衛生管理区域の明確化
畜産における衛生管理の基本的な考え方として、衛生管理区域を明確にし、そのうえで衛生管理区域内への病原体の侵入と、区域外への持ち出しを防ぐための策を講じます。農場には従事者だけでなく、獣医師や関係者も出入りするため、外部の人にも衛生管理区域の境界線がわかるようにしておくことが求められています。
防護柵(豚・いのしし)
衛生管理区域の境界線がわかるようにすることで、外部者の不要な立ち入りを防ぐことができます。養豚場の場合は防護柵の設置が義務付けられています。
また、牛や鶏の場合は境界線を分かるようにする必要があります。
また、牛や鶏の場合は境界線を分かるようにする必要があります。
看板
出入口の数を必要最小限にして、その近くに関係者以外立入禁止の看板を設置します。外部者に視覚で衛生管理区域の境界線を伝え、同時に立ち入り制限があることもアピールできます。
車両の消毒・防疫措置
衛生管理区域内に出入りする車両は、出入口で必ず消毒をします。消毒を実施しなければ入退場できないように、遮断ゲートを設けるなどの工夫をして、実施を徹底する必要があります。また、車両消毒を実施したことを記録簿に記入後でなければ出入りができないというルールを徹底しましょう。
フロアマット・ブーツカバー・シューズカバー
衛生管理区域内に車両が出入りする際、車内から病原体が侵入するリスクを回避するために、専用のフロアマットの使用・踏み込み消毒槽などの方法で、足の消毒を行えるようにしましょう。複数の関係者が出入りするような農場など、対応が難しい場合は、運転する人に必ず靴の上からシューズカバーおよびブーツカバーを履いてもらいます。同時にステップ・アクセル・ブレーキパッド・ハンドル・座席など、車内の消毒も忘れずに行いましょう。
動力噴霧器・車両消毒装置・車両消毒槽
出入口には動力噴霧器・車両消毒装置・車両消毒槽といった専用の消毒設備を設置して、出入りする車両を消毒します。車両が通過するときに自動で消毒剤を散布してくれる車両消毒装置を導入する場合は、入口側と出口側の両方にセンサーを設置し、どちらからでも散布できるようにしましょう。
出入口の舗装化(推奨)
出入口は地面がむき出しになった状態ではなく、舗装しておくことが理想的です。泥や汚れを落としやすく、二次汚染のリスクを減らすことができます。
野生動物の侵入防止
病原体はねずみやいのしし、カラスなどの野生動物のなかで増殖しています。野生動物が衛生管理区域内に侵入しないように設備を整えましょう。
防護柵
これまでに豚熱陽性の野生いのししの発見が相次いだことから、養豚場の場合は衛生管理区域に野生いのししが侵入しないよう防護柵の設置が義務付けられています。
放牧をはじめとした屋外飼育の場合は二重柵を設置しましょう。
放牧をはじめとした屋外飼育の場合は二重柵を設置しましょう。
防鳥ネット
畜舎・飼料保管庫・堆肥舎・死体保管庫その他の設備の窓や換気扇など、隙間に防鳥ネットを設置することで、カラスやハトなどの野生鳥獣の施設内への侵入を防げます。網目の大きさは2センチ以下、またはこれと同等の効果があるものに限られています。
人の消毒・防疫措置
従事者や関係者が衛生管理区域を出入りする際は必ず消毒を行い、同時に専用の靴や手袋を着用させて防疫措置を講じます。
手洗い・消毒
衛生管理区域を出入りする際、手はプッシュ式のアルコール消毒液、足(靴)は踏み込み消毒槽で消毒しましょう。踏み込み消毒槽はポリタンクの片側面を切り抜いたものでも代用できます。また、他の畜産関係施設で使用した物品は衛生管理区域内に持ち込まないことが原則ですが、どうしても持ち込む場合は消毒を徹底しましょう。
専用の長靴・ブーツカバー
衛生管理区域を出入りするときは、専用の長靴に履き替えます。管理獣医師にも専用の長靴を準備すべきです。出入りする関係者には、靴の上から履いて使い捨てできるブーツカバーを用意しましょう。
専用の手袋(推奨)
手洗いや消毒ができない場合は、専用の手袋で代用することが可能です。また、着替えには専用の更衣室を設け、衛生管理区域から出る人と入る人の動線が重ならないようにすることも大切です。
飲用水の消毒
衛生管理区域内で家畜の飲用水として井戸水や沢水を使っている場合、年に一回以上の水質検査をする必要があります。水質検査分析センターが定めている「食品営業用水の水質検査項目と基準値(10項目)」もしくは「食品衛生法に基づく水質検査(26項目)」に基づいた検査を推奨します。
飲用水に適していない水を使用する場合は、点滴式の塩素消毒、塩素濃度のモニタリングが必須です。
飲用水に適していない水を使用する場合は、点滴式の塩素消毒、塩素濃度のモニタリングが必須です。
薬液注入装置
飲用水の塩素消毒に使用します。
残留塩素測定機器や塩素濃度試験紙など
塩素濃度の測定に使用します。
畜産の“明るい明日”のために必要な投資を
病原体のまん延を防止するためには「持ち込まないこと」と「持ち出さないこと」が大切です。今回ご紹介したなかで、車両の消毒設備などはある程度の導入コストがかかってしまいますが、設備を整えることで感染病のリスクを抑え、従事者の不安も取り除くことができます。畜産業界の“明るい明日”のために、必要な投資をしていきましょう。