農場の家畜防疫を強化!飼養衛生管理基準に取り組むときにやるべきこと

農場の家畜防疫を強化!飼養衛生管理基準に取り組むときにやるべきこと

「食の安全」が叫ばれる昨今、2020年(令和2年)7月1日には飼養衛生管理基準が改正され、畜産業界では家畜防疫の強化が求められるようになりました。飼養衛生管理基準を遵守することは、家畜の所有者が果たすべき義務。基準を満たせていないと、伝染病が発生した場合にまん延や被害拡大のリスクが高まってしまいます。

この記事では、家畜の所有者が飼養衛生管理基準に取り組むときに必要な準備について解説します。

01|飼養衛生管理者の選任

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飼養衛生管理基準に取り組むにあたって、家畜の所有者は衛生管理区域ごとに「飼養衛生管理者」を選任することが義務付けられました。飼養衛生管理者を決めたら、地域ごとに管轄の家畜保健衛生所に飼養衛生管理者の必要情報を報告しましょう。

飼養衛生管理者に関する詳細はこちら

02|農場の平面図の作成

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家畜の所有者は農場の平面図を作成します。農場の全体像とともに、衛生管理区域とそうでない区域との境界線をはじめ、業務中に行き来する可能性がある設備を入れた配置図を用意し、最新の防疫体制が確認できるようにしておきましょう。

《代表的な設備》
・衛生管理区域
・車両消毒設備
・進入禁止看板
・貯水槽
・踏込消毒槽
・手洗・消毒
・飼料タンク
・農場内建屋(畜舎、堆肥舎、事務所など)

また、家畜保健衛生所が行う検査を受ける際は作成した平面図を提示し、設備の不足などの指導を受けた場合はそれにしたがいます。
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03|マニュアルの作成

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家畜の所有者は衛生管理区域ごとに、衛生管理に関する以下のような規定をまとめたマニュアルを作成します。

(1) 従事者が当該農場以外で行う動物の飼養及び狩猟における禁止事項
(2) 海外渡航時及び帰国後の注意事項
(3) 海外からの肉製品の持込み(郵便物による持込みを含む。)に関する注意喚起
(4) 農場内への不適切な物品の持込みの禁止
(5) 可能な限り、工具、機材等を農場内へ持ち込まないための取組
(6) 持ち込む工具、機材、食品等の取扱い
(7) 猫等の愛玩動物の衛生管理区域内での飼育禁止
(8) 野生動物の衛生管理区域内への侵入防止
(9) 農場における防疫のための更衣
(10) 手指、衣服、靴、物品、車両、施設等の洗浄及び消毒に関する具体的な方法、消毒薬の種類、作用時間及び乾燥時間等

マニュアルを作成する際は自分たちの知見だけに頼らず、獣医師などの専門家の意見を聞いて反映させなければいけません。また、完成したマニュアルの内容は従事者に共有するのはもちろんのこと、農場に出入りする関係者にも禁止事項などが伝わるよう、外部にも周知を徹底しましょう。

04|衛生管理記録の作成

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伝染病が発生した場合、感染経路を特定することがさらなる感染の防止につながります。家畜の所有者は、そうした事態に備えて以下のような記録をとる必要があります。
  
(1) 衛生管理区域に立ち入った者の氏名・住所・所属(農場の従事者を除く)また、衛生管理区域内へ立ち入った年月日・その目的・消毒の実施の有無・車両情報
(2) 従事者が海外に渡航した場合、その滞在期間や国・地域名
(3) 新たに導入した家畜の情報(種類・頭数・健康状態・導入元の農場等の名称・導入年月日)
(4) 出荷や移動を行った家畜の情報(種類・頭数・健康状態・出荷または移動先の農場等の名称・出荷または移動の年月日)
(5) 飼養する家畜の頭数・月齢・異状の有無。異状がある場合はその症状と獣医師による診療結果・投薬やその他の処置の状況
(6) 家畜保健衛生所・担当獣医師等から指導を受けた場合の指導内容

作成した衛生管理記録は、少なくとも一年間は保存しておきましょう。

05|通報ルールの作成

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従事者が飼養する家畜に特定症状を発見した場合、飼養衛生管理者の許可を得ず、ただちに家畜保健衛生所に連絡できるよう通報ルールを設け、全従事者に周知しておきましょう。
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06|管理獣医師または診療施設を定める

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衛生管理には専門家の指導が必要です。農場ごとに担当の獣医師または診療施設を定め、定期的に飼養する家畜の健康管理について指導を受けましょう。特定の獣医師または診療施設に長期的に診てもらうことで、過去の状態も踏まえた的確なアドバイスを受けられるようになります。

細やかな取り組みで家畜防疫を実現

衛生管理のための取り組みを始めるとき、農場設備の抜本的な見直しなどをイメージする人は少なくないでしょう。しかし、どんなに優れた設備を有する農場でも、日々の管理ができていないと意味がありません。

マニュアルの作成、ルールに沿った運用、衛生管理記録、といった作業を当たり前にできるようになることが、本来あるべき姿です。
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