消毒の基礎と効果的な方法vol.4

これまで3回にわたり、消毒の基礎と養豚場での消毒効果検証事例を紹介してきました。vol.4の最終回は牛舎での消毒事例と消毒薬を使用する際の注意点についてお伝えします。

牛舎での事例

牛舎においても消毒を行う場所はたくさんあります。その中でも子牛にミルクを給与する際に必要な哺乳用具の衛生管理は、健康な子牛を飼育するうえで重要なポイントです。
vol.3でもご紹介したフードスタンプを用いて、哺乳用具の消毒効果検証を行った事例をご紹介します。検証に用いた哺乳バケツと乳首はお湯で洗い、乾燥させた後、消毒薬に浸漬しました。浸漬に用いた消毒薬は逆性石鹸製剤(10%製剤)の1,000倍希釈液で、浸漬時間は1分間と30分間浸漬する2区を設けました。また、浸漬後にはしっかりと乾燥させました。
採材は写真1の通り、哺乳バケツと乳首の外側から、フードスタンプ「ニッスイ」の大腸菌群用(X-GAL 寒天)、一般細菌用(標準寒天)、真菌用(サブロー寒天)を用いて行い、消毒前は水洗・乾燥後に、消毒後は消毒・乾燥後のタイミングで採材を行いました。

写真1

結果を以下に示します。バケツ表面(写真2)は、消毒前の大腸菌群は陰性(コロニーが検出されない)、一般細菌と真菌はそれぞれ17、28個のコロニーが検出されました。浸漬1分後では大腸菌群、一般細菌が陰性になり、真菌は18個のコロニーが確認されましたが、浸漬30分後にはすべて陰性になりました。

乳首表面(写真3)では消毒前の大腸菌群は陰性、一般細菌と真菌はそれぞれ>100個、15個のコロニーが検出されました。浸漬1分後では大腸菌群が3個、一般細菌が22個、真菌が39個になりました。浸漬30分後では大腸菌群と一般細菌は陰性、真菌は1個と大幅にコロニー数が減少しました。この検証では、消毒薬の種類や濃度を変えずに、浸漬時間を長くすることで、消毒効果を高められることが確認できました。

現場では消毒以外にも多岐にわたる仕事があるため、作業のフロー(時間や方法)を変えるのが難しい場合もあると思いますが、今回のように少し変更をすることで消毒効果を大幅に改善できることもあります。フードスタンプでの消毒効果検証は、採材が簡単で結果も分かりやすく、消毒薬の選択、濃度、感作時間が適切に選択されて消毒が実施されていることを客観的に確認するのに有効な方法です。
哺乳バケツの他にも、牛舎内やカウハッチ、長靴や作業者の手などにおいてもフードスタンプを用いて検証を行うことができます。ご興味がある方は、ぜひ共立製薬の担当者にお声がけください。

消毒薬を使用する際の注意点

これまで消毒薬を効果的に使用する方法や検証の事例についてお伝えしてきましたが、
消毒薬のお話をするうえで大切なことがもう1つあります。それは消毒薬を使用する人を守ることです。
vol.1でお伝えしたように消毒薬にはいろいろな種類がありますが、人に対して影響が全くない消毒薬はありません。おさらいしよう!微生物のキホンにも記載がある通り、細菌やウイルスも生きるために必死ですので、それに対峙する消毒薬もそれなりに毒性などがあるということです。消毒薬を噴霧する人を守るためのポイントを下記にお示しします。ぜひ今一度見直してみてください。
・消毒液が皮膚に付かないように皮膚の露出をなくし、吸い込まないように注意する。
・噴霧使用によって、目、鼻に刺激が感じられることがあるため、噴霧に際して保護
 マスク、メガネ、手袋等の保護具を使用して、直接薬液に触れないようにする。
・作業をするときには畜鶏舎の換気をできるだけ良くし、手際よく短時間で終わらせる。
・作業終了後は、洗面、手洗いを励行する。
・もしも、皮膚に付着したときは、直ちに水で洗い流す。身体に異常を来した場合や、
 誤って薬液を飲み込んだ場合は、直ちに医師の診察を受ける。

まとめ

消毒や清掃を中心とした衛生管理は農場成績に直結します。消毒を行っても目に見える効果がないと思うこともあるかもしれませんが、疾病がコントロールできているなら、それは日々実施されている消毒が必ず役立っています。
畜鶏舎内の消毒はもちろん、農場内への病原体の侵入を防ぐための車輌、人、資材の消毒、農場内の伝搬を防ぐための長靴や衣服の消毒、家畜の健康のための飲水消毒など日頃消毒を行う様々な場面において、今回の連載がご参考になれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。消毒に関して疑問、質問がございましたら共立製薬の担当者までお気軽にご連絡ください。