飼養衛生管理者とは?選任が義務付けられた理由や管理者がやるべきこと

飼養衛生管理者とは?選任が義務付けられた理由や管理者がやるべきこと

2020年(令和2年)7月1日に飼養衛生管理基準が改正され、家畜の所有者に対して「飼養衛生管理者」を選任することが義務付けられました。飼養衛生管理者は一体どんな役割を果たし、何をしなければいけないのでしょうか?
この記事では、飼養衛生管理者を選任する意味や、飼養衛生管理者の具体的な業務について解説します。

飼養衛生管理者とは?

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2020年(令和2年)4月3日、飼養衛生管理基準の遵守をこれまで以上に徹底することなどを目的として、家畜伝染病予防法の一部改正が公布されました。これによって新設されたのが「飼養衛生管理者制度」です。家畜の所有者は、衛生管理区域の衛生管理の責任者として、「飼養衛生管理者」を選任することが義務付けられるようになりました。

基本的にはひとつの衛生管理区域ごとに1人選任する必要があります。しかし、例えば道を挟んで複数の衛生管理区域を一体的に管理している場合などは、支障なく衛生管理を実施できると考えられるため、同じ方を選任しても問題ありません。

ペットや研究目的などでも飼養衛生管理者の選任が必要

飼養衛生管理者は、牛・水牛・鹿・馬・めん羊・山羊・豚・いのしし・鶏・あひる・うずら・きじ・だちょう・ほろほろ鳥または七面鳥の所有者であれば選任する義務があります。畜産業を営む生産者でなくても、対象の動物を1頭もしくは1羽でも飼養している場合、ぺットや研究目的、動物園であっても選任する必要があります。

資格は必要?

飼養衛生管理者を選任するうえで、特別な資格は必要ありません。しかし、 衛生管理の責任者として後述する業務を適切に行うために、衛生管理の経験や知識、管理指導の能力がある人が適任といえるでしょう。

飼養衛生管理者の選任が義務付けられた経緯

2018年(平成30年)の9月、国内で豚熱(CSF)が発生した際、国や自治体から生産者に対し、消毒方法や最新情報の周知が迅速に行えず、適切な衛生管理の実施ができませんでした。こうした過去の反省を踏まえ、衛生管理区域ごとにきめ細やかな情報提供を行い、適正な衛生管理により家畜の伝染の発生予防およびまん延防止を徹底するため、飼養衛生管理者制度が新設されました。

また、衛生管理は一部の家畜の所有者だけが熱心に取り組んでも意味がありません。すべての従事者や関係者が衛生管理に努めることで、より効果がもたらされます。

飼養衛生管理者がやるべきこと

飼養衛生管理者は、3つの業務を行う必要があります。

衛生管理区域の出入りのチェック

衛生管理の基本的な考え方として、衛生管理区域の内と外を分け、ウイルスを区域内に持ち込まない、また区域外に持ち出さないことが重要です。飼養衛生管理者は、衛生管理区域を出入りする従事者や関係者が適切に消毒をしているか、また衣服や靴を替えているかなどをチェックし、できていない場合は指導します。

従事者・関係者への教育・周知

飼養衛生管理者は、飼養衛生管理基準の内容を理解し、従事者・関係者への教育を行う必要があります。都道府県等が開催する研修会などにも参加して新たな情報を得た場合や、基準が改正された場合、それを衛生管理区域内の従事者に周知し、農場全体で衛生管理体制を構築していきます。

国や都道府県から共有される家畜衛生に関する情報を踏まえた対応

国・都道府県において、飼養衛生管理者のメーリングリストが構築されます。今後はこのメーリングリストにより、伝染病が発生した際に疫学的情報や疾病の特性に応じた消毒方法、研修会の開催情報などが発信されるため、飼養衛生管理者はその内容に応じて適切に対応します。

飼養衛生管理者を選任しないと罰則あり。早めの報告を

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家畜の所有者は、最寄りの家畜保健衛生所まで選任した飼養衛生管理者に関する以下の情報を報告する必要があります。

・氏名
・住所
・電話番号
・メールアドレス
・管理する農場名と衛生管理区域名
・当該衛生管理区域の代表住所


飼養衛生管理者を選任しないと遵守命令違反となり、場合によっては、100万円以下の罰金や氏名が公表されるといった罰則があります。また、定期報告において、管理者の氏名、連絡先等を報告せず、又は虚偽の報告をした場合は30万円以下の過料が科されることもあります。

初回の報告期限はすでに過ぎており、改正後の飼養衛生管理基準が適用された2020年(令和2年)7月1日まででした。報告がまだの方・報告内容の変更がある方は、すみやかに家畜保健衛生所に連絡しましょう。
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