分娩直後の乳汁(初乳)抗体
母から胎仔への胎盤を介して抗体が移行されないウシでは、IgGを主とする抗体を高濃度に含む初乳を出生直後(6時間以内)に十分摂取することが、受動免疫を獲得する上で欠かせません。
初乳由来のIgGの大半は血液から乳に移行したものであり、上皮細胞間の密着結合(タイトジャンクション)が十分発達していない出生直後の仔が初乳を摂取することで、初乳由来の抗体は腸管を介して仔の血液中に送り込まれます。
ウシのIgGには、IgG1とIgG2の2つのサブクラスが存在しており、初乳中のIgGの大半はIgG1であることが知られています。事実、血液中のIgG1濃度は出産数週間前より急激に低下する(乳中に移行する)一方で、血液中のIgG2濃度は、周産期を通して大きく変化しないことが知られています。
初乳由来のIgGの大半は血液から乳に移行したものであり、上皮細胞間の密着結合(タイトジャンクション)が十分発達していない出生直後の仔が初乳を摂取することで、初乳由来の抗体は腸管を介して仔の血液中に送り込まれます。
ウシのIgGには、IgG1とIgG2の2つのサブクラスが存在しており、初乳中のIgGの大半はIgG1であることが知られています。事実、血液中のIgG1濃度は出産数週間前より急激に低下する(乳中に移行する)一方で、血液中のIgG2濃度は、周産期を通して大きく変化しないことが知られています。
泌乳期を通した乳汁(常乳)抗体
ウシの常乳には、初乳と比較し、1/10程度の抗体が含まれています。一方で、常乳中に含まれる抗体の主要なサブクラスがIgGであることは、初乳と変わりません。
上述した通り、腺房周囲の間質には免疫担当細胞が存在しており、その一例として、乳汁抗体を産生する形質細胞(B細胞から分化した細胞)やマクロファージが挙げられます。乳腺の形質細胞の多くはIgAを産生していることが知られており、乳房内での局所的な免疫応答に関与しています。
従って、乳房炎予防を目的とし、泌乳期の乳房内に抗体産生を促すことを目的とした場合、主として血液由来のIgG産生を誘導する場合と、乳房内での局所的なIgA産生を誘導する場合で、その方法は大きく異なることになります。
また、乳房内でIgAを産生する形質細胞の多くは、粘膜組織(例:腸管)に由来としていることが知られております。このことは、乳房炎ワクチンを開発する上で、全身免疫によるIgG誘導型ワクチンと、粘膜免疫によるIgA誘導型ワクチンの2つを、区別することの必要性を意味しています。
上述した通り、腺房周囲の間質には免疫担当細胞が存在しており、その一例として、乳汁抗体を産生する形質細胞(B細胞から分化した細胞)やマクロファージが挙げられます。乳腺の形質細胞の多くはIgAを産生していることが知られており、乳房内での局所的な免疫応答に関与しています。
従って、乳房炎予防を目的とし、泌乳期の乳房内に抗体産生を促すことを目的とした場合、主として血液由来のIgG産生を誘導する場合と、乳房内での局所的なIgA産生を誘導する場合で、その方法は大きく異なることになります。
また、乳房内でIgAを産生する形質細胞の多くは、粘膜組織(例:腸管)に由来としていることが知られております。このことは、乳房炎ワクチンを開発する上で、全身免疫によるIgG誘導型ワクチンと、粘膜免疫によるIgA誘導型ワクチンの2つを、区別することの必要性を意味しています。
乳房炎ワクチン スタートバック®
今日、日本で唯一実用化されている乳房炎ワクチンとして、スタートバック®が有名です。
スタートバック®は、黄色ブドウ球菌や大腸菌群およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌による臨床型乳房炎の症状の軽減のための筋肉内接種型のワクチンであり、黄色ブドウ球菌(SP140株)の不活化菌体および大腸菌(J5株)の不活化菌体によって構成されております。
スタートバック®は全身免疫を誘導するワクチンですので、抗原特異的な抗体(主としてIgG)産生が全身組織に誘導され、その結果として、乳房内でもその効果が期待されます。
スタートバック®の用法は、分娩予定45日前に初回免疫を、分娩予定10日前に追加免疫(1回目)を、分娩予定日の52日後に追加免疫(2回目)を実施するとされており、分娩前からワクチン接種を開始することで、黄色ブドウ球菌、大腸菌群およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌による臨床型乳房炎の症状を長期的に低減させることを目的としています。
スタートバック®は、黄色ブドウ球菌や大腸菌群およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌による臨床型乳房炎の症状の軽減のための筋肉内接種型のワクチンであり、黄色ブドウ球菌(SP140株)の不活化菌体および大腸菌(J5株)の不活化菌体によって構成されております。
スタートバック®は全身免疫を誘導するワクチンですので、抗原特異的な抗体(主としてIgG)産生が全身組織に誘導され、その結果として、乳房内でもその効果が期待されます。
スタートバック®の用法は、分娩予定45日前に初回免疫を、分娩予定10日前に追加免疫(1回目)を、分娩予定日の52日後に追加免疫(2回目)を実施するとされており、分娩前からワクチン接種を開始することで、黄色ブドウ球菌、大腸菌群およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌による臨床型乳房炎の症状を長期的に低減させることを目的としています。
乳房炎粘膜ワクチン
乳房内を流れる血管を介して、血液中のIgGは乳房内にも循環します。一方で、乳房内に局所的なIgA産生を促す場合は、上述した通り、粘膜投与型の乳房炎ワクチンを開発することが必要です。
抗原に対する特異性とは別に、オプソニン活性を有するIgGと中和抗体として機能するIgAが有する乳房炎予防効果としての優劣をつけることは容易ではありません。そのため、ここではIgAを産生する形質細胞を乳房内に効果的に呼び寄せるための最近の研究成果を紹介したいと思います。
泌乳期の乳腺上皮細胞からは、ケモカイン(細胞遊走活性を有した因子)の一つであるCCL28が分泌されています。CCL28の受容体として、CCR10と呼ばれる膜タンパク質が知られており、CCR10を発現する形質細胞がCCL28に引き寄せられる形で、泌乳期の乳房内に移動(遊走)していきます。
粘膜組織に発達する二次リンパ組織(粘膜関連リンパ組織)では、CCR10発現が促されていることが知られております。それゆえ、経鼻、経口、経肛門などの投与形態からなる、乳房炎粘膜ワクチンによる乳房炎予防に向けた研究の進展にも期待が集まっています。
抗原に対する特異性とは別に、オプソニン活性を有するIgGと中和抗体として機能するIgAが有する乳房炎予防効果としての優劣をつけることは容易ではありません。そのため、ここではIgAを産生する形質細胞を乳房内に効果的に呼び寄せるための最近の研究成果を紹介したいと思います。
泌乳期の乳腺上皮細胞からは、ケモカイン(細胞遊走活性を有した因子)の一つであるCCL28が分泌されています。CCL28の受容体として、CCR10と呼ばれる膜タンパク質が知られており、CCR10を発現する形質細胞がCCL28に引き寄せられる形で、泌乳期の乳房内に移動(遊走)していきます。
粘膜組織に発達する二次リンパ組織(粘膜関連リンパ組織)では、CCR10発現が促されていることが知られております。それゆえ、経鼻、経口、経肛門などの投与形態からなる、乳房炎粘膜ワクチンによる乳房炎予防に向けた研究の進展にも期待が集まっています。
おわりに
今回は、抗体産生に着目して乳房の免疫を紹介しましたが、乳房内には自然免疫に関わる細胞など、多様な免疫細胞が存在しています。乳房炎予防を目的とした新たな免疫戦略を構築する上でも、複雑に発達する乳房の免疫機能に関する複合的な理解が必要とされています。