理想の消毒薬とは?
あらゆる細菌やウイルスに効果があり、安価で即効性があり、人体や家畜に害がなく、金属に対する腐食が少ない…etc.、ご要望はたくさんあると思います。しかし、実際はすべての条件を満たすような消毒薬はこの世にはないのです。消毒薬にはそれぞれ得意分野と不得意分野があるので、各製剤の特徴を知って適材適所に使うことで個性を最大限に活かせます。
消毒薬の種類と特徴
例えば、逆性石鹸は安全性が高く、畜体噴霧もできるので(休薬期間は設けられています)畜産現場では一番使用されている消毒薬ですが、芽胞菌や口蹄疫ウイルスといったエンベロープのないウイルスなど、消毒薬に対して比較的抵抗性が高い病原体には無効であり、糞などの有機物に弱いという一面もあります。一方、グルタルアルデヒド製剤のように、幅広い病原体に対して効果を発揮する消毒薬は、畜体への直接噴霧ができず、使用用途が限られてしまうこともあります。
現在は、二酸化塩素や過酢酸などを成分とする動物用医薬品ではない製品も現場で見かけます。このような製品は動物用医薬品のように効能・効果、用法・用量は定められておりませんので、使用した後の効果を検証しながら適材適所に使用することをお勧めします。
消毒薬の効果を最大限に発揮させるために
特に、消毒薬を散布する前に行う清掃と水洗は消毒薬の効果に大きな影響を与えます。“有機物があると消毒薬は効果がない”や“水洗8割、消毒2割”などというフレーズは聞いたことがあると思います。
実際に、有機物存在下において、鳥インフルエンザウイルスに対する逆性石鹸とグルタルアルデヒド製剤の殺ウイルス効果がどれほど減弱するかを調べた結果があります(表3)。逆性石鹸は有機物の濃度が高くなるにつれて、消毒薬の濃度も高くしなければなりませんが、グルタルアルデヒドは5%まで有機物が入っても有機物がない場合と同じ濃度で効果があります。
水洗をしやすくするために、アルカリ洗浄剤を散布して有機物を浮き上がらせることも有効です。適材適所の消毒薬を選択するならば、水洗と乾燥をしっかり実施できる場合は逆性石鹸、どうしても水洗に時間をかけられない場合や車輛消毒にはグルタルアルデヒド製剤がお勧めです。