悪臭防止法について
農場から発生する臭いを含めた、さまざまな臭いの問題に対処するための法律です。臭いの規制値や、地方自治体による農場への行政措置などについて定められています。
悪臭防止法の行政措置の流れ
近隣住民が農場の臭いに対し地方自治体に苦情を申し出ると、地方自治体はその農場から排出される悪臭から周辺環境を保全するため、農場の維持管理の適正化と悪臭の発生防止に努めるよう行政指導を行います。行政指導後も不快な臭いにより住民の生活環境が損なわれていると判断した場合、必要な測定を行い規制基準に適合しなかったときに改善勧告が出されます。改善勧告に従わない・規制基準に適合しない場合に規制内容が強化され改善命令が出されます。改善命令を受けても従わない場合は、懲役・罰金の罰則が適用されます。
臭い対策の難しさ
減臭対策に終わりはありません。臭いのもととなる物質は40万以上あり、このうち悪臭防止法に定められている特定悪臭物質は22物質あります。多くの悪臭は複数の物質が混ざっており複合臭となっています。濃度が高い物質を99%除去しても臭いの強さが1/3しか減らない場合もあります。複合臭をゼロにするのは困難ですが、複合臭の性質を見極め、対策を講じる事が重要なポイントになります。
堆肥舎の減臭対策
堆肥舎は、農場で最も強い臭いが発生する場所です。堆肥舎での減臭対策をしっかりと講じることで、農場の臭いを効率良く減らすことができます。堆肥が発酵せず、腐敗してしまっているとき、著しい臭気を発生します。これは堆肥の発酵では糞尿の成分を堆肥の栄養分に変化させることに対して、堆肥の腐敗では堆肥の栄養分を悪臭物質に変化させてしまうからです。また、糞尿は好気的環境(酸素が多い環境)では発酵しますが、嫌気的環境(酸素が少ない環境)では腐敗します。堆肥の発酵を進めるために重要な方法について紹介していきます。
堆肥の通気性の確保
出来るだけ臭気の少ない、良質の堆肥を作るためにはブロアは必需です。酸素が供給されないと畜糞が腐敗し、ひどい臭いを発生させることになってしまいます。「ローダー(糞尿を混ぜる車両)で切り返しているから好気性発酵になる」という意見もありますが、それは間違いです。エアレーションが行なわれていない堆肥は、切り返しを行った直後は酸素が含まれますが、数十分のうちに酸欠状態になり堆肥は腐敗していきます。
エアレーション設備が無い場合
ブロアの設置を強くお勧めします。また、据え置き型で切り返し不要を謳ったエアレーションシステムもありますので、それも含めて検討するとよいでしょう。
排気臭気の処理
堆肥舎の排気臭気を処理するために、おがくずによる吸着が一般的に利用されていますが、それだけでは不十分です。おがくずには堆肥舎で発生した濃度の高いアンモニアを吸着するだけの能力がありません。スクラバーを利用した水によるアンモニアの吸着が効果的な方法になります。スクラバーとは、排気臭気の通り道に水を噴霧することで脱臭を行う装置です。二次処理としておがくずにより硫黄成分を吸着させることも効果的です。しかし、スクラバーによる水洗浄はスクラバーの設置費用と、維持費用において、施設投資にコストがかかってしまうという欠点があります。
堆肥舎から臭いを漏らさない
堆肥舎の入り口が開放型の場合、目の細かい網を張ることで、施設外に漏れる臭いを減らすことができます。完全に臭いを遮断するとは言い切れませんが、有効な手段として多くの農場が取り入れている手法です。
畜舎の減臭対策
畜舎(家畜を飼う場所)における臭いの発生源として代表的なものに糞尿があります。糞と尿が混ざることで速やかにアンモニアを生成しますので、糞尿の早期分離を行う必要があります。また、清掃が行き届いていない畜舎では、糞尿が家畜に付着しやすくなります。家畜の体温によりアンモニアを生み出す反応が早くなり、押しつぶされることにより表面積が増え、さらに臭いを発生させます。
清掃による消臭対策
清掃の徹底がもたらす減臭効果は、糞尿から出る臭いを減らすだけではありません。汚れた敷き藁は臭いの原因になります。新しい敷き藁を敷くことで、臭いの原因を除去できるだけではなく、新しい敷き藁が持つ臭いを吸着する効果も期待できます。また、古い餌を掃除することで腐敗臭を防げます。
排気臭気・粉塵の対策
畜舎で発生した臭いは排気臭気として、また、粉塵に付着して広がっていきます。これらの対策にはスクラバーによる水洗浄法が有効です。トンネル鶏舎のように排気が一定方向に向かう構造の場合、十分な高さを持つ網で覆うことにより羽などの粉塵を捕集することができます。排気を二重のフィルターを通して減臭する方法もあります。最初のフィルターでは粉塵を除去し、次のフィルターでは生物膜により臭いを分解除去します。
大気を利用した消臭対策
大気によって臭いを薄くする減臭方法は多くの施設で利用できます。排気口から排出された臭いは空気で薄まりながら地面に下りていきます。地面における臭い物質の濃度を着地濃度といい、着地濃度が高い場合は苦情が発生する可能性があります。排出口の高さが周辺でもっとも高い建物の2.5倍以上あると、着地濃度は低くなり、臭いが問題になることが少なくなります。しかし、1.5倍以下の高さしかない場合には着地濃度が高くなります。
その他の消臭対策
農場はさまざまな場所から臭いが発生しています。農場を見渡して、臭いの発生源を探してみるとよいでしょう。臭気測定器を使って臭いのホットスポットを探し出し集中的に対処するという手法もよくとられています。
下水処理施設の対策
下水処理施設は臭いの発生源です。処理の過程で発生したスラッグ・脱水ケーキ(どちらも下水処理で発生するごみ)は最も臭いを発生します。これらを速やかに処理する、または処理するまでしっかり覆う等の処置を行ってください。
生垣を利用した消臭対策
生垣は植物の力で臭いを吸収するだけではなく、季節の花々の香りによって農場の臭いを覆い隠すことができます。農場を囲む生垣の高さまで臭いが上昇し、大気に乗って臭いが薄まります
消臭シートを利用した消臭対策
建物が多く、それぞれの遮蔽が難しい場合や、生垣の成長が待てない場合には、共立製薬が扱っている「さやか🄬」(消臭成分が組み込まれたシート)を使用して消臭対策を行えます。「さやか🄬」による消臭効果は、アンモニアをはじめとする畜産関連悪臭物質で確認されていますが、空気より比重が重く、地面を這うように移動する低級脂肪酸の対策に特に有効です。
さやか🄬はクラレトレーディング(株)の登録商標です。
消臭剤を使用した消臭対策
農場における消臭対策は数多くの方法があることが分かりました。実際の減臭ではこれらの対策を可能な限り、いくつも重ね合わせて行う必要があります。しかし、何事にも限界があります。できる限りの消臭対策を行った後「あと一押しの対策が欲しい」、「コスト面で行えない対策を補える方法が欲しい」そう思ったら、共立製薬の消臭剤「エポリオン」の使用をご検討ください。