豚への必須アミノ酸給与 ~必須アミノ酸を含有した種豚用混合飼料給与試験のご紹介~

豚への必須アミノ酸給与 ~必須アミノ酸を含有した種豚用混合飼料給与試験のご紹介~

豚に必須アミノ酸を給与することの重要性に関しては、“豚への必須アミノ酸給与~大切な飼料、無駄になっていませんか~”(下部のリンク参照)でご紹介しました。今回は必須アミノ酸を配合した種豚用混合飼料を妊娠末期および授乳期の母豚に給与した試験について取り上げさせていただきます。

試験の紹介

必須アミノ酸の給与は母豚においてエネルギー補給や、繁殖などの生命活動に大変重要な役割を果たします。母豚で妊娠末期、授乳期に不足しやすいとされる5種の必須アミノ酸(リジン、トリプトファン、トレオニン、L-バリン、メチオニン)を含有した種豚用混合飼料である「授乳ブースター」の給与試験結果についてご紹介します。
 (2384)

試験概要

■ 試験農場 : 中部地方養豚場 (飼養規模 : 多産系母豚約400頭)
■   試験期間  
試験区※ : 2020年4月30日~9月10日
対照区    : 2019年5月2日~9月12日
(※試験農場様でクーリングパッドを増やし、排気ファンを増設したと報告があった。)
■   試験対象 : 試験期間中に在籍した全ての分娩1週間前~離乳までの期間の母豚
■   給与方法
試験区 :分娩予定1週間前 ~ 離乳までの期間の母豚に授乳ブースターを0.4%(飼料1t対し4kg)の割合で妊娠期用、授乳期飼料に添加
対照区 :授乳ブースター無給与(妊娠期用、授乳期飼料のみ給与)

生産成績

表1.生産成績の結果

表1.生産成績の結果

【試験農場の目標値】
離乳頭数/ロット:210頭
離乳時体重:7,000g
図1. 離乳日齢と離乳時体重の関係

図1. 離乳日齢と離乳時体重の関係

試験区では、対照区と比較して、1腹当たりの生存産子数が1頭増加し、ロット当たりの離乳頭数が約20頭増加しました。また、試験区では、図1に示すように離乳日齢と離乳時体重に高い相関が確認され、離乳日齢が1日増えると離乳時体重は282g増加しました。23日齢以降に離乳した平均離乳時体重は7,126gであり、試験農場の目標値7,000gを超えました。さらに、試験区では出生後48時間以内の哺乳時死亡率が対照区と比較して1%低下しました。
✓ 生産成績のまとめ​
授乳ブースターを妊娠末期、授乳期に給与することで、1腹当たりの生存産子数の増加、ロット当たりの離乳頭数も増加し、離乳時体重も上昇しました。結果が示すように、分娩前後の母豚が効率よくエネルギーを利用できることで子豚へ十分な栄養が行き渡ったことに加えて、子豚の増体重が上昇していることから、泌乳量の増加が考えられました。また、子豚がしっかり母乳を飲むことで、子豚の活力も上昇し、哺乳時の事故も減少したと考えられます。

繁殖成績

表2. 繁殖成績の結果

表2. 繁殖成績の結果

試験区では、対照区と比較して、複数交配率が1.6%、発情1回当たりの交配数が0.2回上昇しました。また、離乳後の初回種付けまでの日数が0.9日短縮し、離乳後5日以内の種付け率も2.9%上昇しました。
✓ 繁殖成績のまとめ
繁殖成績に関しては、複数交配率の上昇と1回発情あたりの種付け回数が増加したことから、良い発情が長く続いていると考えられました。また、離乳後の初回種付けまでの日数が減少し、離乳後5日以内の種付け率が上昇したことから、母豚の繁殖に必要なエネルギーが補填された結果だと考えられました。

最後に

授乳ブースターは、リジン、トリプトファン、トレオニン、L-バリン、メチオニンを多産系母豚の要求量を満たすように配合した種豚用混合飼料です。コスト計算の目安として、授乳ブースターの給与量の合計は、母豚1頭当たり約564gとなります(飼料の給餌量は母豚1頭当たり妊娠末期に3kgを7日間、授乳期は6kgを20日間として計算)。給与試験の結果からもクーリングパッド、排気ファンの増設による環境面の改善の影響もありますが、生産成績と繁殖成績の指標が対照区である昨年度のデータよりも上回りました。以上の結果を受け、母豚の持つ能力を最大限に引き出すために、自農場の必須アミノ酸の給与量について要求量を満たしているかを検証し、不足が考えられる場合は必須アミノ酸を含有した混合飼料の添加を検討してみてはいかがでしょうか。
 (2382)