乳房では様々な免疫が働いています。最も有名な免疫は抗体と呼ばれ、ワクチンを投与するのは、この抗体の量を増やすためのものです。抗体は侵入してきた病原体を攻撃して炎症を弱めてくれます。
抗体以外で最近注目されているのが抗菌物質です。抗菌物質は乳房内に侵入した病原菌を素早く攻撃してくれるとともに、乳汁中の濃度を増加させ、病原体を完全に死滅させるように働きます。
上述の抗体はワクチンを投与した後早くても数日後でないと作られませんが、抗菌物質は病原菌侵入後数時間で濃度が増加し、非常に速い反応を示すのが特徴です。
抗体以外で最近注目されているのが抗菌物質です。抗菌物質は乳房内に侵入した病原菌を素早く攻撃してくれるとともに、乳汁中の濃度を増加させ、病原体を完全に死滅させるように働きます。
上述の抗体はワクチンを投与した後早くても数日後でないと作られませんが、抗菌物質は病原菌侵入後数時間で濃度が増加し、非常に速い反応を示すのが特徴です。
通常は、病原体の侵入があればそれらの濃度が増加しますが、健康な状態でも抗菌物質の乳汁中の濃度は牛の個体によって大きく異なります。
この濃度の違いが何なのかを詳しく調べてみると、一部の抗菌物質の濃度の違いが病原体侵入後の炎症の速さ、重症度、治癒速度に影響することが分かったのです。これらをうまく活用すると乳房炎の管理が可能になるかもしれません。
この濃度の違いが何なのかを詳しく調べてみると、一部の抗菌物質の濃度の違いが病原体侵入後の炎症の速さ、重症度、治癒速度に影響することが分かったのです。これらをうまく活用すると乳房炎の管理が可能になるかもしれません。
また、病原菌の特定をするために培養検査をしますが、菌が全く生えないことがあります。
これについては、いろいろな考え方がありますが、その原因の一つが乳汁を保存している間に菌が死んでいることが分かっています。炎症が起こった状態では乳汁中の抗菌物質の濃度が増えますので、採取した乳汁中の多くの抗菌物質によって菌が死んでしまっているのです。
乳房内では抗菌物質によって菌が死んでくれればうれしい話ですが、菌特定のための乳汁中では迷惑な話です。ただ、乳汁保存中の生菌数の減少は抗菌物質だけではなく、体細胞として含まれている白血球も関与しているようです。
これについては、いろいろな考え方がありますが、その原因の一つが乳汁を保存している間に菌が死んでいることが分かっています。炎症が起こった状態では乳汁中の抗菌物質の濃度が増えますので、採取した乳汁中の多くの抗菌物質によって菌が死んでしまっているのです。
乳房内では抗菌物質によって菌が死んでくれればうれしい話ですが、菌特定のための乳汁中では迷惑な話です。ただ、乳汁保存中の生菌数の減少は抗菌物質だけではなく、体細胞として含まれている白血球も関与しているようです。
抗菌物質には様々なものがありますが、それぞれ異なる特徴を持っています。最も有名なのはラクトフェリンだと思います。ラクトフェリンには様々な機能がありますが、最も有名なのは鉄を吸収して、菌に鉄を使わせないようにする機能です。
菌の増殖には鉄が必要ですので、増殖が抑えられるわけです。その他、菌を直接攻撃して殺したり、菌による炎症を抑制したりします。ラクトフェリンは他の抗菌物質に比べて、菌が侵入してから比較的遅く分泌されます。普通の抗菌物質は数時間で濃度が上がりますが、ラクトフェリンは24時間程度かかります。しかし、濃度としては他の抗菌物質に比べて1万倍以上も高いのが特徴です。
菌の増殖には鉄が必要ですので、増殖が抑えられるわけです。その他、菌を直接攻撃して殺したり、菌による炎症を抑制したりします。ラクトフェリンは他の抗菌物質に比べて、菌が侵入してから比較的遅く分泌されます。普通の抗菌物質は数時間で濃度が上がりますが、ラクトフェリンは24時間程度かかります。しかし、濃度としては他の抗菌物質に比べて1万倍以上も高いのが特徴です。
抗菌物質の一つであるS100A7についてお話をしたいと思います。S100A7は乳房の中でも病原菌の侵入口である乳頭近辺で主に作られています。したがって、病原菌の侵入を防ぐために非常に重要な因子であることがうかがわれます。もっと詳しく言うと、乳頭の内側の細胞でも作られますし、外側の皮膚でもS100A7が作られています。
この物質はそもそも人の皮膚で見つかったものですが、牛の皮膚でも同様に作られています。乳頭だけではなく乳房全体の皮膚でもたくさん作られて、病原菌が皮膚に付着するのを防ぎます。
この物質はそもそも人の皮膚で見つかったものですが、牛の皮膚でも同様に作られています。乳頭だけではなく乳房全体の皮膚でもたくさん作られて、病原菌が皮膚に付着するのを防ぎます。
S100A7は季節変化をするようです。各季節の乳汁のS100A7濃度を調べてみると、冬の濃度が他の季節に比べて低いことがわかりました。S100A7細菌の中でも特に大腸菌に対して抗菌性を持っていますので冬は大腸菌性の乳房炎が増えることが危惧されますが、ラクトフェリンは逆に冬の方が多くつくられます。
このように、冬季はS100A7の産生減少をラクトフェリンが補って、大腸菌性乳房炎を予防しているのかもしれません。
このように、冬季はS100A7の産生減少をラクトフェリンが補って、大腸菌性乳房炎を予防しているのかもしれません。
唾液にも抗菌物質が含まれています。口からは餌と一緒に様々な微生物が入ってきますので、唾液としっかり混ぜて病原菌をある程度減らしておく必要があるのかもしれません。
肉牛は乳牛に比べて乳房炎になりにくいと言われますが、この理由の一つが唾液中の抗菌物質にあるのではないかと思っています。肉牛では子牛が母牛の乳を直接飲むので子牛の唾液がたっぷりついた状態で乳頭が守られますが、乳牛では機械的に搾乳した後にディッピングするだけです。
実際海外の研究では乳牛を搾乳した後に子牛に乳頭を吸わせた時と吸わせない時では、吸わせた時の方が乳房炎発症率や重症度が減少したそうです。唾液の成分に似た抗菌物質などを添加したディッピング剤があれば、病原菌の侵入を防御できるかもしれません。
肉牛は乳牛に比べて乳房炎になりにくいと言われますが、この理由の一つが唾液中の抗菌物質にあるのではないかと思っています。肉牛では子牛が母牛の乳を直接飲むので子牛の唾液がたっぷりついた状態で乳頭が守られますが、乳牛では機械的に搾乳した後にディッピングするだけです。
実際海外の研究では乳牛を搾乳した後に子牛に乳頭を吸わせた時と吸わせない時では、吸わせた時の方が乳房炎発症率や重症度が減少したそうです。唾液の成分に似た抗菌物質などを添加したディッピング剤があれば、病原菌の侵入を防御できるかもしれません。
おわりに
今回は自然免疫の一つである抗菌物質についてラクトフェリンやS100A7を紹介しましたが、それ以外にも多くの抗菌物質が作られています。これらを総合的にとらえ、抗菌の働きを理解することが必要です。
そして、抗菌物質をたくさん作るような乳房管理ができれば乳房炎を予防・治療することができるのではないかと期待しています。
今回は自然免疫の一つである抗菌物質についてラクトフェリンやS100A7を紹介しましたが、それ以外にも多くの抗菌物質が作られています。これらを総合的にとらえ、抗菌の働きを理解することが必要です。
そして、抗菌物質をたくさん作るような乳房管理ができれば乳房炎を予防・治療することができるのではないかと期待しています。