豚熱(CSF)
豚熱とは?
発症すると、発熱や食欲不振、元気がなくなる、うずくまる、便秘、下痢、呼吸障害といった症状が現れます。ただし、特徴的な症状がないため、気が付きにくく、病気の発見が遅れてしまいがちな疾病です。
これまで豚熱が発生した養豚場では、飼養しているすべての豚を殺処分することが義務付けられていましたが、2026年5月家畜伝染病予防法が改正され、北海道を除くエリアで豚熱が発生した場合、まん延防止のために必要な豚のみを殺処分する、選択的殺処分が導入されました。
豚熱の歴史
日本国内で初めて豚熱が発生したのは1888年(明治21年)のこと。アメリカから北海道に輸入された豚において確認されました。
20年後の1908年(明治41年)には、沖縄と関東で約20,000頭に感染が拡大しました。ワクチンも開発され、1928年(昭和3年)からは不活化ワクチン「豚コレラ予防液」の製造・配布も開始されたものの、1932年(昭和7年)には49,000頭、1939年(昭和14年)には36,000頭と、豚熱の猛威はとどまるところを知りませんでした。
こうした状況を受けて、生ワクチンの開発が進められ、1969年(昭和44年)に生ワクチンが実用化されてからは発生が激減しました。そして、日本で初めての発生から104年が経過した1992年(平成4年)、熊本県球磨郡での事例を最後に豚熱は20年以上確認されなくなり、2006年(平成18年)の3月にはワクチン接種は完全に中止されました。翌年2007年(平成19年)の4月1日には、WOAH(国際獣疫事務局、旧OIE)の規約に基づき、日本は「豚熱清浄国」となりました。
2018年(平成30年)9月に国内では26年ぶりに岐阜県岐阜市の養豚場で再び豚熱の発生が確認されました。
その後、2019年(令和元年)~2025年(令和7年)の間に計24都道府県の養豚場で発生範囲が拡大しました。さらに、直近では2026年(令和8年)に宮崎県にて発生が確認されました。
また、野生イノシシでの豚熱陽性事例は、北海道・千葉県・大分県および沖縄県を除く43都府県において確認されています。
農林水産省は、豚熱の感染地域拡大を受けて、2019年9月に豚熱ワクチンの接種を許可する地域を限定して指定しました。その後、野生イノシシおよび養豚場での豚熱事例の地域拡大に伴い、ワクチン接種地域も拡大し、現在は北海道を除く46都府県となっています(2026年4月現在)。
2020年9月3日には、日本は豚熱の「非清浄国」となり、感染が確認されていない国を指す「清浄国」の国際認定を13年ぶりに失いました。
各自治体は、発生予防およびまん延防止策を実施し、飼養衛生管理基準遵守の指導を進めるなど、「清浄国」への復帰を目標に、現在進行形で豚熱の撲滅に取り組んでいます。
アフリカ豚熱(ASF)
アフリカ豚熱とは?
前述した豚熱(CSF)と名称は似ていますが、アフリカ豚熱(ASF)は全く異なるウイルスが原因の別の病気です。感染経路としては、ウイルスに汚染された豚肉や豚肉加工品を豚に給餌すること、豚同士の直接的または間接的な接触によって感染が拡大します。また、野生イノシシの場合、水浴びや泥浴びをする水場が感染拡大の温床となることも確認されています。
アフリカ豚熱は豚やイノシシの病気であり、人に感染することはありません。しかし、有効なワクチンや治療法が存在しないため、一度発生すると甚大な被害をもたらします。我が国の家畜伝染病予防法においても「家畜伝染病」に指定されており、発生が確認された場合は殺処分が義務付けられています。
アフリカ豚熱の歴史
1950年代後半にはヨーロッパや中南米に飛び火し、養豚業に多大な被害をもたらしました。2007年には汚染された食物の残渣を介して黒海沿岸のジョージアで発生し、アゼルバイジャン、ロシア、ウクライナなどへと拡大。2020年末までにはベルギーやドイツといった西ヨーロッパの国々にまで波及しました。
アジアで初めて発生が確認されたのは2018年です。世界最大の養豚国である中国(遼寧省)で発生し、その後中国大陸の全省にまん延したほか、韓国、ベトナム、モンゴル、ラオス、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、インドネシア、東ティモールなど、アジア・太平洋地域の国々に甚大な被害を及ぼしています。
隣国の韓国では、2019年9月に飼養豚での最初の事例が確認されて以降、2025年11月までに55事例に増加しました。野生イノシシの事例では4,321件もの報告がなされています。また、2025年10月には台湾でもアフリカ豚熱の発生が確認されました。
さらに憂慮すべきことに、2026年1月から2月末までのわずか2か月間だけで、韓国の養豚場ではすでに20事例以上の発生が確認されています。
日本と地理的に極めて近い韓国や台湾でのアフリカ豚熱の継続的な発生は、日本への侵入リスクが日々高まっていることを意味しており、国境を越えた防疫体制の一層の強化が急務となっています。
東アジア地域において、日本は唯一のアフリカ豚熱未発生国となりました。我が国はこれまで本病の発生が確認されていない清浄国ですが、海外からの侵入リスクは極めて高い状況が続いています。農林水産省が発信する最新情報を収集しながら、水際対策と農場内の防疫対策を徹底し、侵入防止に努めることが重要です。
口蹄疫(FMD)
口蹄疫とは?
子牛や子豚が発症すると死亡することもありますが、致死率は低い病気です。一方、伝染性は非常に強く、加えて症状により餌をほとんど食べられなくなるため、生産性を著しく低下させ(乳量の減少や成長の遅延)、甚大な被害をもたらします。
口蹄疫にかかった家畜の肉を食べてしまう可能性について不安に思う方もいるかもしれません。口蹄疫はヒトには感染せず、また、口蹄疫ウイルスに感染した家畜の肉が出回ることもありません。
口蹄疫の歴史
その後、19世紀半ばには南米にも侵入。以降20世紀初頭までには、日本やオセアニア諸国、北中米を除く国々で流行を繰り返してきました。
日本では、明治時代に2度の発生がありましたが、その後100年近く発生はありませんでした。2000年(平成12年)に宮崎県と北海道の4農場で再発生。摘発農家以外にまん延することなく、同年中に清浄国への復帰を達成しました。しかし、2010年(平成22年)4月、約10年ぶりに宮崎県で発生した口蹄疫では、290件以上の農場に感染が拡大し、約29万頭もの牛と豚が殺処分されました。
口蹄疫の発生は伝染病の恐ろしさを全国的に認知させるとともに、家畜防疫の重要性についても意識が高まるきっかけとなりました。
口蹄疫との闘いは現在も世界各地で続いています。
近隣の韓国では2026年にも発生が報告されており、1月30日には仁川市江華郡の牛246頭が、2月20日には京畿道高陽市で牛133頭が殺処分されるなど、国境を越えた脅威は今なお続いています。さらに2月28日には同じ高陽市で3例目(168頭)の発生が確認され、2例目からわずか200メートルの農場でした。このように韓国では口蹄疫が短期間に相次いで発生しており、他地域への拡大も懸念されています。このような状況は、日本における継続的な防疫体制の強化と監視の必要性を改めて示しています。
鳥インフルエンザ
鳥インフルエンザとは?
鳥インフルエンザウイルスに感染したニワトリの主な症状としては、元気消失・呼吸器症状・下痢・肉冠や肉垂の出血や壊死・顔面の腫れ・脚部の皮下出血・産卵の低下・神経症状などがあります。また、目に見える症状や病変がなく突然死亡する場合もあります。
鳥インフルエンザウイルスは、その名のとおり鳥が感染するインフルエンザウイルスであり、ヒトに感染することはほとんどありません。しかし、鳥インフルエンザウイルスに感染した鳥に濃厚に接触した場合、ごくまれにヒトが感染した事例もあります。
なお、鳥インフルエンザに感染した肉や卵が流通することはありません。
鳥インフルエンザの歴史
日本では2004年(平成16年)に山口県・大分県・京都府で、2005年(平成17年)に茨城県と埼玉県で養鶏場にてHPAIの発生が見つかり、2007年(平成19年)には宮崎県や岡山県の養鶏場などでもHPAIの発生が確認されましたが、迅速な防疫措置により、短期間で終息しました。
近年、高病原性鳥インフルエンザは渡り鳥を介して世界的に発生が増加しており、日本国内においても2020年以降は毎シーズン連続して発生が確認されています。特に2022年度(令和4年度)シーズンには過去最多の26道県84事例が発生し、約1,771万羽が殺処分されるなど、被害規模は深刻化の一途をたどっています。
さらに、世界各地でキツネ、アザラシ、クマなど哺乳類への感染事例が相次いで報告されており、ウイルスの宿主域拡大が懸念されています。2024年には米国において乳牛への高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染拡大が確認され、複数の州の酪農場に波及するという、これまでにない事態が発生しました。この事例は、鳥インフルエンザウイルスが家禽以外の家畜にも定着しうる可能性を示しており、パンデミックリスクの観点からも国際的な警戒が強まっています。
農林水産省HPから年度ごとの殺処分羽数、発生都道府県数、発生事例数を以下の表にまとめました。
| 年度 | 西暦 | 殺処分羽数 | 発生都道府県数 | 発生事例数 |
|---|---|---|---|---|
| 平成15年 | 2003年 | 約27万羽 | 3府県 | 4事例 |
| 平成18年 | 2006年 | 約16万羽 | 2県 | 4事例 |
| 平成22年 | 2010年 | 約183万羽 | 9県 | 24事例 |
| 平成26年 | 2014年 | 約36万羽 | 5県 | 6事例 |
| 平成28年 | 2016年 | 約166万羽 | 9道県 | 12事例 |
| 平成29年 | 2017年 | 約9.1万羽 | 1県 | 1事例 |
| 令和2年 | 2020年 | 約987万羽 | 18県 | 52事例 |
| 令和3年 | 2021年 | 約189万羽 | 12県 | 25事例 |
| 令和4年 | 2022年 | 約1771万羽 | 26道県 | 84事例 |
| 令和5年 | 2023年 | 約85.6万羽 | 10県 | 11事例 |
| 令和6年 | 2024年 | 約932万羽 | 10県 | 11事例 |
| 令和7年 | 2025年 | 約39万羽 | 9道府県 | 13事例 |
表1. 年度ごとの殺処分羽数、発生都道府県数、発生事例数
※出典:「国内における鳥インフルエンザについて」(https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/#c)および「平成15年度~平成29年度 高病原性鳥インフルエンザの発生とその対応(令和2年5月版 最近の家畜衛生をめぐる情勢について(抜粋)」(https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/ai_domestic_kako.html)のデータをもとに共立製薬にて作成




