開発の裏側!水産用ワクチン:ピシバック 注 レンサα3 oil ~前編~

開発の裏側!水産用ワクチン:ピシバック 注 レンサα3 oil ~前編~

皆さまが使用されているワクチンなどの動物用医薬品が、どのように開発されているかご存じでしょうか?
今回、水産用ワクチンとして販売されているピシバック 注 レンサα3 oilについて、開発の背景とエピソードを紹介します。


📖 連載「開発の裏側!」シリーズ(全3回)

開発部署のご紹介

水産ワクチン課:水産用ワクチンを中心に、水産用医薬品や水産用飼料などを開発している。

ピシバック 注 レンサα3 oilとは

ピシバック 注 レンサα3 oil3種類の血清型(Ⅰ、ⅡおよびⅢ型)のα溶血性レンサ球菌症を予防するワクチンで、3種類の血清型すべてに対応したワクチンは世界初です。
ブリ属魚類の腹腔内に注射することで、現在ブリ属魚類で発生が確認されている3種類すべての血清型のα溶血性レンサ球菌症を予防することができるオイルアジュバントワクチンです。

ワクチン開発に至った理由

日本の海面養殖では、さまざまな疾病が問題となっていますが、なかでもα溶血性レンサ球菌症はブリ属魚類(ブリやカンパチなど)、シマアジを中心に被害が大きい疾病の1つです。
この疾病には、これまで2種類の血清型(Ⅰ型、Ⅱ型)が知られており、ワクチンも販売されていました。
しかし、2021年、ワクチン投与済みにもかかわらず、この疾病で死亡する事例が報告され、原因が新たな血清型のⅢ型であると判明しました。
当社でも、同時期に従来のワクチンではⅢ型α溶血性レンサ球菌症を予防できないことが試験で明らかになり、さらに生産者さまや公的機関からの強い要望があったため、本ワクチンの開発に至りました。

ワクチン開発におけるハードル

ワクチン開発には、いくつもハードルがあり、製品を発売するにはそれらを乗り越えなければいけません。
ここからは、ハードルを乗り越えた開発エピソードを3つご紹介いたします。

①ワクチン株の発見

ワクチンの抗原であるワクチン株を発見することは、そのワクチンの有効性と安全性に直結するため、ワクチン開発の肝といえます。

当社では、営業担当者からの依頼で魚病検査※1を行い、最新の疾病の流行を調査しています。

その結果、特に流行している疾病や流行の兆しがみられる疾病については現場での検体収集に注力し、収集した多くの病原株からワクチン株候補を選別することで、より有効性が高いワクチン株を発見できました。

なお、魚病検査については、開発担当者の多くが社内外で研修を受講し、最新技術や手技を用いて実施しています。そして、検査結果をもとに、現場に寄り添った対策提案をしています(2025年度の検査件数:45件)。

※1:魚病検査は必要に応じて実施するため、全ての検体をお受けしておりません。

図1 魚病検査からワクチン株選定までの流れ

図1 魚病検査からワクチン株選定までの流れ

②多価ワクチンの開発

複数の抗原が入っている多価ワクチンを開発する場合、それぞれの抗原に対して免疫がしっかりと誘導される必要があります。
試験によって適切な抗原の量を調べる必要がありますが、抗原が1つのみであれば免疫が誘導されていても、複数の抗原を混ぜ合わせると、抗原同士が互いに干渉してしまい、免疫が誘導されにくくなることがあります。
そのため、それぞれの抗原の量を何通りも組み合わせて試験を行い、それぞれの抗原の免疫が十分に誘導されるかを調べる必要があります。
多価ワクチンであるピシバック 注 レンサα3 oilは、本来いくつものパターンを調べる必要があり、時間を要するはずでした。
しかし、当社では既にピシバック 注 レンサα2などの2種類の血清型(Ⅰ型、Ⅱ型)のα溶血性レンサ球菌症に対するワクチンを開発しており、同種ワクチンに対する多くの試験成績を蓄積していたため、比較的短い期間で検討を終えることができました。
図2 多価ワクチンではいくつもの組み合わせで試験をする...

図2 多価ワクチンではいくつもの組み合わせで試験をする必要がある

③対象魚種の設定

魚と一口にいっても、さまざまな種類が養殖されています。
水産用ワクチンとして承認を取得するためには、魚種ごとにデータを取る必要があります。
当社で言えば、ピシバック 注 5 oilでは対象魚種はブリのみの1種で承認を取得していますが、ピシバック 注 レンサα3 oilでは、ブリ属魚類と広く承認を取得しました。
図3 魚といっても、種類は多様

図3 魚といっても、種類は多様

これまでの検査と開発が基礎になっている

2021年に現場での事例が報告されて以降、Ⅲ型α溶血性レンサ球菌症はブリ属魚類だけでなく、シマアジ・カワハギ・ヒラメなど多様な魚種に被害が拡大していました。
さらに、治療に用いられている抗菌薬に対する薬剤耐性化の懸念も増していたため、ワクチン開発の要望が年々高まっていました。
そのような状況から、いち早く製品開発に着手し、2025年にはピシバック 注 レンサα3 oilを発売することができました。
この迅速な開発は、疾病の流行をいち早く調査できる体制や積極的な病原株の収集活動に加え、多くの水産用ワクチンの開発経験があったからこそ実現できたものと考えています。
これからも迅速な開発を目指して、検査や開発体制を整えていきます。
次回は、ピシバック 注 レンサα3 oilを開発した現場と取り組みについて、ご紹介します。
ぜひお読みください。
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