鶏コクシジウム感染症生ワクチンの散霧接種と接種後の管理

鶏コクシジウム感染症生ワクチンの散霧接種と接種後の管理

2024年、鶏コクシジウム感染症生ワクチンの新製品、種鶏・採卵鶏向けの「エバロン」とブロイラー向けの「エバント」を発売いたしました。このワクチンは、散霧による接種方法の承認を受けています。今回は、散霧による実際の接種方法と、免疫を確実に付与させるための接種後の鶏群の管理のコツについてお話したいと思います。

「エバロン」「エバント」の散霧接種の方法

(1)準備

 「エバロン」または「エバント」について、1,000羽あたり、合計280mLになるように調整してください。
適切な容器に飲用水を223mL準備します。飲用水に溶解用液(50mL)を混合し、ワクチン(7mL)をよく振とうしながら容器に加え、よく撹拌し、散霧器に入れてください。

アンプル開封

写真1

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写真2

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(2)散霧

散霧器を使い、箱に入ったヒナに向けて、できるだけ均一にかかるように散霧します。
散霧時の粒子径は、やや大きめの200~250μmが推奨されます。
散霧時には、防護メガネ、マスク、手袋等の防護具を着用し、作業者の眼、鼻、口等に入らないように注意してください。

散霧

※散霧に使用する散霧器の種類や詳細な設定については、共立製薬株式会社の担当者までお問い合わせください。

(3)ワクチン株オーシストの摂取

ワクチンを散霧されたヒナは、溶解用液に含まれる色素により、身体にワクチン液が付着していることが確認できます。羽毛が紫色に着色されますが、羽毛の生え変わりによって自然に消失します。

ヒナの身体についたワクチン液をヒナがお互いについばみあうことで、ワクチン株のオーシストを口から体内に取り込みます。溶解用液には、ヒナのついばみを促進するような色素や香りが含まれています。

スプレー後のついばみ

散霧後は一定時間、箱の中でついばみをさせてから解放してください。ヒナの身体に付着したワクチン液が乾くくらいが、解放の目安です。

ワクチン接種後の管理について

鶏コクシジウムワクチンによって免疫が付与されるためには、体内で増殖して排出したオーシストを再摂取して感染し、ふたたび体内で増殖して排出する、という過程を2~3回繰り返す必要があります。エバロンでは接種後21日、エバントでは接種後14日での免疫成立が確認されています。
HIPRA社内資料 (4560)

via HIPRA社内資料
ここで重要なのは、飼養密度と敷料(床面)の湿度です。
飼養密度が低すぎると、ヒナがオーシストに接触する機会が減少してしまい、再摂取が効率的にできないことがあります。飼養密度は、14日齢までは30~60羽/㎡、それ以降は15~30羽/㎡が目安となります。
また、鶏から糞と一緒に排出された直後のオーシストは感染性を持たない未成熟オーシストの状態です。環境中で成熟オーシストになることで感染性を獲得します。オーシストが成熟するためには一定以上の湿度が必要です。敷料や床面の湿度が低すぎると、オーシストの成熟が止まったり遅れたりして、免疫の成立が遅れる可能性があります。オーシストの成熟に適した敷料の湿度は30~35%で、土壌用の水分計を使って測定することができます。もし水分計がない場合は、敷料をつかんで軽く握ったときに、多少かたまりになる程度の水分が含まれていればおおむね問題ないといえます。敷料が乾燥している場合は、散水などを行い、適宜加湿してください。

敷料1乾燥しすぎ

敷料2適切な湿度

おわりに

鶏コクシジウム感染症生ワクチン「エバロン」「エバント」は発売直後から多くのお問い合わせをいただいております。しかし、コクシジウムのワクチンを散霧接種する方法は、練り餌などの方法と比べて一般的ではないため、どのように接種するのかイメージしにくいかもしれません。そのため今回、散霧での接種方法と、その後の鶏の管理方法について紹介いたしました。本記事を参考に正しくワクチンをご使用いただき、ワクチンの効果を十分に発揮していただくことにつながりましたら幸いです。もし何かご不明な点などございましたら、当社担当までお問い合わせください。
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