減らしていく第一歩となります。
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