消毒の基礎と効果的な方法vol.3

消毒の基礎と効果的な方法vol.3

vol.1では消毒薬の種類と特徴、消毒の効果に係わる要因について、vol.2では消毒の方法と検証の方法についてご紹介しました。vol.3の今回は消毒効果検証事例についてお伝えします。

養豚場での事例

離乳舎において消毒前後にフードスタンプを用いて検証を行った事例をご紹介します。
採材は、フードスタンプ「ニッスイ」大腸菌群用(X-GAL 寒天)と一般細菌用(標準寒天)を用いて、写真1、2の通り、床面4ヵ所、壁面4ヵ所、エサ箱2ヵ所の計10ヵ所から実施しました。採材のタイミングは、消毒前(水洗・乾燥後)と消毒後(消毒薬散布・乾燥後)の2回で、採材後のフードスタンプはインキュベーターで培養し、コロニーの数をカウントし、消毒前後で比較しました。
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消毒前の結果を写真3に示します。写真左上の数字はコロニー数(CFUまたは集菌数)です。
大腸菌群については、床1、床2は陰性(コロニーが検出されない)ですが、床3のコロニー数は>100個、床4は23個と多くのコロニーが検出されました。床1、床2は外のスノコ部分、床3、床4は内側の部分であり、日光の当たり具合も異なります。このように同じ「床」でも水洗、乾燥のしやすさ、素材により水洗の効果に差が出ることがあります。また、一般細菌については、全ての箇所で>100個のコロニーが検出されました。
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次に消毒後の結果を写真4に示します。大腸菌群は消毒前のコロニー数に関わらず、全ての採材箇所で陰性なりました。また、一般細菌も大幅にコロニー数が減少していました。このことより、この離乳舎では有効な消毒が実施されていることが分かりました。
結果を見るまではドキドキしますが、今回の消毒後の大腸菌群のように全て陰性の結果が出たときは、思わずガッツポーズをしたくなりますね。目に見えない病原体を見える化することで消毒を実施される方のやる気にもつながります。
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いつ採材したらいいか?

フードスタンプを用いた採材は消毒前後で行いコロニー数を比較するのが基本ですが、用途によって採材する回数や採材箇所の工夫が必要です。表1のような消毒プログラムの場合、検査の目的が消毒プログラムの見直しなら採材例Aをお勧めします。水洗後とそれぞれの消毒後に採材を行うことで、どの工程でどのくらい細菌が減っているのかを確認することができます。
第1回にも記載しました通り、水洗と消毒の理想的な割合は“水洗8割、消毒2割”ですので、水洗後の結果が大腸菌群、一般細菌共にコロニーが>100個もある状態だと、乾燥後に散布する消毒薬が最大限の効果を発揮できない可能性が高いです。その場合は水洗方法を見直し、強化することで消毒散布前の細菌数が減らすことが第一です。また、各消毒実施後に採材することで、それぞれの工程でどの程度の消毒ができているかを把握でき、無駄な工程があれば省くこともできます。
一方、プログラムが確定したあとの定期的なモニタリングが目的なら採材例Bがお勧めです。採材が簡単とはいえ、日頃の仕事に加えてフードスタンプを実施するのは手間ですので、最低限の回数で行っていただければ十分です。もしここで思わしくない結果が出たときはその理由を調査して次の消毒に反映させることが大切です。
水洗後の残存有機物量を測定する検証も普及しつつあります。正確には生物のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)とAMP(アデノシン一リン酸)を汚染の指標として利用するもので、もともとは食品工場などの洗浄管理で用いられている方法です。
キッコーマンバイオケミファ(株)から販売されているルミテスターという測定機械を用いれば、10秒ほどで結果が数値で表示されるので、迅速に確認ができ、より効率的に水洗を行うことができます。
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このようにフードスタンプでの消毒効果検証は、採材が簡単で結果も分かりやすく、消毒薬の選択、濃度、感作時間が適切に選択されて消毒が実施できているかを客観的に確認するのに有効な方法です。ご興味がある方は、ぜひ共立製薬の担当者にお声がけください。
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