技能実習生の受入れスキーム
農業分野の技能実習生の受入れでは、雇用契約を締結する農業者(技能実習制度上は「実習実施者」と呼ばれます)と技能実習生のほか、監理団体と送出機関が大きく関与します。
監理団体は技能実習生や農業者をサポートする組織であり、民間の事業協同組合やJA等が、国の許可のもと、業務に対応しています。農業分野では、ほぼすべての技能実習が監理団体のサポートを得て実施されているため、連携する監理団体選びが受入れのファーストステップといえるでしょう。
技能実習生の母国にある送出機関は、監理団体が連携する組織です。母国において人を募集し、求職の申込みを監理団体に取り次ぎます。農業者が送出機関と直接関わることは少ないですが、技能実習制度において欠かせない存在です。
監理団体は技能実習生や農業者をサポートする組織であり、民間の事業協同組合やJA等が、国の許可のもと、業務に対応しています。農業分野では、ほぼすべての技能実習が監理団体のサポートを得て実施されているため、連携する監理団体選びが受入れのファーストステップといえるでしょう。
技能実習生の母国にある送出機関は、監理団体が連携する組織です。母国において人を募集し、求職の申込みを監理団体に取り次ぎます。農業者が送出機関と直接関わることは少ないですが、技能実習制度において欠かせない存在です。
技能実習生受入れに関する事前の確認事項
技能実習制度は、適正な実習を実現することを目的として、いくつかの要件や基準を設けています。これら要件等でも、以下の3点は即時的な対応が難しく、早いタイミングでの確認が望ましい事項となっています。
受入・指導体制の整備
技能実習制度は、実習実施者ごとに技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員を定め、技能実習生に対する十分な指導体制を確保していることを求めています。
それぞれの役割は表の通りですが、ポイントは、役割に応じた基準が設定されていることです。特に、技能実習生を直接指導する技能実習指導員については、十分な技能等を有しているべきという考えから、「修得等をさせようとする技能等について五年以上の経験を有すること」が基準となっています。この点は、技能実習制度の担当者を決めるうえで重要であるほか、多くの新規就農者が技能実習生を受け入れることができない理由にもなるため、事前の確認が欠かせません。
それぞれの役割は表の通りですが、ポイントは、役割に応じた基準が設定されていることです。特に、技能実習生を直接指導する技能実習指導員については、十分な技能等を有しているべきという考えから、「修得等をさせようとする技能等について五年以上の経験を有すること」が基準となっています。この点は、技能実習制度の担当者を決めるうえで重要であるほか、多くの新規就農者が技能実習生を受け入れることができない理由にもなるため、事前の確認が欠かせません。
常勤職員の確定
なお、上記の責任者や指導員は、常勤の役員・職員であることが必須です。それゆえ「常勤性」の証明が重要となり、21年4月の技能実習制度の改正でも、健康保険等の被保険者証の提出等を通じた明示が求められています。
雇用関係が明確な法人経営と比べて、家族経営(個人事業主)では、常勤性の明示が難しいかもしれませんが、確定申告をした前年分の収支内訳書(農業所得用)の「事業専従者の氏名等」欄に氏名の記載があり、就労状況を明らかにすれば、常勤職員としてカウントされます(※)。受入を検討する際は、前年の青色申告書の記載状況を確認しておきましょう。
雇用関係が明確な法人経営と比べて、家族経営(個人事業主)では、常勤性の明示が難しいかもしれませんが、確定申告をした前年分の収支内訳書(農業所得用)の「事業専従者の氏名等」欄に氏名の記載があり、就労状況を明らかにすれば、常勤職員としてカウントされます(※)。受入を検討する際は、前年の青色申告書の記載状況を確認しておきましょう。
(※)本内容については、外国人技能実習機構のウェブサイトにおける「よくあるご質問」https://www.otit.go.jp/files/user/statistics/201023-001.pdf
に明記されています。
に明記されています。
住居の確保
また、技能実習生のために適切な宿泊施設を確保することが受入れの必須条件となっています。
1人当たり4.5㎡の寝室の確保など、適切さに関する基準といえる確認事項(※)が詳細に設定されており、これらの事項に該当する宿泊施設の確保が必要となります。
ほとんどの農業者は、自らの畜舎等の近隣に宿泊施設を確保していますが、候補となる物件があっても、事前の改修等が必要なケースが多いようです。 実習実施の手続時には、こうした確認事項に該当する宿泊施設を確保していなければならないため、技能実習開始希望時期と改修等のタイミングを見据えておくことが重要です。
1人当たり4.5㎡の寝室の確保など、適切さに関する基準といえる確認事項(※)が詳細に設定されており、これらの事項に該当する宿泊施設の確保が必要となります。
ほとんどの農業者は、自らの畜舎等の近隣に宿泊施設を確保していますが、候補となる物件があっても、事前の改修等が必要なケースが多いようです。 実習実施の手続時には、こうした確認事項に該当する宿泊施設を確保していなければならないため、技能実習開始希望時期と改修等のタイミングを見据えておくことが重要です。
(※)さらに詳しい内容は、外国人技能実習機構の参考様式(技能実習生の報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書 (参考様式第1-16号))などで確認できます。
https://www.otit.go.jp/youshiki/
https://www.otit.go.jp/youshiki/
監理団体の選定
技能実習生の受入れの要件・基準に問題がなければ、次は監理団体選びとなります。
連携する監理団体の所在地は問われないため、外国人技能実習機構が公表するリストに記載された全国の監理団体が候補先となりますが(※)、監理団体ごとに料金、前後のサポートの充実度、受入可能な技能実習生の出身国、農業に精通しているか否かが大きく異なるため、畜産農家に対するサポート実績が豊富な監理団体を選ぶことをお勧めします。
ここで最も参考になるのが、すでに技能実習生を受け入れている近隣の畜産農家の「口コミ」であり、複数の農家にたずねてみるとよいでしょう。こうした農家が近隣に不在の場合は、自治体が情報を収集していることもあるため、最寄りの農業経営相談所(※)に相談してみましょう。
連携する監理団体の所在地は問われないため、外国人技能実習機構が公表するリストに記載された全国の監理団体が候補先となりますが(※)、監理団体ごとに料金、前後のサポートの充実度、受入可能な技能実習生の出身国、農業に精通しているか否かが大きく異なるため、畜産農家に対するサポート実績が豊富な監理団体を選ぶことをお勧めします。
ここで最も参考になるのが、すでに技能実習生を受け入れている近隣の畜産農家の「口コミ」であり、複数の農家にたずねてみるとよいでしょう。こうした農家が近隣に不在の場合は、自治体が情報を収集していることもあるため、最寄りの農業経営相談所(※)に相談してみましょう。
(※)外国人技能実習機構による監理団体のリストは以下参照。ここで一般監理団体とされているところは、優良な監理団体として、第3号技能実習にも対応可能となっている。また、以下サイトのPDFおよびエクセルシートの「2号移行対象職種」に1-2と記載がある監理団体が畜産での技能実習に対応している監理団体となります。
https://www.otit.go.jp/search_kanri/
(※)農業経営相談所は、すべての都道府県に設置されている、農業者の相談窓口です。都道府県によっては、県内の監理団体の情報を幅広く収集しています。
https://www.maff.go.jp/j/keiei/soudanjyo.html
https://www.otit.go.jp/search_kanri/
(※)農業経営相談所は、すべての都道府県に設置されている、農業者の相談窓口です。都道府県によっては、県内の監理団体の情報を幅広く収集しています。
https://www.maff.go.jp/j/keiei/soudanjyo.html
監理団体確定後の手続き
監理団体確定後、農業者は、監理団体の指導を受けながら、「技能実習計画」を作成し、各種要件等を証明する書類等を準備します。作成した実習計画は、外国人技能実習機構に認定申請を行います。コロナ禍以前でも、技能実習計画の認定申請は4か月前が目安とされ、監理団体への相談は遅くとも半年前と言われていました。新型コロナウイルスの影響等も考慮すれば、検討開始から実習実施までには1年程度要すると見込むべきでしょう。
特定技能の受入れスキーム
特定技能外国人の雇用では、雇用する外国人の求人と特定技能外国人に対して必須となる各種生活支援の実施がポイントとなります。
雇用する外国人は、これから来日するケースとすでに国内に在留しているケースに分かれますが、いずれの場合も職業紹介事業者等の利用が多くなっています。また、農業者が生活支援の内容すべてに対応することは難しいため、登録支援機関の利用が一般的です。
登録支援機関が職業紹介事業者を兼ねることも多いため、紹介を受けた後、雇用に至るまでの手続支援を受けることも考えられます。
また、特定技能では派遣形態での雇用が認められているため、農業者は派遣先となって外国人を受け入れることもできます。
登録支援機関が職業紹介事業者を兼ねることも多いため、紹介を受けた後、雇用に至るまでの手続支援を受けることも考えられます。
また、特定技能では派遣形態での雇用が認められているため、農業者は派遣先となって外国人を受け入れることもできます。
特定技能外国人受入れに関する事前の確認事項
雇用経験の有無
農業分野では、6か月以上継続して雇用した経験を有することが、特定技能外国人を雇用するときの必須基準とされています。これは、特定技能雇用契約の適正な履行には一定程度の労務管理能力が必要という配慮であり、農業者が最初に認識すべきポイントです。
こうした経験がない場合、日本人や技能実習生の雇用を優先する必要があります。あるいは、派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者に選任し、派遣先として特定技能外国人を受入れることを選ぶことができます。
こうした経験がない場合、日本人や技能実習生の雇用を優先する必要があります。あるいは、派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者に選任し、派遣先として特定技能外国人を受入れることを選ぶことができます。
採用候補者の技能・日本語能力
また、採用候補者となる外国人が、特定技能が定める技能水準と日本語能力の水準を満たしているか確認する必要があります。職業紹介事業者を利用する場合でも、自ら確認することが重要です。
適切な住居確保の支援
特定技能外国人に対しても、技能実習生と同様、適切な住居確保を支援することが必須とされています。農業者が自ら用意するケースが多いですが、1人当たり7.5㎡以上の広さが必須ですし、日本人労働者に社宅を提供しているのであれば、同等以上の条件としなければならないことに注意が必要です。
特定技能に関する手続き
特定技能外国人を雇用する農業者は、雇用契約の締結と各種支援の実施内容を明記する「1号特定技能外国人支援計画」の作成が必須となります。実際は、登録支援機関に支援を委託することが多いため、手続きを進める以前に連携する登録支援機関を確定し、委託契約を締結する必要があります。
これらの準備が整った後は、在留資格に関する手続きに進みます。採用候補者が新たに来日するか、日本国内にいるかで必要な手続きが異なるほか、候補者の出身国ごとに必要書類が異なる場合があります。職業紹介事業者や登録支援機関の指示に従うことが重要です。候補者が新たに来日する場合よりも、日本国内にいる外国人を雇用した方が勤務開始までにかかる時間は短いですが、在留資格変更など外国人雇用に特有の手続きが必須であるため、日本人の雇用よりは手続き等の時間を要することを留意しておく必要があります。
以上、事前の確認事項と進め方の概要でした。次回は受け入れた後の留意事項を紹介します。
<参考文献・参考サイト>
【受入れの進め方の概要】
書籍 杉田昌平(2020)「外国人材受入れサポートブック」ぎょうせい
【受入れにあたっての詳細】
(技能実習制度詳細)外国人技能実習機構「技能実習制度運用要領」
https://www.otit.go.jp/jissyu_unyou/
(特定技能詳細)出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」
http://www.moj.go.jp/isa/content/930004944.pdf
(特定技能外国人に対する支援の詳細)出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」
http://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf
(農業分野の運用要領)法務省・農林水産省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-農業分野の基準について‐」
http://www.moj.go.jp/isa/content/930004544.pdf
(外国人の出身国に応じた特定技能に関する手続きの詳細)
http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri05_00021.html
【受入れの進め方の概要】
書籍 杉田昌平(2020)「外国人材受入れサポートブック」ぎょうせい
【受入れにあたっての詳細】
(技能実習制度詳細)外国人技能実習機構「技能実習制度運用要領」
https://www.otit.go.jp/jissyu_unyou/
(特定技能詳細)出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」
http://www.moj.go.jp/isa/content/930004944.pdf
(特定技能外国人に対する支援の詳細)出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」
http://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf
(農業分野の運用要領)法務省・農林水産省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-農業分野の基準について‐」
http://www.moj.go.jp/isa/content/930004544.pdf
(外国人の出身国に応じた特定技能に関する手続きの詳細)
http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri05_00021.html