「やさしい免疫のおはなし」第1回 免疫ってなに?

「やさしい免疫のおはなし」第1回 免疫ってなに?

新型コロナウイルス感染症の流行により、「免疫」についてのお話に触れる機会は増えたと思います。畜産の現場でも免疫という言葉に触れることは、よくありますよね。家畜が病気になるのを防ぐために、また病気から回復させるために、免疫は重要な働きをしています。免疫の話になるとたくさんの専門用語が飛び交って難しくなりますが、できるだけ分かりやすく、数回の連載に分けて紹介していきます。
今回は、そもそも免疫とは何なのというところから、お話ししていきます。

免疫とは

免疫とは体の中で、「自分」と「自分でないもの」を見分けて、「自分でないもの」を取り除く仕組みです。免疫学では「自分=自己」、「自分でないもの=非自己」と呼んでいます。
体にトゲが刺さった時に、腫(は)れたり、膿(うみ)が出たりしたことはありませんか。風邪をひいたときに鼻水や、濃い痰(たん)が出ることがありますよね。私たちの体は、トゲや、トゲに付着していた細菌、風邪の原因となる細菌やウイルスなどの、外から体の中へ入ってきた自分でないものを、外に追い出そうと働きます。
自分でないものを取り除く体の仕組みは、私たちの体の中で絶えず働いており、病気を引き起こす病原体などの外敵から体を守っています。これが免疫という仕組みです。

自己と非自己の識別

私たちのまわりには、細菌やウイルスなど様々な病原体がいます。病原体は、体の中に侵入してくる外敵の代表的なものです。また、トゲのような異物も、体の中に入っては都合の悪い外敵です。免疫の仕組みは、外から体内へ入ってきた外敵を自分でないものと見分けて、いろいろな方法を使って攻撃し、弱らせようとしたり、体の外へ追い出そうとしたりします。(図1)
その一方で、免疫の仕組みは、体の中の正常な細胞1つ1つのことを、自分だと見分けることが出来ます。自分だと見分けられた正常な細胞を、免疫によって攻撃して取り除こうとすることは、ふつうはありません。(図1)
図1.自己と非自己(病原体)の識別

図1.自己と非自己(病原体)の識別

図2.自己と非自己(感染細胞)の識別

図2.自己と非自己(感染細胞)の識別

病原体の中で特にウイルスは、体内に入り込んだ後、細胞の中まで入ります。このようにウイルスに入り込まれた細胞を、「感染細胞」と言います。病原体はこの感染細胞の中で増えて、体内へと広がっていきます。感染細胞は、元はと言えば自分の細胞ですが、免疫の仕組みは、感染細胞を自分でないものとして見分けることができ、攻撃して取り除きます。(図2)
この他に、この免疫の仕組みは、体の中で作り出されてしまった異常な細胞や死んだ細胞も、同じように自分でないものとして取り除きます。

免疫の仕組みが健康を守る

免疫の仕組みが自分でないものを攻撃して取り除くことができなければ、病気は治りません。免疫の仕組みが間違って自分を攻撃し始めた場合は、自己免疫疾患と呼ばれる様々な病気が引き起こされてしまいます。「自己」と「非自己」を識別して、「非自己」を取り除くという免疫の仕組みは、人や動物の体を正常な状態に保つために必要なのです。
次回は、自然免疫と獲得免疫についてお話しします。
 (2097)