畜産分野における外国人雇用について 【第3回】 新型コロナウイルス感染拡大後の外国人材の受入れ

畜産分野における外国人雇用について 【第3回】 新型コロナウイルス感染拡大後の外国人材の受入れ

最終回である今回は、新型コロナウイルス感染拡大後の外国人材の受入れに関して、留意してほしいポイントを3点ご紹介します。
まず、感染拡大の影響と感染拡大にともない追加的に対応が必須となった「レジデンストラック」のスキームをまとめます。次いで、制度的にも最長10年の雇用が可能となり、国際的な人の往来の動向が不透明ななかで、長期的な雇用の重要性が高まっていること、またそこで重視すべきポイントを述べていきます。最後には、コロナ禍において急速に進展している、派遣事業者による特定技能外国人の派遣について、酪農ヘルパー組合等での利用事例を取り上げつつ、ポイントを整理します。

新型コロナウイルス感染拡大後の状況

来日予定の混乱から「人手不足」に

新型コロナウイルスの感染拡大は、技能実習生と特定技能外国人の来日にも大きく影響しています。
20年2月後半から来日予定の遅れが生じ始めていましたが、水際対策が強化された20年4月以降は、多くの技能実習生の出身国である中国と東南アジア各国からの新規入国ができなくなりました。この結果、技能実習生等の来日予定が大きく混乱し、農業分野において「人手不足」が生じたことは多くの報道の通りです(注1)。
20年秋頃は感染者数が一時的に減少したため、往来が再開され、多くの遅延していた来日予定が実現しました。しかし、その後の世界的な感染再拡大により、21年1月には日本国内でも2回目の緊急事態宣言が発出され、緊急事態宣言が解除されるまで、すべての国からの新規の入国が再度不可となっています。21年3月には、緊急事態宣言の解除後でも、当分の間は入国制限措置を継続するという国の決定があり、3月21日および6月20日の宣言解除後も来日再開の見通しは不透明なままです。最新情報を得るためにも、外部省のウェブサイトを定期的にフォローしていく必要があります(注2)。

レジデンストラックの概要

もちろん、この先感染が収束すれば、国際的な人の往来も再開されるはずです。しかし、再開直後からコロナ禍以前の状況に戻るとは考えにくく、当面は20年7月末以降の入国において必須となっていた水際措置と防疫措置を条件とする段階的な再開になると見込まれます。
具体的にいえば、(1)空港での感染症の検査、(2)入国後14日間の公共交通機関の不使用、(3)同じく入国後14日間の自宅等での待機という大きく3つの水際措置に加えて、(1)入国前の検査証明と(2)入国後14日間の位置情報および健康状態の報告という防疫措置が来日にあたって必要となると考えられます。
なお、技能実習生と特定技能外国人においては、「レジデンストラック」というスキーム(注3)を利用して上記の措置に対応することになります。具体的な進め方は以下の表の通りです。
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これまでの農業分野でのレジデンストラックの利用実績をみると、入国後14日間の待機施設の確保が最大のポイントとなっているようです。
これは、多くの農業者が技能実習生等に対して共同生活を前提とする住居を用意しているために、待機施設の条件である「個室、バス、トイレの個室管理等ができる」ことを満たすことができず、別途ホテル等を確保しなければならないことに由来しています。この結果、農業者では外国人1人当たり10万円程度の宿泊費が追加費用として生じており、外国人材の受入人数が多い農業者では相当の金額を要する状況となっています。
監理団体等が比較的安価に利用可能な宿泊施設の確保を進めているところですが、多くの都道府県がこうした追加的な費用を補助する仕組みを設けるようになっています(具体的な実施県域は注4参照)。連携する監理団体が県外の事業者の場合、こうした情報を知らないケースもあるため、農業者自身が情報収集することも大切です。

帰国困難者への対応

感染拡大は、来日だけでなく、技能実習を修了した外国人の帰国予定にも影響をもたらしています。国は、こうした帰国困難者が帰国できる環境が整うまで、在留資格「特定活動」等を通じて在留し続けることを認める措置を設けたため、農業分野の帰国困難者も本措置を活用して、働き続ける事例が多くみられました。
なかには、帰国困難かつ新たな来日が見込めない状況が続くことを見据えて、当初は3年で帰国予定だった技能実習第2号の修了生を「技能実習第3号」や「特定技能」に移行し、長期的に雇用することを決めた農業者も出てきています。
一方、農業以外の分野では、感染拡大による経営状況の悪化を理由に、技能実習の打ち切りや解雇に至るケースが生じています。
技能実習制度では、在留期間中の実習実施者の変更は原則不可となっていますが、感染拡大を要因とする場合は変更可能という措置が設けられています。また、解雇となった技能実習時の職種は、産業全体でコロナ禍の影響があると見込まれることから、技能実習時とは別の分野での実習再開および再就職が認められており、他分野から農業分野に再就職する事例も実際にみられます。このように職を失った外国人の雇用は、外国人の生活の安定を促すことにもなるため、積極的に受入れを考えてもよいかもしれません。
ただし、このときも、在留資格変更許可申請をはじめとする手続きは必須となります。正式な手続きを行わない場合、「不法就労」とみなされてしまうため注意が必要です。
20年夏以降、人手不足となった農業者を対象に、人材紹介会社による外国人紹介の営業が盛んに行われています。労働力確保に困る農業者は関心を示してしまいますが紹介事業者として非認可の事業者であるケースや、在留資格の手続きが不十分な外国人が紹介されるケースなどもあり、すでに逮捕に至る事例も発生しています。農業者においても、気付かぬままに不法就労助長罪の対象となってしまう恐れがあるため、利用する紹介事業者の見極めや外国人の在留カードの確認など、各自ができる限りの配慮を行うべきと考えます。

長期的雇用時のポイント

長期的な雇用を進める動き

次に、長期的な雇用を行う際のポイントをまとめていきます。
2017年の技能実習3号の創設により、技能実習制度だけでも最長5年の雇用が可能となり、2019年からは通算5年の雇用を認める特定技能と技能実習を組み合わせれば、最長10年の雇用ができるようになっています。
畜産農業では、耕種農業と比べると長期的な雇用が考えやすいこともあり、それぞれの農業者では、外国人をどの程度の期間雇用していくか判断していくことが求められています。
もちろん長期的な雇用は、働く外国人の同意に基づくため、従業員から長く働きたいと思われる職場環境や就業条件の整備が欠かせません。そのうえで、長期雇用を目指すのであれば、作業現場において、勤務経験に応じた役割を適切に設定し、評価を行うことが重要です。

長期雇用を進めるうえでのポイント

ちなみに長期的な雇用では、技能実習を修了し、引き続き働くことを希望する者を特定技能外国人として雇用するケースが一般的(以下の図参照)であり、特定技能外国人に対して技能実習生のリーダー的な役割を期待しているようです。圃場での現場リーダーとなる従業員が増えることは、農業経営にとって大きなプラスとなります。また、出身国が同じであれば、母国語を介したコミュニケーションが可能というメリットもあり、重要な役割を期待できるようです。
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こうした体制を目指す場合、単純に農作業を指導するだけでなく、作業工程全体を理解できるような実習の実施を意識することが重要です。このとき、勤務年数や経験に応じた昇給基準を明確にしておくことが、リーダー層を目指すモチベーションの向上にもつながりますし、外国人間の不公平感が生じないことにもなるため、検討してもよいポイントとなります。
また、雇用主と現場リーダーとの間では、作業内容に関する正確かつ円滑なコミュニケーションが望ましいことから、日本語能力の向上が今後のポイントとなると考えられます。実際、日本語を学びたいと考える技能実習生や特定技能外国人は少なくありません。しかし、こうした意欲に対して、農業者がサポートするケースはこれまで限定的でした。最近ではオンライン学習など比較的安価で学ぶ仕組みもあり、サポートの方法も多様化しています。特定技能外国人については、日本語学習機会の提供が義務的支援内容の1つとなっていることも踏まえれば、長期的雇用を検討する場合は、勉強時間の確保を含めて日本語学習支援の重要性を認識すべきといえます。

派遣事業者からの特定技能外国人の受入れ

コロナ禍では派遣の利用が急増

農業分野では、派遣事業者を通じた特定技能外国人の受入事例が急増しています。
短期的に労働力が必要となる高原野菜産地が主な受入先ですが、新規の入国が実現できなかった畜産農業者での利用もみられ、注目すべき動向となっています。
この背景には、派遣事業者が帰国困難となった技能実習の修了者など国内に在留する外国人材の情報を幅広く収集し、雇用を実現したため、人手不足に直面する農業者での利用が増えたという事情があります。
また、農業者において、派遣を利用するメリットが広く浸透してきたことも理由の1つです。つまり、農業者が直接外国人に指揮命令できるなど、畜舎等での作業を行う限り、派遣の受入れと直接雇用はほぼ同様であるにもかかわらず、入国や雇用に関連する手続き、さらには賃金計算を含む労務管理などをすべて派遣事業者に任せてよいことがメリットと認識され始めています。
なお、1時間当たりの派遣料は、外国人に対する賃金に加えて、事務手続に要する費用と派遣事業者の利潤が計上されるため、決して低くありません。しかし、目にみえにくいコストを含めれば妥当な金額と考える農業者も少なくないことから、派遣の仕組みを通じた受入れがさらに広まる可能性は高いと考えられます。
21年6月末時点では、全国で11の派遣事業者が特定技能外国人の派遣形態での雇用実績を有しています(注6)。現状は、畜産農業に対応可能な人数はそれほど多くない様子ですが、派遣利用に興味を持った場合は、まず派遣事業者に連絡してみてもよいでしょう。
なお、派遣事業者では、1時間あたりの派遣料金はもちろん、サービス内容もそれぞれ異なります。なかには、リーダーを中心とするチーム単位での派遣や搾乳ロボット等の機械の利用経験がある者を派遣できる事業者もあります。監理団体等を選ぶ場合と同様、比較することをおすすめします。
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酪農ヘルパー組織での留意点

特定技能外国人の派遣を通じた受入れは、従業員確保を課題とする酪農ヘルパー組織でも徐々に広がっています(注7)。酪農ヘルパー組織は、農業者をサポートする組織ですが、近年、人手不足が深刻という点は共通であるため、特定技能外国人に対する関心が今後高まる可能性が高いといえます。
この際、ポイントとなるのは酪農ヘルパー組織の法人格の有無です。法人格を有していれば、派遣先となることに問題はなく、派遣された特定技能外国人は、派遣先であるヘルパー組織の従業員の指揮命令のもと、飼養管理業務に従事します。
一方、組織が法人格を有していない任意組織の場合、派遣先をヘルパー組織とすることはできません。組織の代表者を派遣先として、組織構成員と受委託関係を締結して対応するか、組織の構成員のすべてを派遣先とする派遣契約を締結して対応するか、いずれかの方法を選ぶ必要があります。
ただし前者については、派遣先となる組織代表者の指揮命令が必須となり、組織構成員の作業指示のもとで特定技能外国人が業務に従事すると、「二重派遣」として禁止された行為に該当してしまいます(注8)。また後者では、派遣先数が多いと必要な事務手続きが煩雑となるだけではなく、派遣先および指揮命令する農業者が頻繁に変わることでの農業現場でのリスクが懸念されます。
これらの理由から、派遣を通じた特定技能外国人の受入れを検討するヘルパー組織では、これを契機に法人化を検討する動きが広がっています。法人化にともない、全体的な事務手続きの負担が減り、日々の作業の効率化も見込めることから、行政やJAが法人化を支援する意義も大きいといえます。

おわりに

今回のコロナ禍では、外国人材がいないと農業生産が成り立たない産地が耕種農業を中心に多くみられ、農業労働力を外国人労働力に依存するリスクがあらためて顕在化しました。今後、外国人材を受入れる場合は、こうしたリスクがあることも踏まえて、日本人の雇用や省力化を実現する機械の進展などをフォローすることが望ましいといえます。
また、実際に外国人材を受け入れたあとは、全体的な作業工程を理解するリーダー層の育成や就労先として選ばれる労働環境や条件整備が重要となります。これらの内容は、実をいえば、日本人の従業員の定着をはかるうえで重視されてきた内容とほぼ一致します。入国関連手続きなど異なる点もありますが、2020年4月から施行となっている「同一労働・同一賃金」が国籍と関係なく適用が必須であるように、人を雇用する際に重要なポイントは国内人材・国外人材問わず共通という点をあらためて認識すべきといえるでしょう(注9)。

注釈

(注1)こうした動向については石田(2020a、2020b)に詳しくまとめています。北海道や群馬県、長野県などの降雪地帯は、冬に外国人材が帰国し、春に新たな外国人材を迎える年間スケジュールを立てているため、2月以降の感染拡大と来日予定時期がバッティングしてしまい、大きな影響が生じました。一方、夏以降を受入時期とする九州の野菜産地や周年を通じて受入れている畜産農業者では、帰国予定となる技能実習修了者が帰国できず働き続けるケースが多くみられ、感染拡大直後の影響は比較的小さい傾向がみられました。現在は、入国できない状況が続くなかで、徐々に母国への帰国が進み、人手不足となりつつあります。

(注2)国際的な人の往来は、日本国内の感染状況だけでなく、外国人の出身国の感染状況も大きく影響してきます。そのため、日本国内での感染が収束しても、即時に往来が自由になるとは限りません。自ら外務省のウェブサイトから入国制限措置の現況を確認するとともに、連携する監理団体や登録支援機関と受入予定の外国人の出身国に関する情報を共有し、来日できる時期を頻繁に確認していくことが重要です。
外務省「新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html

(注3)レジデンストラックの他にも、ビジネストラックというスキームが設けられています。ビジネストラックは、主に短期出張者向けであり、「本邦活動計画書」の提出等の更なる条件の下、入国後14日間の自宅等待機期間中も、行動範囲を限定したビジネス活動ができる点が特徴です。技能実習生や特定技能外国人は、長期的な在留が確実であることからビジネストラックではなく、レジデンストラックの対象となっています。
(注6)特定技能外国人を雇用している農業者は、「農業特定技能協議会」への加入が必須となっています。加入者は下記の農林水産省のウェブサイトにおいてリストが公開されており、本リストの右枠に「派遣」と記載がある加入者が派遣事業者に該当することから、派遣を希望する際の参考となります。このほか、国家戦略特区の仕組みを活用して外国人材の派遣事業を行っている事業者も存在していますが、来日の遅延等もあり、21年6月末時点では特定技能外国人の雇用はないようです。
https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/new.html  

(注7)農林水産省の「新たな外国人材受入れ制度に関するQ&A(農業)」においても、飼養管理に従事するのであれば、酪農ヘルパー組織が行う業務に従事してもよいことが明記されています。
https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/attach/pdf/index-24.pdf

(注8)このケースでの「二重派遣」は、派遣先となるヘルパー組織の代表者が派遣事業者から受け入れた特定技能外国人を、さらに別の農業者等に派遣して、その農業者の指揮命令下で業務に従事させる行為を指します。この行為については、職業安定法第44条の規定により禁止されています。

(注9)一般社団法人全国農業会議所が21年5月に作成したパンフレット「適正な労務管理のために」は、国内人材、海外人材問わず、農業分野における雇用を進めるうえで留意すべき点がまとまっており、参考となります。
https://for-farmer.jp/document/00/%E9%81%A9%E6%AD%A3%E3%81%AA%E5%8A%B4%E5%8B%99%E7%AE%A1%E7%90%86%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB.pdf

<参考文献>
【新型コロナウイルス感染拡大の農業労働力への影響】
石田一喜(2020a)「コロナ禍における食品関連産業への影響と農政の動向」
https://www.nochuri.co.jp/genba/pdf/otr20200619.pdf
石田一喜(2020b)「コロナが変える農業」https://www.nochuri.co.jp/genba/pdf/otr20201013.pdf