消毒の基礎と効果的な方法vol.1

消毒の基礎と効果的な方法vol.1

2000年以降、世界中でも様々な家畜伝染病が発生していますが、日本国内においても口蹄疫、PED、鳥インフルエンザ、豚熱など、農場に甚大な被害を引き起こす疾病の発生が相次いでいます。農場を守るための飼養衛生管理基準は大幅に改正され、家畜を飼育するうえで「環境衛生」はさらに身近なものとなりました。とりわけその中でも「消毒」は農場内の様々な場面で日々実施されている衛生対策の1つです。
消毒の目的は?と聞かれたら、疾病の対策や予防といったマイナスをゼロにするイメージが大きいのではないでしょうか。しかし、本来は何もない時だからこそ消毒を徹底し、さらなる生産性の向上に繋げられるのが消毒です。
例えば、家畜にワクチンを接種することにより症状を軽くする効果が期待できますが、農場が病原体に重度に汚染されていたり、環境が整っていない場合にはワクチン接種を行ってもその効果を十分に発揮できないこともあることはよく知られています。
この連載では、複数回にわたり、消毒の基礎から応用までをお伝えしていきたいと思います。

理想の消毒薬とは?

現在、動物用医薬品の消毒薬は約12種類の成分が販売されていますが、皆さまはどのように消毒薬を選んでいますでしょうか?皆さんが考える理想の消毒薬はどんなものですか?
あらゆる細菌やウイルスに効果があり、安価で即効性があり、人体や家畜に害がなく、金属に対する腐食が少ない…etc.、ご要望はたくさんあると思います。しかし、実際はすべての条件を満たすような消毒薬はこの世にはないのです。消毒薬にはそれぞれ得意分野と不得意分野があるので、各製剤の特徴を知って適材適所に使うことで個性を最大限に活かせます。

消毒薬の種類と特徴

表1は、畜産現場で使用されている消毒薬の成分について、効果のある病原体、代表的な使用用途、成分の特徴を示したものです。表中の〇は有効、△は場合によって効果の出ないことがある、×は無効を示しており、消毒薬の成分により、効果がある病原体が異なることが分かります。
例えば、逆性石鹸は安全性が高く、畜体噴霧もできるので(休薬期間は設けられています)畜産現場では一番使用されている消毒薬ですが、芽胞菌や口蹄疫ウイルスといったエンベロープのないウイルスなど、消毒薬に対して比較的抵抗性が高い病原体には無効であり、糞などの有機物に弱いという一面もあります。一方、グルタルアルデヒド製剤のように、幅広い病原体に対して効果を発揮する消毒薬は、畜体への直接噴霧ができず、使用用途が限られてしまうこともあります。
現在は、二酸化塩素や過酢酸などを成分とする動物用医薬品ではない製品も現場で見かけます。このような製品は動物用医薬品のように効能・効果、用法・用量は定められておりませんので、使用した後の効果を検証しながら適材適所に使用することをお勧めします。
表1.消毒薬の種類と特徴

表1.消毒薬の種類と特徴

消毒薬の効果を最大限に発揮させるために

前項でお示しした消毒薬自体の実力もさることながら、消毒の効果にはその他の様々な要因が大きく関係します。その代表的なものは、使用量、温度、濃度、作用時間、pH、有機物、乾燥です。それぞれの具体的な例を表2に示します。
特に、消毒薬を散布する前に行う清掃と水洗は消毒薬の効果に大きな影響を与えます。“有機物があると消毒薬は効果がない”や“水洗8割、消毒2割”などというフレーズは聞いたことがあると思います。
実際に、有機物存在下において、鳥インフルエンザウイルスに対する逆性石鹸とグルタルアルデヒド製剤の殺ウイルス効果がどれほど減弱するかを調べた結果があります(表3)。逆性石鹸は有機物の濃度が高くなるにつれて、消毒薬の濃度も高くしなければなりませんが、グルタルアルデヒドは5%まで有機物が入っても有機物がない場合と同じ濃度で効果があります。
水洗をしやすくするために、アルカリ洗浄剤を散布して有機物を浮き上がらせることも有効です。適材適所の消毒薬を選択するならば、水洗と乾燥をしっかり実施できる場合は逆性石鹸、どうしても水洗に時間をかけられない場合や車輛消毒にはグルタルアルデヒド製剤がお勧めです。
表2.消毒の効果に係る要因

表2.消毒の効果に係る要因

表3. 鳥インフルエンザウイルスに対する逆性石鹸とグル...

表3. 鳥インフルエンザウイルスに対する逆性石鹸とグルタルアルデヒド製剤の殺ウイルス効果

via (共立製薬(株)社内資料)
次回は消毒の基礎と効果的な方法vol.2です。発泡消毒や煙霧衝動など、消毒の方法についてお伝えいたします。お楽しみに。