消毒の基礎と効果的な方法vol.2

消毒の基礎と効果的な方法vol.2

消毒の基礎と効果的な方法①では消毒薬の種類と特徴、消毒の効果に係わる要因についてご紹介しました。今回は消毒の方法と検証方法についてお伝えします。

適材適所の消毒方法

消毒を行う主な対象は、畜鶏舎、家畜の飲用水、畜体、農場内に持ち込む資材や薬品、車両、衣類、履物、人間の手など様々です。一言で「消毒を行う」と言っても、消毒する対象によってその方法は変わります。消毒薬を噴霧するには、動力噴霧器を用いることが多いですが、例えば車両、ビニールカーテン、水槽、カウハッチ、餌箱のように消毒薬液が流れ落ちやすい材質に対しては消毒薬の付着時間を長くすることができる発泡消毒、また消毒薬を散布して湿らすことができないものは煙霧消毒を選択するなど、用途に応じた様々な方法があります。
発泡消毒とは、発泡ノズルを付けた動力噴霧器で消毒薬を発泡させる方法です。発泡消毒のメリットは、写真1の通り泡状にした消毒薬を付着させるので、①泡状の消毒薬は対象物に接触する時間が液状の消毒薬より長いこと(写真2ー2のように、30分後でも床面にはしっかり泡が残っています)、②消毒薬を散布した箇所が一目で分かるので(写真3)消毒薬の散布し残しを防ぐことができること、③使用する水の量が液状で散布する場合に比べて少ないことなどがあります。
そのため、畜舎の中でも汚染度の高い床面、ビニールやステンレスなどのようにツルツルしていて消毒薬が付着しにくい素材、コンパネのように細かい凹凸がある素材には特に適しています。
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発泡消毒のメリットをご説明したところで、「発泡消毒をやってみたい!」と思った方へ、突然ですがクイズです。実は発泡消毒を効率よく行うためには発泡ノズルの動かし方にコツがあるのです。効率のよい方法は動画のAとBどちらだと思いますか?(正解は下に…)

動画A

動画B



正解は…Bです!


発泡ノズルはAのように小刻みに動かすよりも、ゆっくりと左から右、右から左と2回ほど重ねていくと満遍なく泡が付着します。是非、発泡消毒をされる際は「B」の方法で実施してみてください。

煙霧消毒

煙霧消毒とは、煙霧機を用いて消毒薬を2~3ミクロンの非常に細かい粒子にして行き渡らせる方法です。煙霧消毒のメリットは、①濡らさずに消毒を行いたいものを消毒できること、②消毒したい場所に煙霧機を設置し、作動させるだけで煙霧機から消毒薬が噴霧されるので手間が省けること、③手では消毒液を散布できない細かい隙間にも煙霧にした粒子が行き渡り消毒できること、などがあげられます。このメリットを活かし、農場に出入りする人、農場内に持ち込む資材や機械、畜鶏舎内の消毒や落下細菌対策として用いられています。

煙霧消毒に用いる機械は、ガソリンを動力とする大型のもの(写真4)と、コンプレッサーを動力とする小型のもの(写真5)があります。畜鶏舎全体のように消毒対象範囲が広い場合には大型のものを、また、種卵や農場内に持ち込む資材や機械など狭い部屋で消毒を行う際は小型のものがお勧めです。
一般的に煙霧消毒は、仕上げの消毒として行われることが多いので、消毒薬は殺菌スペクトルの広い消毒薬(グルタラール製剤など)が選択されます。一方、生体がいる畜舎などを消毒する際は、畜体噴霧の許可のある消毒薬(逆性石鹸など)を用います。
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効果検証の重要性

日々の消毒や、新しく消毒プログラムを考える時に大切なことは、効果検証をセットで行うことです。病原体は目に見えないので、消毒後にどのくらい減っているのかを目視することはできませんが、培地を用いて細菌を発育させ、数値化することで効果検証を行うことができます。一般的な方法は拭取り法ですが、各種器具と技術が必要になるため、現場で簡易的に検査を行う場合はフードスタンプ法が便利です。フードスタンプは直径約5cmの寒天培地で、手に持って直接検査したい箇所にスタンプします(写真6)。それをインキュベーターで一定時間培養すると、細菌が存在する場合はコロニー(大腸菌群の場合は写真7のような緑色のもの)が形成するので、そのコロニー数を数えて判定するという手順です。フードスタンプは一般細菌、大腸菌群、黄色ブドウ球菌など目的とする種類別に12種類が販売されていますが、畜鶏舎では大腸菌群と一般細菌を用いることが多いです。 
中には「自分が消毒したところに細菌が沢山出たらどうしよう…」と検査をしたくない気持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんが、しっかり消毒が出来ていればその証明となります。もし細菌が残っていた場合にも、再度消毒を行うなどの対応ができますし、プログラムを見直す場合はどこを重点的に変えれば良いかを見つける近道になります(図1)。また定期的に効果検証を行い、結果を保管しておくことは、記録の保管が重要になっている昨今では大切なことです。
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図1.消毒の効果検証

図1.消毒の効果検証

次回は検査の実例をご紹介します。お楽しみに。
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